様々な企業が、自社のキャラクターを作成しています。
また、ゲームキャラクターやご当地キャラクターなど、色々なキャラクターを存在します。
筆者は、10年以上、商標専門の弁理士として働いていて、キャラクターの商標登録をお手伝いしたことは、何度もあります!
この記事を読めば、キャラクターの商標登録のメリットやポイントが分かります。
また、その他の知的財産法による保護と比較して、どのようにキャラクターを保護すべきか、検討しています。
キャラクターを商標登録するメリット!
商標登録を取得するのには、手間やコストが掛かります。
それでも、キャラクターを商標登録するのは、以下のようなメリットがあります。
- 指定した商品・サービスの範囲内で、独占的に登録商標を使用
- 模倣品が販売されたら、商標権侵害を主張
- 他社へのライセンスに商標登録を利用
商標権は、強力な権利です。
特許庁の審査を通過して商標登録を取得できれば、独占的に登録商標を使用できます。
ただし、独占的に使用できるのは、指定した商品・サービスの範囲内に限られます。
キャラクターが人気になると、模倣品が出回ることが多いです。
商標登録は、模倣品の対策に利用できます。
もし、模倣品を見つければ、自己の商標権に基づき、商標権侵害を主張できます。
人気キャラクターは、他社の商品・サービスとコラボすることが多々あります。
その場合、他社とライセンス契約を結びますが、商標登録を利用できます。
つまり、商標登録があれば、ライセンス(利用許諾)の基礎となる権利にできます。
ライセンスする商品・サービスを含んだ商標登録が必要なので、注意です!
他の知的財産権によるキャラクターの保護との比較!
キャラクターを保護するためには、商標権が重要です。
一方、著作権など、他の知的財産権でも、キャラクターを保護できます。
そこで、商標権とその他の知的財産権を比較します。
商標権だけではなく、他の知的財産権(特に著作権)も活用して、厚くキャラクターを保護すべきです!
キャラクター保護と言われて、まずは、著作権を思い浮かべる人が多いでしょう。
確かに、キャラクターの絵やビジュアル的な表現は著作権でも保護されます。
商標権と著作権を比較すると、以下の通りです。
商標権 | 著作権 | |
キャラクターの名称 | ||
権利の発生 | 特許庁への申請が必要 (権利の発生時期が明確) | 創作時に、自動的に生じる (権利の発生時期が不明確なことも) |
保護期間 |
著作権では、キャラクターの名称を保護できない可能性が高いので、注意です!
意匠権を取得するためには、新規性・創作非容易性が条件になります。
よって、すでに公開されているデザインは、原則、意匠登録できないので、注意です。
また、意匠登録するためには、物品を特定する必要があります。
不正競争防止法とは、人気商品をそのまま模倣するような「不正競争行為」を禁止する法律です。
なお、著作権や商標権のように、何らかの「権利」を根拠としていません。
キャラクターが有名になり、「顧客吸引力」を有するキャラクターであれば、不正競争防止法で、保護できる可能性があります。
キャラクターの著名性が条件になるので、不正競争防止法による保護だけに頼るのは、危険です!
キャラクターの商標登録のやり方
多くの人が、キャラクターの商標登録のやり方を知りません。
キャラクターの商標登録のやり方については、以下の記事で、詳しく紹介しています。
【キャラクターの商標登録のやり方】分かりやすく解説!商標登録の願書(申請書)の作成が重要!
商標登録を取得するためには、商標登録の願書(申請書)を作成して、特許庁に提出します。
「知的財産相談・支援ポータルサイト」というウェブサイトで、願書のフォームを入手できます。
例えば、筆者が、自分の事務所のキャラクターとして、「」を使用し、商標登録したいと考えました。
その場合、商標登録の願書を、例えば、以下のように記載します。
願書によって、商標権の権利範囲が決まるので、願書の作成にあたり、以下の2点を十分に検討しましょう。
- 商標登録する商標をどうするか?
- 商標登録する区分(指定商品・役務)をどうするか?
キャラクターを保護したい場合、商標登録する商標をどうするか?
商標登録する商標をどうするか、毎回、悩みながら、依頼者と相談して、決めています。
特に、①キャラクター名と図形を別々に商標登録するか、②キャラクター名と図形を組み合わせて、商標登録するか、迷います。
キャラクター名と図形を別々に商標登録 | VS | キャラクター名と図形を組み合わせて商標登録 |
2件分の費用が掛かる | コスト | 1件分の費用で済む |
キャラクター名と図形、どちらも保護できる | 保護範囲 | キャラクター名と図形、どちらも保護できる |
キャラクター名と図形、自由に使用できる | 使用方法 | どちらか一方のみの使用だと、登録取り消しのリスクあり |
キャラクターの名称と図形を別々に商標登録すれば、各々、商標登録で保護できます。
また、キャラクターの名称・図形、別々に自由に使用して、問題ありません。
一方、デメリットになるのは、コストです。
キャラクターの名称と図形を別々に商標登録するので、2件分の費用が掛かります。
キャラクター名と図形を別々に商標登録している例
例えば、熊本県の人気キャラクター「くまモン」は、キャラクター名と図形を別々に商標登録しています。
また、スーパーマリオの人気キャラクターの「ルイージ」も、別々に商標登録しています。
キャラクター名と図形を組み合わせて、商標登録しても、キャラクターの名称と図形を保護できます。
1件の商標登録で済むので、費用も抑えられます。
実務上、「キャラクター名と図形の組み合わせ」で商標登録は多いです!
