経験上、文字を商標登録することが多いです。
その際に、頻繁に標準文字制度を利用します。
弁理士歴10年以上の商標専門の弁理士が、標準文字制度について、分かりやすく説明します。
特定の文字を商標登録したい人のお役に立てるはずです。
また、標準文字の商標登録例や注意点も、教えます。
・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、12年以上、働いています
・これまで、膨大な量の「標準文字」の商標登録をお手伝いしました
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
商標法上の標準文字の規定
商標法上の第5条第3項において、以下のように規定しています。
商標登録を受けようとする商標について、特許庁長官の指定する文字(以下「標準文字」という。)のみによって商標登録を受けようとするときは、その旨を願書に記載しなければならない。
文字商標を商標登録する場合には、多くの人が標準文字で商標出願しています。
では、そもそも、標準文字とは、何なのか、検討してみましょう。
文字商標を商標登録する際、「標準文字」を利用することが圧倒的に多いです
標準文字とは、特許庁長官が指定した字体(フォント)の文字
標準文字制度とは、文字のみにより構成される商標のうち、特許庁長官があらかじめ定めた文字書体によるものを、その商標の表示態様として公表し、登録する制度です。
つまり、標準文字とは、特許庁長官が指定した字体(フォント)の文字です。
なお、標準文字は、文字のみにより構成される商標の場合だけ、利用できます。
つまり、例えば、文字と図形を含んだロゴ商標の場合には、標準文字を利用できません。
標準文字の商標登録の範囲
標準文字で商標登録がなされた場合でも、その商標登録の及ぶ範囲は、登録された商標と同一又は類似の範囲です。
明朝体やゴシック体の商標登録と比較しても、商標登録の範囲に大きな差はありません。
特に、書体(フォント)に、こだわりがなければ、「標準文字」の利用を検討しましょう!
ちなみに、標準文字で商標登録しても、通常の商標登録と比較して、商標登録の範囲が広がるわけではありません。
標準文字の利用が有効なケース
どのような場合に、標準文字で商標登録すべきか、疑問に思う人もいるでしょう。
筆者の経験上、例えば、以下のようなケースは、標準文字で商標登録するのが有効です。
- 様々な書体(フォント)で商標を使用する
- 商標登録する商標は決まったけど、使用する書体(フォント)が決まっていない
カタログやホームページなどで、様々な書体(フォント)で商標を使用することは、多々あります。
全ての書体(フォント)で商標登録するには、莫大なコストが掛かり、また、権利範囲に違いはないので、有効ではありません。
そのような場合、無駄な出費を抑えるため、1件、標準文字で商標登録することを勧めています。
商標登録する商標は決まったけど、使用する書体(フォント)が決まっていないことも、多いです。
商標の世界は、「早い者勝ち」で、早く商標出願した人が優先されます。
よって、早めに商標出願するために、そのような場合も、標準文字での商標登録を勧めています。
標準文字での商標登録例
標準文字は、よく利用される制度で、標準文字の商標の登録例は、膨大にあります。
以下、その中から、一例を挙げます。
- SONY(商登第4988737号)
- TOY STORY(商登第4200984号)
- 東京ディズニーランド(商登第5460985号)
- アナと雪の女王(商登第5875854号)
- 呪術廻戦(商登第6511197号)
- ポケモン(商登第5103633号)
なお、以下の通り、数字を含んでいても、標準文字制度を利用できます。
- AKB48(商登第4960294号)
- ユンケルQ10(商登第4588247号)
また、以下の登録例の通り、「!」「&」「@」「%」などの一部の記号も利用できます。
- ハイキュー!!(商登第5760250号)
- ぷよぷよ!!クエスト(商登第5599894号)
- P&G(商登第4541412号)
- LINE@(商登第5605279号)
- @cosme(商登第6146894号)
- 勇気100%(商登第5400117号)
数字や「!」「&」などを含んでいても、標準文字制度を利用できます
なお、特許庁は、標準文字の一覧を公表していて、参考になります。
【注意!】標準文字が利用できないケース
標準文字制度を利用できないケースもあります。
例えば、以下のような場合には、標準文字で商標出願できないので、注意しましょう。
- 文字数(スペースを含む)が30文字を超える場合
- 半角文字・半角スペースを含む場合
- 図形と文字を結合した場合
- 縦書きの場合
- 二段以上の構成からなる場合
- 大きさの異なる文字を含む場合
- 色彩を付した場合
よって、例えば、筆者が、自分の事務所名(すみや商標知財事務所)を商標登録する場合、以下の商標だと、標準文字制度を利用できません。
出願する商標によっては、標準文字制度を利用できない場合もあるので、注意しましょう!
標準文字の利用方法(願書の記載方法)
願書の【商標登録を受けようとする商標】の欄に、出願したい文字商標をタイプして、その下に【標準文字】と記載してください。
例えば、標準文字で「虎さん」と商標登録したい場合には、願書の記載は、以下の通りです。
【商標登録を受けようとする商標】
虎さん
【標準文字】
標準文字を利用する場合、忘れずに【標準文字】と記載しましょう!
なお、標準文字で出願した商標は、公開データベース(J-PlatPat)にも、「標準文字商標」と記載されます。
標準文字で商標登録する場合に掛かる費用
標準文字で商標登録する場合、ざっくりと言えば、①出願時と②登録時に、費用が掛かります。
特許庁での審査で、拒絶理由通知を受けた場合、別途、拒絶理由通知に応答するための費用が掛かる可能性があります
なお、標準文字の場合も、ロゴや図形を商標登録する場合と費用は一緒です。
出願時に掛かる費用
自分で商標出願した場合でも、特許庁に支払う印紙代が、掛かります。
以下の通り、印紙代は、区分(商品・サービスのカテゴリー)の数で、決まります。
1区分目:12,000円
追加1区分あたり:8,600円
また、弁理士に商標出願を依頼すると、弁理士の手数料も掛かります。
ちなみに、筆者の事務所(すみや商標知財事務所)の場合、以下の通りです。
1区分目:50,000円(税抜)
追加1区分あたり:30,000円(税抜)
登録時に掛かる費用
登録時にも、特許庁に支払う印紙代が掛かります。
なお、登録料の納付方法は、10年分一括と5年分分割を選ぶことができ、印紙代は、各々、以下の通りです。
10年分一括(10年分の費用):32,900円(1区分あたり)
5年分分割(5年分の費用):17,200円(1区分あたり)
また、弁理士が商標出願を代理している場合、弁理士の手数料も掛かります。
ちなみに、筆者の事務所(すみや商標知財事務所)の場合、区分の数に関係なく、30,000円(税抜)です。
標準文字制度で分からないことがあれば、特許庁や商標専門の弁理士に相談しよう!
標準文字制度で分からないことがあれば、特許庁に問い合わせましょう。
質問に丁寧に答えてくれるはずです。
また、筆者(すみや商標知財事務所)にご連絡いただいても、大丈夫です。
ご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・標準文字とは、特許庁長官が指定した字体(フォント)の文字です
・様々な書体(フォント)で使用する場合や使用する書体(フォント)が決まっていない場合、標準文字の利用が有効です
・半角文字・半角スペースを含む場合など、標準文字が利用できないケースがあるので、注意しましょう