・企業グループの体制や考え方によって、商標登録の管理方法は異なります
・ハウスマーク関連の商標は、親会社が一括して管理して、それ以外は、各社で管理するパターンがあります。経験上、最も多いです
・親会社が一括して商標を管理するパターン、ハウスマーク関連商標も含めて、各々の会社に個別するパターンもあります
グループ会社の商標登録の管理
日本には、多くのグループ会社が存在します。
筆者自身、商標の弁理士として、グループ会社の商標業務をお手伝いした経験があります。
グループ会社の商標の管理方法には様々です。
ただし、大まかに分類すれば、以下の3つになります。
- 親会社が一括して商標を管理する
- 各々が個別に商標を管理するが、ハウスマーク関連のみ、親会社が管理する
- ハウスマーク関連も含めて、各々で個別に商標を管理する
それぞれの方法とメリット・デメリットがあります。
以下、各々の管理方法について、紹介していきます。
経験上、管理方法は、グループ会社によって、異なります
具体的なグループ会社の商標登録の管理方法を3つ紹介
子会社の商標についても、親会社が一括して管理することがあります。
親会社が子会社のために商標登録を取得して、子会社に登録商標を使用させます。
この場合、親会社が、子会社に対して、商標ライセンスを行うこともあります。
親会社が、まとめて管理しているので、分かりやすいといったメリットがあります。
また、全ての商標登録・出願の名義が、親会社です。
そのため、特許庁の審査で、グループ会社の先行商標が引用されません。
特に、ハウスマーク関連の商標など、スムーズに商標登録できます。
しかし、子会社の個別ブランドまで管理することになります。
子会社・グループ会社が多数あると、管理する商標の数が多い。
その分、親会社の負担も増えてしまいます。
グループ規模が小さければ、親会社が、全ての会社の面倒を見れそうです
次に紹介する方法は、原則、各々の会社で、管理する方法です。
ただし、ハウスマークのみ、親会社が管理します。
なお、ハウスマークの重要性については、以下の記事で紹介しています。
ハウスマークの重要性と個別ブランドとの保護戦略の違い経験上、このような方法を採用している会社が多いです。
具体例を使って説明
分かりにくいので、具体例を出して、説明します。
ABCホールディングス株式会社という企業があります。
その子会社に、ABC証券株式会社、ABC保険株式会社やABC不動産株式会社があったとします。
この場合、「ABC」がハウスマークになります。
「ABC証券」や「ABC保険」は、ABCホールディングス株式会社が商標出願します。
一方、「ABC」を含まない個別ブランドには、子会社が個別に商標出願し、管理します。
ハウスマークは、グループにとって最重要の商標です。
それに関連した商標を親会社が一括で管理するのは合理的です。
また、個別ブランドについては、各々の会社が管理します。
これにより、親会社の業務負担を軽減できます。
注意点
ただし、このような運用をグループ内できちんと周知する必要があります。
周知しないと、ハウスマークを含んだ商標を子会社の名義で商標登録する可能性があります。
日本の旧財閥企業のように、親会社が存在せず、各々の企業が同列のケースがあります。
そのような場合、ハウスマークも関連も含めて、各々で商標管理することがあります。
そうすると、ハウスマークを含んだ商標については、グループ内の企業同士の協力が不可欠です。
具体例を使って説明
例えば、「XYZ」をハウスマークとする企業グループがあります。
その中には、XYZ化学株式会社やXYZ薬品株式会社が所属しているとします。
仮に、XYZ化学株式会社が「XYZ化学」という商標出願したとします。
その場合、XYZ薬品株式会社の先行商標「XYZ薬品」が審査で問題となる可能性があります。
そうすると、XYZ薬品株式会社に一時的に商標出願を譲り渡す必要があります。
よって、グループ間での協力が不可欠です。
なお、日本でも、同意書制度の導入されました。
【法改正】商標のコンセント(同意書)制度を解説!導入されたので、同意書の提出だけで、拒絶理由を解消できるかもしれません。
また、第三者が「XYZ」という商標出願したとします。
その場合、各社が連携して、商標登録になるのを阻止する必要があります。
このような管理体制を採用するのであれば、各社が協力しなければいけません。
定期的に商標担当者がミーティングを行い、協力・連携していくことが重要です。
グループ会社の商標登録の管理方法を比較
グループ会社の商標登録の代表的な管理方法を、3つ紹介しました。
各々の方法には、メリット・デメリットがあります。
リストにまとめると、以下の通りです。
メリット | デメリット | |
親会社が一括して管理 | ・親会社が商標登録を把握しやすい ・スムーズにハウスマークを商標登録できる | ・親会社の負担が大きい |
各々が管理するが、ハウスマーク関連のみ、親会社が管理 | ・一括管理に比べて、親会社の負担を軽減できる ・スムーズにハウスマークを商標登録できる | ・運用をグループ内で周知する必要あり |
ハウスマーク関連も含めて、各々で管理 | ・各社が、各々、管理するので、分かりやすい | ・各社の協力・連携が必須 ・ハウスマークの商標登録が、大変。ただ、コンセント制度が導入されれば、改善される可能性あり |
グループの規模や管理体制を考慮しながら、商標登録の管理方法を決めましょう。
商標登録の管理で迷ったら、商標専門の弁理士に相談!
どのように商標登録を管理するか、迷うこともあると思います。
迷ったら、筆者(すみや商標知財事務所)にご相談ください。
親身になって、どうすべきか、一緒に検討します。
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