・指定商品・役務の類否は、類似群コードをもとに、判断するのが、原則になります
・類似群コードが一致すると、指定商品・役務が類似すると推定されます
・本件は例外的なケースですが、類似の推定の判断が覆されました
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、審判番号が不服2021-16289の「ハートノート」の審決例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
審判の請求人は、商標「ハートノート」を出願していて、その指定商品は、以下の16類の商品になります。
ボールペン,シャープペンシル,マーカーペン,ノートブック,メモ帳,手帳,筆記用具,クリアファイル,書類ファイル,バインダー,マグネットクリップ
これに対して、審査において、先行商標「」(商登第5265811号)が、引用されました。
なお、その指定商品中、24類「布製ラベル」の類似群コードが「25B01」になり、請求人の商標出願に係る指定商品と類似すると判断しました。
これに対して、審査段階において、意見書を提出して反論しましたが、反論が認められずに、拒絶査定になりました。
この拒絶査定に対して、不服があり、拒絶査定不服審判を請求したのが、本件になります。
特許庁の判断
指定商品・役務の類否は、原則、類似群コードをもとに、判断にします。
なお、類似群コードについては、以下の記事をご参照ください。
本願商標の指定商品「ボールペン」等と引用商標の指定商品「布製ラベル」は、同一の類似群コード「25B01」が付されています。
よって、これらの商品は、類似するものと推定されますが、実際に商品が類似するか、本件で争点になりました。
結論から言えば、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品は、類似しないと判断しました。
まず、引用商標の指定商品「布製ラベル」は、その表面に商標・品名・分類記号などを表示するためにそれらを記載し、情報伝達や目印のために使用します。
主に、手芸用品のメーカーが製造し、手芸用品の売り場で販売され、需要者は手芸をする者(一般消費者を含む。)になります。
一方、本願商標の指定商品は、「メモ帳」「筆記用具」などの個別具体的な事務用品になります。
主に、事務用品や文房具のメーカーが製造し、文房具の売り場で販売され、需要者は、文房具を使用する一般消費者になります。
そうすると、本願商標の指定商品には、「布製ラベル」と同様の用途の商品が含まれていないと判断しました。
また、需要者の一部を共通にする場合があるものの、生産部門、販売部門、原材料、品質及び用途が一致するものとはいえず、完成品と部品の関係にあるものでもないと考えました。
よって、本願商標の指定商品と引用商標の指定商品は非類似なので、引用商標とは抵触しないと判断しました。
審決例から学べること
商標の実務では、類似群コードをもとに、指定商品・役務の類否を判断するのが、原則になります。
ただし、あくまでも、類似群コードの一致は、商品・役務が類似することが「推定」されるのであり、例外的なケースではありますが、推定の判断を覆すことができます。
本件では、生産部門、販売部門、用途などの相違点を詳細に検討して、商品が類似しないと判断しました。
商標の類否判断に争いの余地がなければ、指定商品・役務の類否を争えないか、検討してみましょう。