「POPPO」のロゴ商標の判例紹介

まとめ

・「POPPO」のロゴ商標が、「ポッポ」及び「POPPO」のロゴ商標に類似すると、裁判所が判断しました

・商標が類似するか、判断する際には、実務上、商標から生じる称呼(読み)が最も重視されます

・本願商標と引用商標から生じる称呼(読み)は「ポッポ」で共通しているので、裁判所の判断は妥当だと思います

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、知的財産高等裁判所の令和5年(行ケ)第10060号の判決、「POPPO」のロゴ商標の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

原告は、「株式会社大分からあげ」です。

原告は、大分市を中心に、九州で展開している、鶏のから揚げのチェーン店です。

(「株式会社大分からあげ」のホームページより)

社長の愛称は、「ポッポおじさん」です。

そこで、原告は、以下の「POPPO」のロゴ(以下、「本願商標」といいます)を商標出願しました

(商願第2020-42754号)

なお、指定商品・役務は、「とりの唐揚げ」や「鳥から揚げを主とする飲食物の提供」です。

しかし、特許庁の審査で、本願商標が、以下の引用商標と抵触するとして、本件の商標出願が拒絶されました

(商登第3138170号)
(商登第6286187号)

この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しました。

しかし、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。

この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。

裁判所の判断

あなたは、本願商標が、引用商標と類似していると思いますか?

結論から言えば、裁判所は、本願商標が引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却しました

特許庁・審判・裁判所の判断を、まとめると、以下の通りです。

・特許庁の判断→本願商標は、引用商標と類似する

・審判での判断→本願商標は、引用商標と類似する

・知財高裁の判断→本願商標は、引用商標と類似する

裁判所の判断について、紹介していきます。

本願商標から「POPPO」の文字部分が分離・抽出して認識される!

本願商標は、以下の通り、「POPPO」の文字と図形から構成される結合商標です。

本願商標が、図形部分及び文字部分が一体として結合していると、原告は主張しました。

つまり、本願商標から「POPPO」の文字部分が、分離・抽出して認識されないと、主張しました。

しかし、裁判所は、原告の主張を認めませんでした。

本願商標の構成について、検討していきます。

「POPPO」の文字は、図形部分の中央の目立つ位置に、白抜きの読み取りやすい書体で、明瞭に記載されています。

よって、図形部分と文字部分が、それぞれ視覚的に分離、独立した印象を与えます

また、本願商標の図形部分は、一見して何を表すものであるか、看取することができません。

つまり、図形部分から、直ちに特定の観念及び称呼が生じません。

よって、称呼上・観念上も、図形部分と文字部分に、一体性・まとまりがありません。

以上のような状況を踏まえて、図形部分と文字部分が、不可分的に結合していないと、裁判所は、判断しました

つまり、本願商標から「POPPO」の文字部分が分離・抽出して認識されます

視覚上、容易に、「POPPO」の文字を分離して認識できるので、裁判所の判断は妥当です

本願商標は、引用商標と類似している

引用商標中の「ポッポ」もしくは「POPPO」の文字から、「ポッポ」の称呼(読み)が生じます。

また、本願商標中の「POPPO」の文字部分からも、「ポッポ」の称呼(読み)が生じます。

本願商標と引用商標は、生じる称呼「ポッポ」が共通しています。

一方、本願商標と引用商標は、外観(見た目)が、相違します。

しかし、外観の相違が、称呼の共通性による印象を凌駕するほど、顕著なものではないと、裁判所は判断しました。

よって、本願商標と引用商標は類似すると、裁判所は結論を下しました。

確かに、外観(見た目)は、大きく異なります。しかし、称呼(読み)が共通する以上、商標が類似するとの判断は、止むを得ません

判例から学べること(商標から生じる称呼(読み)が重視される!)

本願商標と引用商標を比較すると、外観(見た目)が大きく相違します。

実際、需要者・取引者は、本願商標と引用商標を間違えることなく、区別できるかもしれません。

しかし、商標の類否の判断において、実務上、生じる称呼(読み)が重視されます

見た目が大きく異なっていても、生じる称呼が同じだと、商標が類似すると判断される可能性が高いです。

このような実情を踏まえると、本件の裁判所の判断は妥当です

同一の先行商標が見つかった場合、どのように対応すべきか、相談を受けることがあります。

依頼者が、「片仮名からアルファベットへの変更」や「文字のロゴ化」を提案しました。

しかし、そのような対応では、生じる称呼(読み)に変更がありません。

納得されない依頼者もいらっしゃいますが、残念ながら、依然として先行商標が障害となる危険性があります。

商標の実務では、称呼(読み)が重視されるので、止むを得ません。

できれば、別の商標を採択したり、他の文字を追加したりして、生じる称呼(読み)が変更になるよう、お勧めしています。

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