【アメリカ】先使用主義とアメリカでの商標実務の注意点

まとめ

・アメリカでは、先に商標を使用していた人が優先される「先使用主義」を採用しています

・先願主義を採用している日本とは商標実務が相違するため、使用証拠の保管が、さらに重要になり、また、商標登録の取り消しリスクや商標の調査方法も違います

・先使用主義を採用しているものの、アメリカにおいて商標登録を取得するメリットは色々とあります

先使用主義とは

日本など多くの国では、先に商標出願した人が優先される先願主義を採用しています。

つまり、早く商標出願した人に商標登録が認められます。

先願主義制度の詳細については、以下の記事をご参照ください。

しかし、アメリカは、先願主義ではなく、先使用主義を採用しています。

先使用主義を採用している国は、世界的にみて、ほとんどありません。

先使用主義のもと、アメリカでは、先に商標を使用していた人が優先されます。

少し分かりにくいので、想定事例を使って、説明します。

多くの国では先願主義を採用している中、アメリカは先使用主義を採用しています

想定事例

2022年に、A社が、ニューヨーク州で、チョコレートに商標「ABC」の使用を開始する。

その後、2023年に、B社が、フロリダ州で、「ABC」という名称のチョコレートを販売して、商標「ABC」を商標出願したとします。

上記のような事実関係だと、アメリカで、最も早く商標「ABC」を使用していたのは、A社です。

先使用主義を採用しているアメリカでは、商標登録を受ける権利は、B社ではなく、A社にあります。

仮に、B社の商標登録が認められたとしても、これに対して、A社は、異議申し立てや無効審判で、争うことができます。

アメリカでは、先に商標出願している人よりも、先に商標を使用している人を優先します!

先使用主義の注意点

アメリカでの使用証拠の保管

アメリカでは、先に使用した人が優先されるので、アメリカでの使用証拠が重要です

先使用主義のもとでは、早ければ、早いほど、望ましいので、アメリカで商標の使用を開始したら、すぐに証拠資料を保管しましょう。

なお、使用証拠には、商標や日付がきちんと記載されている必要があります。

商標登録が取り消されるリスク

商標出願して、商標登録を取得できたとしても、先使用者が存在する可能性があります。

つまり、商標登録を取得できたとしても、先使用者の存在により、商標登録が取り消されるリスクがあります。

なお、商標登録になってから、5年、経過すると、ある程度、無効審判の請求が制約され、権利が安定します。

アメリカでの商標調査

事前の商標調査では、先行の登録商標・出願商標をチェックするだけでは不十分です。

アメリカでの対象商標の使用状況も調査する必要があります。

このような調査方法を「フルサーチ」と言いますが、調査費用が、かなり高額です。

なお、アメリカでの使用状況まではチェックしない簡易的な調査方法もありますし、また、商標調査は必須の手続きではありません。

コストを考慮しながら、商標調査を実施するか、また、どのような調査方法にするか、検討しましょう。

アメリカでは、商標を使用した証拠をきちんと保管しておくことが大切です!また、商標登録の取り消しリスクや商標の調査方法なども、日本とは異なります

アメリカで商標出願する意味とは

アメリカでは、先使用主義なので、商標出願して、商標登録を取得しても意味がないように思えます。

しかし、アメリカで商標出願して、商標登録を取得することに、様々なメリットもあります

例えば、商標登録を取得することで、有効かつ独占排他的な権利を保有していると推認されます。

つまり、第三者に対して権利行使する際に、改めて、権利が有効であることを立証する必要がありません

また、アメリカでは、州単位で、先使用の権利(コモンロー上の権利)が発生します。

例えば、ニューヨーク州で使用していた場合には、ニューヨーク州での権利が生じます。

逆に言うと、ニューヨーク州以外の州では、権利が発生しません。

しかし、商標登録を取得することで、登録商標の権利者であることが、アメリカの全土に通知されるという擬制効果があります

これによって、商標登録を取得した後に、ニューヨーク州以外の州で、登録商標を使用した人に対して、対抗することができます。

アメリカは先使用主義ですが、商標登録を取得することに様々なメリットがあります。アメリカに事業進出する際には、アメリカでの商標出願を検討しましょう

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