ヨーグルト「R-1」の商標戦略

まとめ

・商標「R-1」は、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」に該当するので、本来的には、識別力(商標としての特徴性)を有しません

・明治社は、まずは、「R-1」の文字を含むロゴや図形で、商標登録を取得しました

・使用実績を作ってから、文字商標「R-1」に再出願にチャレンジした結果、全国的な著名性が認められて、商標登録になりました

ヨーグルト「R-1」とは

あなたは、ヨーグルトの「R-1」を知っていますか?

「R-1」は、2009年から販売している明治のヨーグルトです。

(株式会社明治のホームページより)

ヨーグルト「R-1」は、販売額も好調で、高い市場シェアを維持し続けています。

また、テレビCMや新聞などで、積極的に広告している商品です。

この商品を見たり、食べたりしたことのある方はかなり多いと思います。

明治のヨーグルト「R-1」は、現在、日本では、広く知れ渡っています。

「R-1」の本来的な識別力(商標としての特徴性)について

それでは、商標「R-1」は、本来的に、識別力(商標としての特徴性)を有すると思いますか?

「R-1」の文字を考察すると、アルファベット1文字と数字をハイフンで結合したに過ぎません。

よって、「R-1」は、「極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標」に該当します

このような商標は、原則、識別力(商標としての特徴性)を有さないと判断され、特許庁の審査で拒絶されます。

現に、明治社は2012年1月に文字商標「R-1」を出願しましたが、識別力を有さないとして拒絶されました。

(商願第2012-5548号)

なお、当時は、商品を販売し始めてから、間もなかったので、商標の使用による識別力の獲得も否定されました。

文字商標「R-1」は、本来的には、識別力(商標としての特徴性)がありません!

識別力が弱い商標へのアプローチ

「R-1」は、明治社の主力商品になるので、どうにかして、商標登録によって、保護したいと考えました。

それでは、明治社は、識別力の弱い商標「R-1」に対して、どのように商標登録の保護を図ったのでしょうか?

明治社の「R-1」の商標戦略について、検討していきます。

「R-1」を含んだロゴ・図形の商標出願

2012年1月に文字商標「R-1」の商標出願とともに、以下の「R-1」のロゴ商標も商標出願しています。

(商登第5614132号)

こちらは、「R-1」の文字が特徴的にロゴ化されているので、識別力を有さないという拒絶理由を回避できます

特許庁で審査した結果、無事、2013年9月に商標登録になりました。

さらに、2016年11月に、「R-1」の文字を含んだパッケージデザインを立体商標として商標出願しました。

(商登第5952135号)
(商登第5960361号)

これらの商標も、2017年6月に商標登録になりました。

ロゴ化したりすることで、識別力を有さないとして拒絶理由を回避できます。

「R-1」のキャッチフレーズ「強さひきだす乳酸菌」の商標出願

「強さひきだす乳酸菌」というフレーズが、「R-1」のヨーグルト製品に使用されています。

そこで、「強さひきだす乳酸菌」の文字商標を、2012年2月に商標出願して、商標登録を取得しています。

(商登第5515838号)

さらに、「R-1」と「強さひきだす乳酸菌」の文字を含んだ以下のロゴ商標も、商標登録を取得しています。

(商登第5823040号)

使用実績を積んでからの文字商標「R-1」の再度の商標出願

上記の通り、「R-1」の文字を含む商標登録を取得できましたが、商標権の権利範囲としては、文字商標の「R-1」が最も広いです。

明治社としては、主力製品に育ったヨーグルト「R-1」を商標登録でなるべく広く保護したいと考えました。

本来的には識別力を有さない商標でも、長年、使用することで、著名になった商標は、特例で、商標登録を認められます。

そこで、明治社は、再度、文字商標「R-1」の商標出願にチャレンジして、特例での商標登録を目指しました。

(商登第6593375号)

審判まで争った結果、商標「R-1」は、高い著名性を獲得したと認められて、無事、商標登録になりました。

なお、井村屋社のアイスクリーム「あずきバー」も、似たような商標戦略を取っています。

「あずきバー」の商標戦略については、以下の記事で紹介しているので、ご参照ください。

文字商標「R-1」が、全国的に著名なので、使用による識別力(特別顕著性)の獲得が認められて、例外的に商標登録が認められました!

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