・コカ・コーラ社は、コーラの瓶の立体的形状を商標出願して、裁判まで争った結果、商標登録になりました
・コカ・コーラ社の長年の使用によって、識別力(著名性)を獲得したと判断されました
・第三者は、同種の商品に、登録商標に係る立体的形状を使用することができないので、強力な商標権になります
事件の概要(コカ・コーラの瓶の立体商標)
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の平成19年(行ケ)第10215号の判決、コカ・コーラの瓶の立体商標の判例を紹介します。
判決文は、こちら。
あなたは、以下の瓶を見て、どこの商品が、すぐに分かりますか?
この瓶は、コカ・コーラ社のコーラの容器で、回収して再利用できるリターナブル瓶です。
コカ・コーラ社は、上記の立体形状を、商標出願しましたが、特許庁の審査では、識別力(特徴性)がないとして、拒絶されました。
また、コカ・コーラ社の長年の使用による識別力(著名性)の獲得も否定されました。
この拒絶査定に対して、不服のあるコカ・コーラ社は、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆りませんでした。
この審決(審判の決定)に対して、訴訟を提起したのが、本件になります。
特許庁の審査・審判では、本件の立体商標は、識別力を獲得していないとして、登録が認められませんでした
コカ・コーラの瓶の立体商標についての裁判所の判断
あなたは、この立体商標が、コカ・コーラ社の長年の使用によって、識別力(著名性)を獲得したと思いますか?
つまり、あなたは、この立体商標を見て、直ちにコカ・コーラ社の商品と分かる程、有名だと思いますか?
結論から言えば、本願商標が、識別力を獲得しているとして、商標登録を認めて、拒絶審決を取り消しました。
裁判所が、本願商標の商標登録を認めた代表的な理由は、以下の2つです。
- 一貫して同一の形状を使用
- テレビや新聞での広告活動や肯定的なアンケートの結果
① 一貫して同一の形状を使用
本願商標に係るリターナブル瓶は、1957年に販売が開始されてから、変更されず、一貫して同一の形状になります。
リターナブル瓶入りのコーラは、驚異的な売り上げを記録して、1971年には、23億8000万本、売り上げました。
なお、ペットボトルなど主流になっても、継続して、ある程度の販売数量は記録しているとのことです。
② テレビや新聞での広告活動や肯定的なアンケートの結果
また、コカ・コーラ社のテレビや新聞の広告でも、本願商標の形状が需要者に印象づけられるよう、工夫されているとのことです。
さらに、コカ・コーラ社は、証拠資料として、アンケート結果も提出しています。
本願商標と同一の立体的形状の無色容器を示して、6割から8割の回答者が、その商品名を「コカ・コーラ」と回答したとのことです。
このようなコカ・コーラ社の長年の使用実績が考慮しました。
本願商標が、識別力を獲得しているとして、裁判所は商標登録を認めました。
コカ・コーラ社がデザインを変えずに、長年、使用した結果、裁判では、本件の立体商標の登録を認めました!
コカ・コーラの瓶の立体商標の判例から学べること
特徴のない立体的形状は、原則、識別力を有さないとして、登録が認められません。
ただし、長年、使用することで、その形状を見れば、どの会社の商品か分かるようになれば、特別に商標登録が認められます。
商標登録を取得することができれば、他者は、同種の商品に、その立体的形状を使用することができません。
さらに、特許や意匠と異なり、商標登録は何度も更新できますので、半永久的に保護できます。
商標登録を取得するハードルは高いですが、取得することができれば、強力な商標権になります。
長年の使用実績により、本来的に識別力のない商標の登録が認められることは、ハードルが高いです。ただ、商標登録を取得できれば、強力な商標権になります!