・一回性・単発のCDアルバムに使用されているタイトルは、商標法上の「商標」ではないと判示されました
・一方、反復・連続して製作・販売される「シリーズもの」のCDアルバムのタイトルは、商標法上の「商標」に該当する可能性があります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、東京地方裁判所の平成6年(ワ)第6280号の判決、いわゆる「UNDER THE SUN」事件の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、「レコ-ド」などを指定商品とする以下の商標登録を保有していました。
一方、被告は、以下の「UNDER THE SUN」というタイトルのCDアルバムを製造・販売していました。
原告は、訴訟を提起して、自己の商標権の侵害を主張し、損害賠償などを被告に対して請求しました。
裁判所の判断
音楽のCDアルバムのタイトルは、商標に該当するでしょうか?
結論から言えば、商標権侵害に該当しないとして、裁判所は、原告の請求を棄却しました。
被告のCDアルバムは、「シリーズもの」ではなく、多くのCDアルバムと同様、一回性・単発のもので、複数の特定の曲を特定の順序で配列したアルバムになります。
なお、「シリーズもの」とは、連作のアルバムで、一定の編集方針に基づき、それぞれ異なる内容の曲によって構成されるアルバムが、同一のタイトルの下に反復、連続して製作、販売されるものになります。
よって、タイトルの「UNDER THE SUN」は、本件のCDアルバムを表示するのであり、その出所(販売主体であるレコード会社)を表示するものではありません。
つまり、被告のCDアルバム上の「UNDER THE SUN」は、無体物である編集著作物を表示するものであり、商品である媒体CDを表示するものではありません。
商標としての機能(自他商品識別機能及び出所表示機能)を発揮しないので、CDアルバムに使用されている「UNDER THE SUN」は、商標法上の「商標」ではないと、裁判所は判断しました。
判例から学べること
本件の判例では、一回性・単発の音楽のCDアルバムのタイトルは、商標法上の「商標」に該当しないと判断されました。
ただし、「シリーズもの」の音楽CDアルバムについては、例外的に、商標法上の「商標」に該当する可能性がありますので、注意しましょう。
自他商品識別機能及び出所表示機能など、商標としての機能を発揮するかどうかが、判断のポイントになります。