キャッチフレーズやスローガンは、商品やサービスの魅力を伝える上で、非常に重要な要素です。
「せっかく考えたフレーズだから、商標として守りたい」と思われる方も多いのではないでしょうか?
しかし、特許庁の審査においては、こうしたフレーズの商標出願が拒絶されるケースが少なくありません。
本記事では、スローガン・キャッチコピーの商標登録に関する注意点や、実際の登録・拒絶事例を紹介するとともに、ロゴ化などによって登録を成功させるコツも解説します。
キャッチフレーズを商標として保護したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてください。

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています
・キャッチフレーズやスローガンを商標登録できないか、何度も相談を受けました
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
キャッチフレーズやスローガンの商標登録の可能性

キャッチフレーズやスローガンは、商標登録できますか?

キャッチフレーズやスローガンと認識できる商標は、識別力を有さないとして、拒絶される危険性があります!
商標法3条では、商標登録の要件を規定しています。
同条1項6号において、以下の商標は、原則、登録できない旨、規定しています。
前各号に掲げるもののほか、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標
より具体的に、商標審査基準の商標法3条1項6号の項目には、以下のように、規定されています。
出願商標が、その商品若しくは役務の宣伝広告又は企業理念・経営方針等を普通に用いられる方法で表示したものとしてのみ認識させる場合には、本号に該当すると判断する。
つまり、宣伝広告又は企業理念・経営方針などのキャッチフレーズ・スローガンとしてのみ、認識される場合には、商標登録が認められません。
しかし、キャッチフレーズやスローガンと認識されるか、明確な基準がなく、判断が付きにくいのが、実情です。
キャッチフレーズやスローガンの商標登録例と拒絶例

キャッチフレーズやスローガンについて、商標登録されている例・拒絶されている例が知りたいです

最近の審決例から、登録例と拒絶例を紹介します!
以下の商標は、特許庁の審査では、商標法3条1項6号で拒絶されたものの、審判で争った結果、登録が認められた商標になります。
商標「完了画面でクレカ変更」(不服第2021-016061号)
商標「無理なく、無駄なく、美しく」(不服第2022-004467号)
商標「使うたび、新鮮。」(不服第2022-000616号)
商標「艶肌すっぴん美人」(不服第2022-001708号)
一方、以下の商標は、特許庁の審査で、商標法3条1項6号で拒絶されて、審判で争っても、判断が覆らずに、拒絶された商標になります。
商標「かける!待つ!流すだけ!」(不服第2021-015590号)
商標「耳まわり肌トラブル」(不服第2021-009043号)
商標「「製造」じゃない、「創造」だ。」(不服第2022-000305号)
商標「日本一裁判しない弁護士」(不服第2021-014735号)

他者がキャッチフレーズとして同じような商標を使用していないか、勘案されますが、正直、審査官や審判官の主観も影響しています!
商標登録のためのキャッチフレーズやスローガンの対応策(ロゴ化する)
同じようなキャッチフレーズ・スローガンを他者が使用していないようであれば、商標登録にチャレンジすることが考えられます。

拒絶理由を確実に回避したい場合、どうすればいいですか?

拒絶理由を回避したければ、他の文字と組み合わせて、ロゴ化して商標登録することも考えられます!
例えば、以下のような商標は、ロゴ化して、商標登録を取得しています。



ただし、ロゴ化して商標登録を取得することで、権利範囲が狭まるリスクも否定できません。
メリット・デメリットを把握した上で、ロゴ化して商標出願するか否か、検討しましょう。
キャッチフレーズやスローガンの商標登録のよくある質問(FAQ)
以下は、読者の方が迷いがちな実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。
記事本文と合わせてご活用ください。
同一または類似するフレーズがすでに商標登録されている場合、拒絶理由となることがあります。
しかし、商標登録の指定商品・役務や、商標の構成(文字+図形、フォントなど)によって判断が変わるため、一概には言えません。
判断に迷う場合には、商標専門の弁理士への相談をお勧めします!
いいえ、必ず商標登録できるわけではありません。
ロゴ化(文字をデザイン化して図形要素を加えるなど)することで、識別性を補強する手段にはなりますが、それでも拒絶理由が出ることがあります。
また、ロゴ化すると「文字部分」に加えて「図形部分」も権利範囲になるため、保護範囲が狭くなる危険性もあります。
はい、可能です。拒絶理由通知が届いても、意見書での反論や指定商品・役務の補正ができます。
詳しくは、以下の記事で紹介しています。

ただし、拒絶理由の内容、指定商品・役務補正の有効性、コストなどを総合的に判断した上で、戦略を練る必要があります。
いくつかの工夫があります(記事中にも記載あり)。例としては:
- 他の語句や図形と組み合わせて構成を変える
- フォント・デザインで識別性(商標の特徴性)を強化する
- 使用実績(スローガンを用いた広告など)を示して使用による識別力を主張する
- 事前の商標調査を行い、商標登録との抵触リスクを避けて出願する
【まとめ】キャッチフレーズやスローガンの商標登録で分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
・キャッチフレーズやスローガンと認識できる商標は、識別力を有さないとして、拒絶される可能性があります
・ただし、登録例・拒絶例を勘案すると、キャッチフレーズやスローガンと認識されるか否か、審査官・審判官の主観が影響している印象です
・他の文字と組み合わせて、ロゴ化することで、確実に、識別力欠如の拒絶理由を回避できますが、権利範囲が狭まるリスクも否定できません
キャッチフレーズやスローガンの商標登録で分からないことや迷うこともあるかと思います。
そのような場合には、商標専門の弁理士に相談しましょう。

なお、筆者(角谷 健郎)にご連絡いただければ、親身になって、一緒に検討します。
事務所HPからもご相談いただけますが、以下のフォームからも簡単にお問い合わせいただけます。