「KAZE」のロゴ商標の判例紹介

まとめ

・「KAZE」のロゴ商標(本願商標)が、引用商標「KAZE」と類似するか、裁判所で争われました

・本願商標は、3段の構成からなる結合商標で、大きく目立つように記載された2段目の「KAZE」部分が、本願商標の主要部と判断しました

・「KAZE」部分の「A」の文字が、ロゴ化されているものの、引用商標とは称呼(読み)と観念(意味合い)が同一なので、本願商標は引用商標と類似すると判断しました

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、知的財産高等裁判所の令和5年(行ケ)第10005号の判決、「KAZE」のロゴ商標の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

原告は、「被服」を指定して、以下のロゴ(以下、「本願商標」といいます)を商標出願しました。

(商願第2021-60396号)

しかし、特許庁の審査で、本願商標が、以下の引用商標と抵触するとして、本件の商標出願が拒絶されました。

(商登第6468175号)

この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しました。

しかし、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。

この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。

「KAZE」のロゴ商標が、文字商標の「KAZE」と類似するか、争われました

裁判所の判断

あなたは、本願商標が、引用商標と類似していると思いますか?

結論から言えば、裁判所は、本願商標が引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却しました

裁判所の判断について、紹介していきます。

「KAZE」部分が本願商標の主要部分か?

本願商標は、3段の構成からなる結合商標です。

3段の各構成部分は、外観上、それぞれ独立していて、視覚上、分離して認識できます。

その中でも、「KAZE」部分が、他の文字に比べて、大きく記載されています。

また、平行線の間に「KAZE」と記載されているので、「KAZE」の文字が目立ちます。

以上より、本願商標の主要部分は、「KAZE」部分とのことです。

よって、本願商標から「KAZE」部分を抽出して、引用商標と比較して、商標の類否を判断できます

「KAZE」部分が、明らかに、目立つように記載されているので、裁判所の判断は妥当です

本願商標の「KAZE」部分と引用商標「KAZE」が類似するか?

称呼(読み)・観念(意味合い)・外観(見た目)を比較して、総合的に商標の類否を判断します。

まず、本願商標の「KAZE」部分も、引用商標「KAZE」も、どちらも「カゼ」と読みます。

次に、観念(意味合い)を比較すると、どちらも、「風」及び「風邪」の意味合いが生じるとのことです。

最後に、外観(見た目)を比較すると、引用商標は「KAZE」の文字です。

一方、本願商標の「KAZE」部分は、「A」の文字がロゴ化されているので、外観は同一ではありません。

しかし、「K」「A」「Z」「E」の文字から構成される点は、共通します

よって、本願商標の主要部分と引用商標が類似するので、本願商標は引用商標と類似すると判断しました

判例から学べること

商標の中から一部分が、分離・抽出して、認識されることがあります。

特に、本願商標のように、一部分だけ大きく記載したり、一列に記載していない場合は、要注意です

なお、商標から一部分が分離・抽出されるか、判断基準を最高裁判所が示しています。

以下の「つつみのおおみなっこや」事件も、ご参照ください。

また、商標をロゴ化すれば、見た目が違うので、先行商標と区別できると考えている人が多いです。

しかし、本件のように、商標をロゴ化しても、生じる称呼や観念・構成する文字も同じだと、商標が類似する可能性が高いです

先行商標と区別したい場合には、正しい知識をもって、対応を考えましょう。

商標の外観が大きく相違していても、構成する文字が同じだと、商標が類似する可能性が高いです

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