なお、キャラクター図形は著作権での保護だけで十分と判断すれば、キャラクター名だけ、商標登録することも考えられます。
キャラクター名と図形の組み合わせの商標の登録例
例えば、キャラクター名と図形の組み合わせの登録例は、以下の通りです。
注意点
商標法には、不使用取消審判という制度があり、3年以上、登録商標を使用していない商標登録を取り消せます。
キャラクター名、もしくは、図形の一方しか、使用していない場合、注意です。
登録商標の使用に該当せず、不使用取消審判で、商標登録が取り消される危険性があります。
「キャラクター名と図形の組み合わせ」で商標登録したら、キャラクター名と図形、どちらも使用しましょう!
キャラクターなので、様々なポーズで使用します。
しかし、全てのポーズを商標登録すると、莫大な費用が掛かります。
基本的には、メインのポーズのみ、商標登録すれば、OKです!
他人がポーズの異なるものを模倣した場合でも、商標権で保護できますか?
キャラクターの特徴が一致していて、登録商標と類似すれば、商標権を行使できます!
文字や図形以外も、商標法の保護対象になります。
例えば、立体的な形状や特定の動きも、商標登録でカバーできます。
立体商標での保護
店舗や施設に設置している置き物や銅像など、立体商標での保護が可能です。
例えば、以下の通り、キャラクターが、立体商標で保護されている例があります。
動き商標での保護
図形が時間の経過に伴って変化する「動き」も、商標登録できます。
キャラクターの動きが特徴的であれば、動き商標の出願を検討しましょう。
例えば、キャラクターの動きの商標登録例が存在します。
→→→→→
キャラクターを保護したい場合、商標登録する区分をどうするか?
商標登録する商標が決まったら、次に、どの区分で商標登録するか、検討します。
「区分」とは、商品・サービスのカテゴリーです
「類似商品・役務審査基準」を見れば、どのような商品・サービスが、どの区分に属するか、分かります。
また、商標登録する区分の数によって、商標登録に掛かる費用が決まります。
なお、商標登録する区分の決め方については、以下の記事で、より詳しく紹介しています。
【キャラクターの商標登録】商標登録する区分の決め方!キャラクターは、イベントで使用することが多いですが、そのような場合、41類での商標登録は、必須です。
例えば、41類には、以下のようなサービスが属します。
- 娯楽イベントの企画・運営又は開催
- 文化に関するイベントの企画・運営又は開催
- スポーツイベントの企画・運営又は開催
- ゲームイベントの企画・運営又は開催
- 音楽イベントの企画・運営又は開催
企業キャラクターの場合、企業の商品・サービスを宣伝・広告するために、使用します。
よって、キャラクターの商標登録は、その企業のメインの商品・サービスをカバーすべきです。
参考の商標登録例
例えば、「」の商標登録です。
ケンタッキー・フライド・チキンのメインの商品・サービスが属する以下の区分で、商標登録しています。
- 29類(鶏肉製品 など)
- 30類(ロールパンで作った鶏肉ハンバーガー など)
- 43類(飲食物の提供 など)
キャラクターが人気になると、そのキャラクターを利用した商品が、販売されます。
例えば、文房具・タオルやスマホケースなどです。
キャラクターの商標登録で、販売するキャラクターグッズを保護することが考えられます。
参考の商標登録例
例えば、世界的に大人気のキャラクターの「マリオ」です。
「」の商標登録は、娯楽イベントの41類の他に、以下の10個の区分を指定しています。
- 9類(スマートフォン用ケース など)
- 14類(キーホルダー など)
- 16類(文房具類 など)
- 18類(バッグ など)
- 20類(クッション など)
- 21類(カップ,皿 など)
- 24類(織物製タオル など)
- 25類(被服 など)
- 28類(おもちゃ など)
- 30類(クッキー など)
キャラクターの商標登録に掛かる費用はどれくらい?
