・レゴ社のおもちゃの立体商標が、識別力・特別顕著性を獲得していないとして、商標登録が認められませんでした
・文字や図形を含まない立体商標の場合、識別力を有さないと判断される危険性があります
・レゴ人形のように、様々なバリエーションの商品を発売していた場合、出願商標と使用商標が必ずしも一致しないことがあります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和4年(行ケ)第10050号の判決、レゴの立体商標の判例を紹介します。
あなたは、レゴブロックで遊んだことはありますか?
レゴブロックは、プラスチック製の組み立てブロック玩具です。
レゴ社は、デンマークの玩具会社で、1962年から商品を日本で販売しています。
日本でも、人気があり、愛知県には、レゴをモチーフにしたテーマパーク「レゴランド」があります。
レゴ社は、日本で、以下の立体商標を出願しました。
なお、指定商品は、「組立おもちゃ」などです。
しかし、特許庁の審査で、本願商標は、識別力を有さない、簡単に言えば、商標としての特徴がないとして拒絶されました。
つまり、本願商標は、普通に用いられる方法で、人型のおもちゃの立体的形状を表したに過ぎないと判断しました。
また、長年の使用によって、本願商標が識別力を獲得した旨、主張しましたが、それも認められませんでした。
レゴ社は、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆らずに、拒絶査定を維持する旨、審決が下されました。
この審決に対しても不服があり、訴訟を提起したのが、本件の裁判になります。
レゴ社のおもちゃの立体形状の商標登録が認められるか、争われました
裁判所の判断
レゴの立体商標は、識別力(商標としての特徴)があると思いますか?
また、本来的に識別力を有さない場合、商標登録が認められる程、日本国内で、著名だと思いますか?
結論から言うと、本願商標は識別力を有さないと裁判所は判断しました。
また、商標登録が認められる程、著名ではないとして、裁判所は、原告の請求を棄却しました。
本願商標が識別力(商標としての特徴)を有さない
商標権は、一私人が独占的に商標を使用できる強力な権利です。
特徴のない形状は、誰もが自由に使用したいので、公益上、商標登録を認めるべきではありません。
裁判において、本願商標の形状は、機能又は美観上の理由によって、予測し得る範囲内と判断しています。
よって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示したに過ぎないとのことです。
つまり、本願商標は識別力(商標としての特徴)を有さないとのことです。
機能又は美観に資することを目的としているか否かが、判断ポイントです!
商標登録を認められる程に著名ではない
識別力のない商標でも、使用した結果、著名になれば、特例として、商標登録が認められます。
現在まで、様々なバリエーションの商品が販売されていて、数千種類に及びます。
本願商標が、レゴ人形の基本の形状です。
しかし、眼鏡や髭を描いたものなど、本願商標と表情が異なるものも多数あります。
また、頭部、胴体、脚部、装飾品などをバラバラに販売することもあります。
このような実情を踏まえると、販売している製品と本願商標が必ずしも一致していません。
よって、原告の使用実績では、本願商標が、商標登録を認められる程、著名ではないと判断しました。
なお、原告はアンケート結果を証拠資料として提出しています。
しかし、裁判所は、調査対象者が適切ではないとして、原告の主張を採用しませんでした。
出願商標と使用商標が同一とは認められないので、残念ながら、裁判所の判断は妥当です
判例から学べること
立体商標制度を利用すれば、立体的形状も商標登録で保護できます。
しかし、図形や文字を含まない立体商標の場合、出願商標が識別力を有さないと判断される可能性があります。
本件のような事例を参考にしながら、識別力の観点での登録性があるか、検討しましょう。
また、使用した結果、著名になれば、商標法3条2項が適用されて、特別に商標登録が認められます。
しかし、その際、出願商標と使用商標の同一性が、厳しくチェックされます。
本件のように、様々なバリエーションで使用していると、どの商標を出願するか、悩ましいです。
出願する前に、どのような態様で商標を使用しているか、きちんと把握しましょう。
使用状況を考慮して、どのような商標を出願するか、決定すべきです。
図形や文字を含まない立体商標の場合、識別力の観点での登録性を検討しましょう。3条2項の適用を目指す場合、出願商標と使用商標が同一か、注意しましょう!