・「KAZE」のロゴ商標(本願商標)が、引用商標「KAZE」と類似するか、裁判所で争われました
・本願商標は、3段の構成からなる結合商標で、大きく目立つように記載された2段目の「KAZE」部分が、本願商標の主要部と判断しました
・「KAZE」部分の「A」の文字が、ロゴ化されているものの、引用商標とは称呼(読み)と観念(意味合い)が同一なので、本願商標は引用商標と類似すると判断しました
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和5年(行ケ)第10005号の判決、「KAZE」のロゴ商標の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、「被服」を指定して、以下のロゴ(以下、「本願商標」といいます)を商標出願しました。
しかし、特許庁の審査で、本願商標が、以下の引用商標と抵触するとして、本件の商標出願が拒絶されました。
この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しました。
しかし、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。
この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。
「KAZE」のロゴ商標が、文字商標の「KAZE」と類似するか、争われました
裁判所の判断
あなたは、本願商標が、引用商標と類似していると思いますか?
結論から言えば、裁判所は、本願商標が引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却しました。
裁判所の判断について、紹介していきます。
「KAZE」部分が本願商標の主要部分か?
本願商標は、3段の構成からなる結合商標です。
3段の各構成部分は、外観上、それぞれ独立していて、視覚上、分離して認識できます。
その中でも、「KAZE」部分が、他の文字に比べて、大きく記載されています。
また、平行線の間に「KAZE」と記載されているので、「KAZE」の文字が目立ちます。
以上より、本願商標の主要部分は、「KAZE」部分とのことです。
よって、本願商標から「KAZE」部分を抽出して、引用商標と比較して、商標の類否を判断できます。
「KAZE」部分が、明らかに、目立つように記載されているので、裁判所の判断は妥当です
本願商標の「KAZE」部分と引用商標「KAZE」が類似するか?
称呼(読み)・観念(意味合い)・外観(見た目)を比較して、総合的に商標の類否を判断します。
まず、本願商標の「KAZE」部分も、引用商標「KAZE」も、どちらも「カゼ」と読みます。
次に、観念(意味合い)を比較すると、どちらも、「風」及び「風邪」の意味合いが生じるとのことです。
最後に、外観(見た目)を比較すると、引用商標は「KAZE」の文字です。
一方、本願商標の「KAZE」部分は、「A」の文字がロゴ化されているので、外観は同一ではありません。
しかし、「K」「A」「Z」「E」の文字から構成される点は、共通します。
よって、本願商標の主要部分と引用商標が類似するので、本願商標は引用商標と類似すると判断しました。
判例から学べること
商標の中から一部分が、分離・抽出して、認識されることがあります。
特に、本願商標のように、一部分だけ大きく記載したり、一列に記載していない場合は、要注意です。
なお、商標から一部分が分離・抽出されるか、判断基準を最高裁判所が示しています。
以下の「つつみのおおみなっこや」事件も、ご参照ください。
また、商標をロゴ化すれば、見た目が違うので、先行商標と区別できると考えている人が多いです。
しかし、本件のように、商標をロゴ化しても、生じる称呼や観念・構成する文字も同じだと、商標が類似する可能性が高いです。
先行商標と区別したい場合には、正しい知識をもって、対応を考えましょう。
商標の外観が大きく相違していても、構成する文字が同じだと、商標が類似する可能性が高いです