「BOSS」事件の判例紹介

まとめ

・ノベルティの流通性が否定されて、商標法上の商品には該当しないと判断されました

・結論としては、商標権侵害に該当しないと判示されました

・現在は、フリマアプリも流行していて、必ずしも、同様の判断が下されるか分かりませんので、注意が必要です

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、大阪地方裁判所の昭和61年(ワ)第7518号の判決、いわゆる「BOSS」事件の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

以下の商標登録を保有する登録権者のヒューゴ・ボス社が、本件の原告で、その商標登録の指定商品は、「被服」「布製身回品」「寝具類」になります。

(登録第695865号)                                            

これに対して、電子楽器などの製造・販売を行っていた被告は、電子楽器類の宣伝広告及び販売促進用の物品(ノベルティ)として、BOSSと記載したTシャツ、トレーナー及びジャンパーを配付しました。

なお、これらのTシャツなどは、被告が製造した電子楽器の購入者に対して、直接又は販売店を通じて無償で配付されていました。

原告が、上記の商標登録に基づいて、被告に対して、商標権侵害を主張して、裁判を提起しました。

裁判所の判断

結論から言えば、裁判所は、商標権侵害に該当しないと判断しました

被告が配布しているTシャツなどが、商標法上の商品に該当するか否かが、争点になりました。

商標法上の商品については、以下の記事で説明しているので、ご参照ください。

被告のTシャツなどは、ノベルティとして無償配布しているに過ぎず、それ自体を取引の目的とするものではなく、また、配布方法から、入手する者が限定されていて、将来、市場で流通する蓋然性が認められないと判断されました。

結局、それ自体が独立の商取引の目的物たる商品ではなく、電子楽器の単なる広告媒体にすぎないので、「被服」などの指定する原告の商標登録を侵害することはないと判示されました。

判例から学べること

この判例では、ノベルティの流通性は、商標法上の商品には該当しないと判断されました。

ノベルティの判断の1つの目安になる判例になります。

しかし、現在では、当時と異なり、フリマアプリも流行していて、実際には、ノベルティ商品が流通しています。

必ずしも、本件と同様の判断が下されるか分からないので、注意が必要です

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