・ありふれた苗字は、原則、識別力を有さないので、商標登録できません
・文字をロゴ化すれば、商標登録を取得できる可能性があります
・日本国内で著名になれば、例外的に、文字商標でも商標登録を取得できる可能性があります
ありふれた苗字の商標登録の可能性
「佐藤」や「鈴木」のような苗字は、商標登録できると思いますか?
結論からいえば、ありふれた苗字を表示する商標を出願すると、原則、識別力を有さないとして、拒絶されます。
商標法3条では、商標登録の要件を規定しています。
同条1項4号において、以下の商標は、原則、登録できない旨、規定しています。
ありふれた氏又は名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
ありふれた苗字だと、誰の商品・サービスか、判別することができません。
つまり、通常、商標として機能しません。
よって、ありふれた苗字は、原則、商標登録できません。
商標審査基準によると、「ありふれた氏又は名称」とは、原則として、同種の氏又は名称が多数存在することをいいます。
よって、「佐藤」、「鈴木」や「田中」は、日本国内でありふれた苗字に該当します。
アルファベット表記の「SATO」やカタカナ表記の「サトウ」も、同様に判断されます。
このような商標も、原則、識別力を有さないとして拒絶されます。
「佐藤」「鈴木」「田中」「サトウ」「SATO」
→原則、商標登録できない!(理由:ありふれた苗字を表示しているに過ぎないから)
ありふれた苗字でなければ、商標登録できます。
しかし、「苗字として、ありふれているか?」、判断が難しく、明確に線引きできないです。
例えば、「大須賀」の苗字が、ありふれていないとして、商標「OSUGA」の商標登録が認められました。
ありふれた苗字の商標登録の対策(ロゴにする)
それでは、ありふれた苗字を商標登録にするには、どうすれば、いいでしょうか?
代表的な方法としては、ロゴ化して商標出願することが挙げられます。
ロゴ化することで、商標法3条1項4号で規定する「普通に用いられる方法で表示する」ものではなくなります。
これにより、商標法3条1項4号の規定を回避できます。
例えば、以下のような登録商標が、ロゴでの登録事例です。
なお、ロゴで商標登録を取得した場合、注意が必要です。
登録商標に類似するロゴ商標を第三者が使用すると、商標権を行使できます。
しかし、「武田」「大塚」など、苗字としての一般的な使用に対しては、商標権の効力が及びません。
ありふれた苗字でも、著名になれば、例外的に商標登録できる
商標法第3条第2項において、以下のように規定しています。
前項第三号から第五号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。
つまり、商標を使用することで、日本国内で広く知れ渡った場合は、例外です。
その結果、特定の商品・サービス分野で著名になれば、ありふれた苗字でも、商標登録できます。
以下、このような例外規定が適用された登録商標です。
これらの登録商標は、いずれも、日本国内で広く知れ渡っています。
例えば、自動車業界の人が、「SUZUKI」のロゴを見たとします。
その人は、一般的な苗字と認識することはなく、自動車メーカーのスズキを想起するでしょう。
「エバラ」「SUZUKI」「Kawasaki」
→例外的に、商標登録が認められる!(理由:業界内で広く知れ渡り、全国的に著名だから)
なお、アルファベット1文字もしくは2文字の場合も、同じような判断・対応方法です。
以下の記事も、併せて、ご参照ください。
苗字の商標登録で分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談!
苗字を商標登録しようとした際に、分からないことが出てくると思います。
分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士