商標登録が完了すれば、もう安心——そう思っていませんか?
実は、商標登録後にも「異議申し立て」を受ける危険性があります。
異議申し立て制度は、すでに登録された商標に対して「その登録は問題がある」と他人が声を上げるための制度。
正しく理解しておかないと、せっかく取得した商標権が取り消されるリスクもあります。
この記事では、
- 異議申し立て制度の基本的な仕組み
- 実際に申し立てが行われる流れ
- 実務で気をつけるべきポイント
などを、初心者の方にもわかりやすく、図も交えながら丁寧に解説します。
商標登録をすでに取得している方も、これから取得を考えている方も、ぜひ参考にしてください。

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています
・商標登録の異議申し立てのお手伝いしたことは、何度もあります
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
商標登録に不満があれば、異議申し立て
あなたは、商標登録の異議申し立て制度を知っていますか?
特許庁の審査官も人間なので、ミスすることはあります。
そのため、商標権の設定登録後、一定期間内に限り、登録の取り消しを求める機会を第三者に与えています。
異議申し立てがあれば、特許庁において、改めて、審理を行います。
このようにして、商標登録に対する信頼を高めることを目的にしています。
それでは、異議申し立て制度の概要について、説明していきます。
商標登録の異議申し立ての概要
商標登録の異議申し立てができる人
誰でも、商標登録に異議を申し立てることができます。
商標登録の異議申し立て期間
商標掲載公報(登録後に発行される公報)の発行の日から2ヵ月以内です。
なお、期間の延長は認められませんので、しっかりと期限を管理しましょう。
商標登録の異議申し立ての流れ
異議申し立ての流れは、以下の通りです。

商標登録の異議申し立ての方法
異議を申し立てるためには、以下のような商標登録異議申立書を特許庁に提出する必要があります。

また、特許庁ホームページに、商標登録異議申立書の書き方のガイドラインも掲載されているので、ご参考ください。
なお、異議申し立ての標準的な審理期間は、6~8ヵ月です。
商標登録の異議申し立てに掛かる費用
特許庁に支払う印紙代は、3000円に1区分につき8000円を加えた額です。
また、弁理士などの専門家に依頼すると、専門家に支払う手数料も掛かります。
【異議申し立ての結果①】商標登録を取り消す理由があると判断
審理をした結果、異議申立人の主張を認めて、商標登録を取り消す理由があると判断したとします。
その場合には、商標権者に取消理由通知書が送付されます。
商標権者には、取消理由通知に対して、意見書を提出する機会が与えられます。
商標権者が、意見書を提出した場合には、再度、審理を行った上で、決定を下します。
もし、商標登録を取り消す旨の決定が下された場合には、不服があれば、商標権者は訴訟を提起することが可能です。
【異議申し立ての結果②】商標登録を取り消す理由がないと判断
審理をした結果、異議申立人の主張を認めずに、商標登録を取り消す理由がないと判断したとします。
その場合には、商標権者に意見書を提出する機会を与える必要がないので、そのまま、登録を維持する旨の決定が下されます。
この決定に対して不服があっても、異議申し立て人は、訴訟を提起することができません。
その代わりに、同一の理由により、無効審判を請求することができます。
なお、無効審判については、以下の記事をご参照ください。

商標登録の異議申し立ての勝算
2021年に最終処分が出た異議申し立ての件数は、385件あります。
なお、48件は、結論が出る前に、取り下げ・放棄されています。
その中で、登録維持決定になった件数(却下を含む)は、315件だったのに対して、取り消し決定になった件数は、22件だけです。
統計的に判断すると、異議申し立ての勝算は、高くはありません。
明らかな審査ミスがない限りは、なかなか異議申し立てが認められることはありません。
商標登録の異議申し立てのよくある質問(FAQ)
以下は、読者の方が迷いがちな「商標登録の異議申し立て」の実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。
記事本文と合わせてご活用ください。
はい、異議申し立ては「利害関係のある者」に限られず、誰でも行うことができます。
商標登録に不服があれば、一般の第三者でも申し立て可能です。
異議申し立ては、商標公報に掲載された日から2か月以内に行う必要があります。
期間を過ぎると、残念ながら、申し立ては受理されません。
異議申し立てが認められると、商標登録が取り消されることがあります。
ただし、申し立てれば、すぐに無効になるのではなく、審理を経て判断されます。
申し立ての内容を確認し、必要に応じて反論書面を提出するなど、きちんとした対応が求められます。
弁理士に相談することで、的確な対策をとることができます。
可能ですが、制度の理解や証拠資料の整備が必要なため、専門的な知識が求められます。
成功率を高めるためにも、弁理士への相談がおすすめです。
異議申し立ては「登録直後」に対して行う制度です。
一方、無効審判は「登録後しばらく経ってから」でも請求できます。
【まとめ】商標登録の異議申し立てで分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
・商標掲載公報の発行の日から2ヵ月以内であれば、商標登録に異議を申し立てることができます
・異議申し立て人の主張が認められれば、商標登録を取り消す旨の決定が下されます
・ただし、統計上、異議申し立ての勝算は高くなく、明らかな審査ミスがない限り、なかなか商標登録を取り消せません
実際、異議申し立てを請求しようとすると、分からないことも出てくるでしょう。
そのような場合には、商標専門の弁理士に相談しましょう。

筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
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