「巨峰」事件の判例紹介

まとめ

・被告の段ボールの「巨峰」の文字は、内容物を表示しているに過ぎないと裁判所は判断しました

・結論としては、被告の行為は、原告の商標権を侵害しないと判断しました

・商標としての使用に該当するか否かが、商標権侵害の際には、重要なポイントです

「巨峰」事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、福岡地方裁判所の昭和44年(ヨ)第41号の判決、いわゆる「巨峰」事件の判例を紹介します。

判決文は、こちら

まず、事件の概要を説明します。

商品「包装用容器」を指定する以下の商標登録などを保有する商標権者が、原告になります。

商登第714066号)                                             

一方で、以下のような外観の段ボールを製造・販売していたのが、被告です。

上記の通り、被告の段ボールには、「巨峰」の文字が記載されています。

なお、ぶどうの品種の1つである巨峰の生産者が、巨峰の出荷用の包装用容器として、被告の段ボールを使用していました。

これに対して、「巨峰」の商標権者である原告が、被告の段ボールにおける「巨峰」の使用の差し止めを求めました。

「巨峰」事件の裁判所の判断

あなたは、被告の「巨峰」の使用行為が商標権侵害に該当すると思いますか?

結論から言えば、裁判所は、商標権侵害に該当しないと判断しました

侵害に該当しないと判断した理由は、以下の通りになります。

裁判所の判断の理由

被告の段ボールは、巨峰の出荷用に使用されています。

また、その外観には、「巨峰」の文字以外に、「HIGH GRAPE」や「BEST GRAPE」の文字が記載され、内容物が見えるぶどう葉型の窓も設置されています。

このような実情から、段ボールに記載された「巨峰」の文字は、段ボールの中に巨峰が入っていることを意味し、単に内容物を表示しているに過ぎないと裁判所は判断しました。

つまり、「巨峰」の文字は段ボールの出所を表示しているわけではありません。

結論としては、商標権の侵害には該当しないと判断

被告の行為が、商標の使用には該当しないと、裁判所は判断しました。

よって、原告の商標権の侵害には該当しないという結論になりました。

「巨峰」事件の判例から学べること

確かに、被告は、段ボールに「巨峰」の文字を使用しています。

よって、形式的には、被告の行為は、原告の商標権を侵害しているように思えます。

しかし、商標としての使用に該当するか否かが、商標権侵害の判断のポイントです。

商標としての使用でなければ、本件のように、商標権侵害には該当しません。

使用態様をきちんと確認した上で、商標としての使用に該当するか、つまり、商品・サービスの出所を表示しているか、検討しましょう。

商標権を侵害するか、判断が難しければ、専門家に相談!

商標権を侵害するか、商標としての使用に該当するか、正直、判断するのは難しいです。

判断に迷ったら、商標専門の弁理士・商標業務に精通している弁護士に相談しましょう。

筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。

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