「東京メトロ」事件の判例紹介

まとめ

・無料で読者に配布するフリーペーパーでも、商標法上の「商品」に該当すると裁判所が判断しました

・フリーペーパーの配布を予定する場合には、「新聞」や「印刷物」などの16類での商標出願を検討しましょう

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、知的財産高等裁判所の平成19年(行ケ)第10008号の判決、いわゆる「東京メトロ」事件の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

原告は、東京地下鉄株式会社で、16類「新聞,雑誌」を指定商品とする「東京メトロ」の商標登録を保有していました。

これに対して、不使用取消審判が請求されて、指定商品につき本件商標を使用したとはいえないとして、本件商標の商標登録を取り消す旨の審決が下されました。

この審決に不満のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが、本件になります。

裁判所の判断

結論から先に言えば、原告の「新聞」についての本件商標の使用が認められて、判断が覆りました。

争点になったのは、いわゆる「フリーペーパー」が、商標法上の商品に該当するか否か、になります。

なお、商標法上の商品については、以下の記事を参照ください。

無料紙(フリーペーパー)は、配布先の読者からは対価を得ていませんが、記事とともに掲載される広告については、広告主から広告料を得ています。

つまり、読者から購読料という対価を得なくても経費を賄い、利益が得られるビジネスモデルになります。

このような形態の取引を無料配布部分も含めて全体として観察すれば、商取引に供される商品に該当すると裁判所は判断しています。

また、読者は、掲載された広告のみならず、記事にも注目している、あるいは、広告よりもむしろ記事に注目している場合があります。

無料紙(フリーペーパー)が人気になれば、その無料紙が築き上げた信用にフリーライドされたり、希釈化されたりする事態も起こり得るので、無料紙においても、付された商標による出所表示機能を保護する必要性があります。

このような事情から、無料紙(フリーペーパー)が商標法上の「商品」に該当すると判断して、記事とともに広告を掲載した無料紙に商標を付し、読者に無料で配布する行為が、指定商品「新聞」についての商標の使用と裁判所が判断しました。

判例から学べること

この判例から、フリーペーパーが商標法上の商品に該当する可能性があります。

あなたが事業を始める場合で、フリーペーパーの配布を予定していれば、「新聞」や「印刷物」などの16類での商標出願を検討しましょう

また、単なる広告か、フリーペーパーなのか、判断が難しい場合には、できれば、弁理士に相談しましょう。

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