【中国】自分の商標を他人に横取りされたら(冒認出願の対応)

まとめ

・冒認出願とは、第三者が他人の商標を盗み、無断かつ勝手に、出願された商標出願です。中国では、膨大な量の冒認出願が行われています

・中国で、自分の商標が他人に取られたら、異議申し立て、無効宣告(無効審判)、不使用取消審判での対応が考えられます

・冒認出願を防ぐには、防衛的に、中国で商標出願することが有効かつ重要です

冒認出願とは

知財の専門用語ですが、あなたは、「冒認出願」を知っていますか?

冒認出願とは、第三者が他人の商標を盗み、無断かつ勝手に、出願された商標出願を言います。

例えば、あなたが、「ABC」という名前のケーキを日本で販売していて、爆発的に人気を得たとします。

「ABC」という名称が商標出願されていないことに気づいた第三者がします。

その第三者が、無断で、日本の特許庁に「ABC」の商標出願をしました。

この場合、第三者の「ABC」の商標出願が、冒認出願に該当します。

さらに、舞台を世界に移して、検討します。

今度は、あなたが日本で「ABC」の商標登録を取得しました。

しかし、「ABC」の商標登録を中国では取得しなかったとします。

そのことに気が付いた第三者が、中国において、「ABC」の商標出願をしたとします。

この場合には、第三者の「ABC」の商標出願が、中国での冒認出願に該当します

冒認出願とは、第三者が他人の商標を盗んで、無断で出願された商標出願です

中国での冒認出願の実態

中国では、膨大な量の冒認出願が行われていています。

個人の中国人やダミー会社が商標出願していることが多いです。

中国での冒認出願は、金銭的な目的がほとんどです。

具体的には、日本の権利者が接触してきたら、高値で中国の商標登録を譲る旨、交渉を持ち掛けます。

中国では、比較的、安く、商標登録を取得できます。

高値で商標登録を売ることができれば、莫大な利益を得ることができます。

一人の中国人が、数百件の冒認出願していることも、珍しくありません。

多くの日本企業が、中国での冒認出願に悩まされています。

実際、私自身も、お客さまから、中国での冒認出願の相談を何度も受けたことがあります。

中国の商標出願は、日本と比べて、桁違いに多いです。その中には、膨大な量の冒認出願が含まれています!

中国での無印良品の商標のケース

日本でも有名な無印良品も、中国での冒認出願に悩まされている企業の1つです。

無印良品は、中国において、商標「無印良品」を商標出願しましたが、24類の「タオル」などは、商標出願していませんでした。

そうしたら、無関係の中国企業が、24類で商標「無印良品」を取得してしまいました。

このことに気が付いた日本の無印良品は、商標登録の取り消しを図りました。

しかし、残念ながら、中国企業の24類の「無印良品」の商標登録を取り消すことができませんでした。

一方、無関係の中国企業が、日本の無印良品にそっくりな店舗を中国国内で展開しました。

そして、驚くことに、中国企業が、日本の無印良品を訴えました。

日本の無印良品は争いましたが、残念ながら、中国企業に敗訴してしまいました。

冒認出願した中国の企業が、正当な商標権者として、中国で事業を展開して、日本の無印良品を悩ませています

自分の商標が他人に取られた場合の対策

自分の商標が他人に取られた場合の対策は、主に3つありますので、以下、紹介していきます。

なお、場面や状況によって、取るべき対策が異なります。

異議申し立て

商標出願が、中国の商標局の審査を通過すると、公報に掲載されて、公告になります。

出願商標が登録になることに不服があれば、異議を申し立てることができます。

例えば、以下の商標は、異議申し立ての対象に該当します。

他人によって先に使用された結果、一定の影響力があり、不正な手段により先行して商標登録された商標

もし、異議申し立てが認められれば、商標登録を取り消すことできます。

ただし、異議申し立てができるのは、出願商標が公告されてから、3ヶ月間です

公告日から3ヶ月経過した場合には、次に紹介する対応を検討しましょう。

無効宣告(無効審判)の請求

商標が登録になってから、中国での冒認出願に気が付いたら、無効宣告(無効審判)の請求が考えられます。

異議申し立てと同様、例えば、以下のような商標が、無効宣告(無効審判)の対象になります。

他人によって先に使用された結果、一定の影響力があり、不正な手段により先行して商標登録された商標

もし、無効宣告(無効審判)が認められれば、商標登録を取り消せます。

無効宣告(無効審判)の請求期限は、原則、商標登録が許可されてから5年間です。

ただし、著名商標で悪意のある冒認出願の場合には、5年間の制限を受けずに、請求できます。

不使用取消審判の請求

商標登録されてから、3年、経過した場合には、不使用取消審判を請求することができます。

日本と同様、不使用取消審判での立証責任は、権利者側にあります。

つまり、商標権者が、期間内の使用証拠を提出する必要があります。

もし、商標権者が使用証拠を提出できなかったり、提出した使用証拠は不適切だったら、商標登録が取り消されます。

冒認出願に対しては、異議申し立て・無効宣告(無効審判)・不使用取消審判が考えられます。場面や状況によって、取るべき対応が異なります!

冒認出願を事前に防ぐために(中国での商標出願の必要性)

異議申し立てや無効宣告(無効審判)では、中国国内で有名であるか、判断のキーポイントの1つです。

よって、中国において、商標を使用していなかったら、対象の商標登録を取り消せないかもしれません。

また、不使用取消審判も、商標登録から3年経過しないと、請求できません。

さらに、無印良品のケースのように、冒認出願の出願人が、対象の商標を使用すると、危険です。

不使用取消審判では対応できなくなります。

冒認出願のトラブルを事前に回避するためには、中国で商標出願することが有効かつ重要です。

インターネットの普及・外国人観光客(特に中国の観光客)の急増で、日本のブランド情報はすぐに中国に伝わります。

仮に、中国で事業展開していなくても、展開する予定・見込みがあれば、防衛的に中国で商標出願することをお勧めします。

将来、中国に事業展開する可能性があれば、なるべく早く、中国で商標出願することがお勧めです!

補助金制度の活用の検討

商標出願を含む、中国での冒認出願の対策には、コストが掛かります。

特に、中小企業・スタートアップ企業にとっては、安くはない金額です。

一定の条件を満たせば、補助金・助成金を出してくれる団体もあります。

例えば、日本貿易振興機構、通称、ジェトロ(JETRO)です。

ジェトロは、冒認対策の外国での商標出願に対して、出願費用を助成しています。

また、外国での商標出願に対して補助金を出している地方公共団体もあります。

実際、私自身も、補助金を活用した外国商標出願を、数回、お手伝いしたことがあります。

インターネットなどを使って、利用できそうな補助金制度がないか、調べてみましょう。

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