【2022年後半】商品・サービスの内容表示として拒絶された審決例

まとめ

・商標が識別力を有するか否か、判断するのは、かなり難しいです

・識別力の判断の感覚を養うためには、多くの事例に接することが重要です

・商品・サービスの内容表示に過ぎないとして、識別力を有さないと判断された2022年後半の審決例を紹介します

はじめに

10年以上、商標専門の弁理士として働いていますが、それでも、商標が識別力を有するか否か、判断するのは難しいです。

特に、担当の審査官の主観によって、判断が変わる印象にあります。

識別力の判断の感覚を養うためには、多くの事例に接することが重要です。

そこで、商品・サービスの内容表示に過ぎないとして、識別力を有さないと判断された2022年後半の審決例を紹介します。

商標「マスク不調」(不服2022-000764)

本願商標に係る指定商品は、「薬剤」や「衛生マスク」などになります。

新型コロナ感染症対策でマスク着用が重要になり、実際、「マスク○○」(○○は体の不調の症状)や「マスク不調」の語が使用されているとのことです。

さらに、マスクを着用することによる心身の不調に対応した「薬剤」や、それらの症状への「マスク」による対策も紹介されているとのことです。

よって、その指定商品中「薬剤」及び「衛生マスク」に使用した場合、本願商標は、「マスク着用による身体の不調」程度の意味合いしか生じず、商品の用途や品質を表示したに過ぎないと判断しました。

商標「観光検定(カンコウケンテイ)」(不服2021-016276)

本願商標に係る指定役務は、「検定試験の企画・運営又は実施及びこれらに関する情報の提供」などになります。

「観光」も「検定」も一般的に親しまれている単語なので、本願商標から、「観光に関する検定」程度の意味合いが容易に理解できます。

また、本願の指定役務を提供する業界において、各地の観光に関する知識等を検査するための検定が行われているとのことです。

実際、名古屋観光検定や奥尻観光検定などが行われているようです。

よって、本願商標は、観光に関する検定や、観光の知識を検査するための検定を表示しているだけで、サービスの内容表示に過ぎないとして、識別力を有さないと判断しました。

商標「特醸赤」(不服2021-015933)

本願に係る指定商品は、「果実酒」や「アルコール飲料(ビールを除く。)」などになります。

「特醸」の文字は、辞書には掲載されていないが、「特別な醸造」もしくは「特別な方法で醸造されたもの」の意味合いで、遅くとも1981年頃から使用されているとのことです。

また、「赤」の文字は、「果実酒」との関係では、「赤ワイン」を指すとのことです。

なお、ワイン業界では、「○○赤 」(「〇〇」の文字は商品の品質を表す文字)を「○○な赤ワイン」の意味合いで使用している事実があるようです。

よって、本願商標は、「特別な醸造の赤ワイン」もしくは「特別な方法で醸造された赤ワイン」という商品の品質を表示しているに過ぎず、識別力を有さないと判断しました。

商標「極短ジョイント」(不服2021-010398)

本願商標に係る指定商品は、「金属製管継ぎ手」や「軸継ぎ手(陸上の乗物用のものを除く機械要素。)」などになります。

「極」は「きわめて」の意味で、「短」は「みじかい」の意味で広く知られています。

よって、本願商標「極短ジョイント」から、「極めて短い継ぎ手」程度の意味合いが容易に認識されるとのことです。

現に、様々な分野において、「極短」の文字が「極めて短い」程度の意味合いで使用されているようです。

以上より、本願商標は、「極めて短い継ぎ手」程度の意味合いしか生じず、商品の品質表示に過ぎないので、識別力を有さないと判断しました。

商標「クールミスト」(不服2022-004526)