商標登録する区分の数に応じて、特許庁に支払う費用(印紙代)が掛かります。
弁理士に商標出願を依頼した場合には、弁理士に支払う手数料も掛かります。
また、基本的には、①出願時と②登録時の二段階で、費用が生じます。
弁理士に支払う手数料は、自由に決められるので、代理する事務所によって、異なります。
例えば、筆者(すみや商標事務所)の場合、出願時に掛かる費用は、以下の通りです。
印紙代 | 手数料(税抜) | |
1区分目 | 12,000円 | 50,000円 |
追加1区分あたり | 8,600円 | 30,000円 |
特許庁の審査を通過した後、商標登録するためには、特許庁に登録料(印紙代)を支払いします。
例えば、筆者(すみや商標事務所)の場合、登録時に掛かる費用は、以下の通りです。
印紙代(10年分) | 手数料(税抜) | |
1区分目 | 32,900円 | 30,000円 |
追加1区分あたり | 32,900円 | なし |
商標登録した後の費用も含めて、キャラクターの商標登録の費用について、以下の記事で詳しく紹介しています。
【キャラクターの商標登録の費用】概算、相場や節約方法を紹介!個人でのキャラクターの商標登録
専門家に頼らず、自力でキャラクターを商標登録することもできます。
また、法人ではなくても、個人の名義でキャラクターを商標登録できます。
個人でのキャラクターの商標登録については、詳しくは、以下の記事で紹介しています。
【個人でのキャラクターの商標登録】メリットや注意点を教えます!個人でのキャラクターの商標登録のメリットは、「費用」
商標登録に掛かる費用は、安くはありません。
さらに、専門家に依頼すると、より高額になり、数十万円、掛かることもあります。
専門家に頼らず、個人で商標登録する最大のメリットは、費用を抑えられる点です。
個人で商標登録すれば、弁理士に支払う手数料が節約できます。
個人でのキャラクターの商標登録の3つの注意点
個人でキャラクターを商標登録すれば、費用が抑えられる一方で、弁理士などの専門家に頼ることができません。
個人でキャラクターを商標登録する場合の注意点は、以下の3つです。
- 適切な内容での商標登録の願書の作成
- 特許庁からの通知に対して、期限内に適切に対応
- 商標登録後の更新期限の管理
個人でのキャラクターの商標登録が大変なら、専門家に依頼しよう!
費用を節約できるものの、個人でキャラクターを商標登録するには、時間や労力が掛かります。
時間や労力を節約したくて、かつ、適切に自分のキャラクターを保護したい人は、専門家(弁理士)に依頼しましょう。
自分で商標出願にチャレンジしたものの、特許庁から拒絶理由通知書が届き、困ってしまうことが多々あります。
そのような場合、途中から、弁理士に頼ってもOKです。
実際、筆者も、拒絶理由通知書の対応から、お手伝いしたことは多々あります
筆者(すみや商標知財事務所)は、12年以上の弁理士歴がある商標専門の弁理士です。
商標業務でお手伝いできることがあれば、ご相談ください。
弁理士歴12年以上の商標専門の弁理士
出願前に、先行商標を調査しよう(キャラクター商標の検索方法)
類似する先行商標が存在すると、商標出願が拒絶されます。
そのため、出願する前に、先行商標のチェックをお勧めします。
データベース「J-PlatPat」を利用すれば、誰でも、無料で、先行商標を確認できます。
自力で対応するのが難しければ、弁理士に商標調査を依頼しましょう!
なお、検索方法や注意点の詳細については、以下の記事で紹介しています。
【キャラクターの商標登録】検索のやり方や注意点を紹介!公開データベース「J-PlatPat」の「商標検索」を利用します。
「称呼(類似検索)」の欄に、調査対象商標の称呼(読み)をカタカナで入力します。
例えば、商標「虎さん」を調査した場合、「トラサン」と入力します。
また、「類似群コード」の欄に対象の類似群コードを入力して、検索します。
例えば、「文房具」について商標調査したい場合、対象の類似群コードの「25B01」と入力し、「検索」ボタンを押します。
そうすると、「文房具」の分野において、類似する可能性のある先行商標が表示されます。
ヒットした先行商標が、調査した商標に類似しているとは限らないので、個別に検討していく必要があります!
まずは、公開データベース「J-PlatPat」の「図形等分類表」をクリックします。
調査したい画像の「図形等分類」を調べます。
例えば、虎の画像を調べたい場合、以下の通り、図形等分類が「3.1.4.01」だと分かります。
「商標検索」で、対象の図形等分類を入力します。
また、「類似群コード」の欄に対象の類似群コードを入力して、検索します。
例えば、「文房具」について商標調査したい場合、対象の類似群コードの「25B01」と入力し、「検索」ボタンを押します。
そうすると、「文房具」の分野において、虎をモチーフとした図形の先行商標が表示されます。
検索結果をもとに、キャラクター画像の登録可能性を検討しましょう。
キャラクターの商標登録で、迷ったら、商標専門の弁理士に相談しよう!
キャラクターを作成したら、適切に保護するのが、重要です。
保護方法や商標出願で迷ったら、弁理士に相談しましょう。
ちなみに、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、一緒に検討します!
弁理士歴12年以上の商標専門の弁理士
・キャラクターを商標登録することで、①独占的に使用でき、②模倣品の対策になり、③他社へのライセンスに利用できます
・著作権など、その他の知的財産権でもカバーできますが、商標登録を取得することで、より厚く、広範囲に保護できます
・出願する商標や区分は、様々なパターンが考えられるので、実際に使用する態様や予算などに応じて、決めましょう