・「REIGN」のロゴ商標が、「REIGN」と認識できる引用商標と類似すると、裁判所は判断しました
・引用商標の3文字目は、デザイン化されていますが、「I」を意味するものと認識されると判断しました
・文字の一部分をデザイン化する手法は、一般的です。しかし、デザイン化の程度によっては、文字と認識されて、他者の登録商標と類似する危険性があります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和5年(行ケ)第10017号の判決、「REIGN」のロゴ商標の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、「被服」などを指定して、以下のロゴ(以下、「本願商標」といいます)を商標出願しました。
しかし、特許庁の審査で、本願商標が、以下の引用商標と抵触するとして、本件の商標出願が拒絶されました。
この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しました。
しかし、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。
この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。
裁判所の判断
あなたは、本願商標が、引用商標と類似していると思いますか?
結論から言えば、裁判所は、本願商標が引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却しました。
裁判所の判断について、紹介していきます。
本願商標の図形と文字の構成について
本願商標は、図形と文字から構成されます。
しかし、図形部分と文字部分の間には、空白部分が存在します。
よって、図形部分と文字部分、それぞれ視覚的に分離・独立した印象を与えるとのことです。
つまり、文字部分が、本願商標から分離・独立して認識されると判断しました。
文字部分と図形部分が離れているので、各々が分離・独立して認識されるのは、妥当な判断です
本願商標から「REIGN」の文字部分を分離・抽出して認識するか?
本願商標の文字部分は、「REIGN」と「TOTAL BODY FUEL」から構成されます。
しかし、それぞれ、文字の大きさやフォントが異なります。
「REIGN」の文字が、太いフォントで大きく記載されています。
また、「REIGN TOTAL BODY FUEL」全体から、特定の観念(意味合い)が生じません。
よって、強く支配的な印象を与える「REIGN」の文字部分を抽出して、認識されると判断しました。
「REIGN」の文字が目立つように記載されているので、「REIGN」部分が、本願商標の主要部分と判断しました
引用商標をどのように認識するか?
引用商標の3文字目は、デザイン化した文字です。
このデザインを「I」を意味するものと認識できるか、問題となりました。
結論から言えば、取引者・需要者は、「I」を意味するものと認識すると判断しました。
その理由として、以下のように、「I」(または「i」)に代えて、デザインを使用されている例を挙げました。
他社の事例も参酌した上で、引用商標中のデザイン化した文字が、「I」を意味するものと認識されると判断しました!
本願商標と引用商標の類否判断
本願商標の主要部分の「REIGN」部分と引用商標を比較します。
「REIGN」の文字列が同一であり、外観において、近似します。
また、生じる称呼(読み)と観念(意味合い)も共通します。
よって、本願商標と引用商標は類似すると判断しました。
個人的には、本願商標と引用商標が類似するという裁判所の判断は、妥当だと思います
判例から学べること
文字の一部分をデザイン化する手法は、一般的に行われています。
デザイン化の程度によっては、文字と認識できない可能性があります。
つまり、文字ではなく、図形と認識されます。
一方、本件のように、デザイン化しても、文字と認識できる場合があります。
文字と認識できた場合、他者の登録商標と類似する危険性があります。
本件を参考に、デザイン化された部分が、文字と認識されるか、検討しましょう。
文字と認識されるか、それとも、図形と認識されるか、デザイン化の程度にもよるので、なかなか判断が難しいです