本願商標に係る指定商品は、「着用時に冷感を生じさせるために衣類に噴霧する化学剤」などになります。

「クール」は、「冷たいさま」などの意味、また、「ミスト」は、「霧状のもの。また、噴霧するもの。」の意味で広く知られています。

よって、本願商標からは、「冷たく涼しくてさわやかな、噴霧するもの」程度の意味合いしか生じないとのことです。

現に、ミストを噴霧して肌に冷感や清涼感を与える商品が取引されていて、また、商品の品質・特徴表示として、「クールミスト」の文字が使用されているようです。

以上より、本願商標は、単に商品の品質を表示したに過ぎないとして、識別力を有さないと判断しました。

「もちもち食感 おいしい雑炊」のロゴ商標(不服2022-004530)

本願商標は、「」になります。

また、本願商標に係る指定商品は、「穀物の加工品」や「雑穀入り米」などになります。

本願商標の「もちもち食感」及び「おいしい雑穀」の文字から、「柔らかく粘りけのある食感の米・麦以外のおいしい穀類」の意味合いが容易に想起されるとのことです。

食料品の業界において、「もちもち食感」や「おいしい雑穀」などの語を使用している実情があるとのことです。

よって、本願商標は、「柔らかく粘りのある食感の米・麦以外のおいしい穀類」を意味しているに過ぎないとのことです。

以上より、本願商標は、商品の品質、原材料などを具体的に表示しているに過ぎず、識別力を有さないと判断しました。

商標「オンライン税理士」(不服2021-015387)

本願商標に係る指定役務は、「税務書類の作成」や「税務相談」などになります。

近年のデジタル化に伴い、従来は対面で提供されていたサービスが、インターネットを利用して提供されることが一般的になってきました。

そのようなサービスについて、オンラインストア、オンライン診療のように、「オンライン○○」と表示する実情があるとのことです。

また、税理士業界でも、インターネットを利用した税務相談や手続が行われていて、そのようなサービスに「オンライン」及び「税理士」の文字が使用されているとのことです。

よって、本願商標から、「オンラインで業務を行う税理士による役務(サービス)」程度の意味合いしか生じず、単にサービスの質(内容)を表示したに過ぎないと判断しました。

商標「クラフトブリューティー」(不服2022-005536)

本願商標に係る指定商品は、「ティーバッグ入りお茶」や「インスタント茶」などになります。

「クラフト」は「手仕事による製作」の意味、「ティー」は「茶」「紅茶」の意味を有します。

また、「ブリュー」は、「<茶・コーヒーなど>を(熱湯を注いで)入れる」などの意味を有する英語「brew」のカタカナ表記と認識できます。

少量生産でこだわりの素材や製法を用いて作られた商品を「クラフト〇〇」と称している実情があるとのことです。

現に、「クラフトティー」や「クラフトリーフティー」の文字が使用されている例があるとのことです。

さらに、コーヒー業界においては、「クラフトブリュー」は「熟練したバリスタの抽出した(コーヒー)」程度の意味合いで使用されているとのことです。

よって、本願商標は、「少量生産でこだわりの素材や製法を用いて抽出された茶」程度の意味合いしか生じず、商品の品質表示に過ぎないと判断しました。

商標「大きな ひきわり」のロゴ(不服2021-017584)

本願商標は、「」になります。

また、本願商標に係る指定商品は、「ひきわり納豆」になります。

本願商標は、「大きな」及び「ひきわり」の文字を毛筆体風の書体で、2行縦書きにしています。

しかし、このような書体(毛筆体風)・表記方法(縦書きの2行構成)は、食品業界において、広く一般的に採択されているとのことです。

よって、本願商標は、その書体及び表記方法が普通に用いられる域を脱せず、また、「粒の大きさが大きいひきわり納豆」程度の意味合いが生じるとのことです。

以上より、本願商標は、単なる商品の品質表示に過ぎず、識別力を有さないと判断しました。

商標「コラーゲンタオル」(不服2021-009807)

本願商標に係る指定商品は、「タオル」や「タオル製身の回り品」などになります。

コラーゲンには、美肌効果(保湿効果)が期待でき、コラーゲンを利用した商品が多数あります。

実際に、コラーゲンを配合したタオルやボディタオルが取引されているようです。

また、それらを「コラーゲンタオル」や「コラーゲンボディタオル」と称している実情があるとのことです。

このような実情を踏まえると、本願商標から、「コラーゲンを利用したタオル(地)」程の意味合いが容易に生じるので、本願商標は、商品の品質表示に過ぎないと判断しました。

商標「コンタクトの瞳」(不服2021-012226)

本願商標に係る指定商品は、「薬剤(農薬に当たるものを除く。)」などになります。

本願商標から、「コンタクトレンズを装着した瞳」程度の意味合いを認識させるとのことです。

また、目薬や洗眼薬の分野で、「コンタクトの瞳。なぜ乾く?~」のような使用例も存在するとのことです。

よって、本願商標は、「コンタクトレンズを装着した瞳」又は「コンタクトレンズを外した後の瞳」のための商品を意味しているに過ぎないとのことです。

すなわち、本願商標は、商品の品質・用途を表示しているに過ぎないとして、識別力を有さないと判断しました。

商標「ドラマカタログ」(不服2021-013525)

本願商標に係る指定商品・役務は、「電子出版物」や「放送番組の企画・制作又は配給並びにこれらに関する情報の提供」などになります。

本願商標は、「ドラマ」と「カタログ」の語の組み合わせなので、全体として「演劇や芝居の作品の目録・説明書」程度の意味合いが生じるとのことです。

また、新しいドラマ番組の内容をまとめて紹介する際に「ドラマカタログ」と称して使用している実情などがあるとのことです。

よって、本願商標は、「演劇(ドラマ)や芝居の作品の目録・説明書を内容とする商品・役務」を表しているに過ぎず、商品・役務の内容表示なので、識別力を有さないと判断しました。

商標「ふんわり 焼きあげ」(不服2022-002975)

本願商標に係る指定商品は、「加工水産物,焼いた魚介類」になります。

「ふんわり」は「柔らかくふくらんでいるさま。」を意味し、「焼きあげ」は「焼いて作りあげる。」の意味の「焼き上げる」の名詞形になります。

よって、本願商標から、全体として「ふんわりと焼き上げた」といった意味合いを容易に認識させるとのことです。

また、実際に、「ふんわりと焼き上げた」といった商品の品質を表示する語として「ふんわり焼き上げ」と使用されている例もあるとのことです。

以上より、本願商標は、「ふんわりと焼き上げた」といった商品の品質表示に過ぎないので、識別力を有さないと判断しました。

「広範囲のウィルス 細菌を除去」のロゴ商標(不服2022-001775)

本願商標は、「」になります。

本願商標に係る指定商品は、「殺菌消毒剤」や「除菌用アルコール製剤」などになります。

本願商標の文字部分は、「広範囲のウイルスや細菌を除去」することを記述したに過ぎません。

現に、ウイルスや細菌に対する効能(除去効果など)をうたう商品が広く流通しているとのことです。

また、本願商標は、ロゴからなりますが、枠内の構成文字を装飾するための囲い枠との印象を与えるだけで、それ自体では、識別力を有さないと判断しました。

よって、本願商標は、商品の品質・効能を記述する文章を、円図形枠内に普通に用いられる方法で表示しているに過ぎず、識別力を有さないと判断しました。

なお、商標「」(不服2022-001784)も、同様の理由で、識別力を有さないと判断されました。

商標「そのまま購入」(不服2021-017976)

本願商標に係る指定役務は、レンタルサービス、具体的には、「カメラの貸与」や「机の貸与」などになります。

本願商標から、「そのまま購入」すること程度の意味合いを容易に理解することができます。

また、「レンタルそのまま購入!」、「レンタル終了後そのまま購入可」などの表現を使用して、貸与物を返却せずに、そのまま購入できるサービスは、一般的に提供されているとのことです。

よって、本願商標は、その指定役務との関係においては、(貸与物を)「そのまま購入」することが可能な役務であることを想起させるに過ぎないとのことです。

以上より、本願商標は、単に役務の質(内容・購入オプション)を表示しているに過ぎず、識別力を有さないと判断しました。

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