実務上、ロゴや図形を商標出願することが多いです。
そのような場合、類似する図形の商標がないか、事前に、商標調査することがあります。
この記事を読めば、図形の商標登録について、検索方法が分かります。
また、図形商標の調査が必要なケースや注意点も、教えます。
商標調査のチェックポイント(類似する他人の商標登録があると、登録できない)
商標出願したら、自動的に商標登録になるわけではありません。
商標登録を認めるか、特許庁で審査します。
類似する他人の商標登録が存在した場合には、商標登録できません。
文字と図形の組み合わせのロゴ商標でも、図形の商標登録が問題になるかも!
文字と図形の組み合わせのロゴ商標(ロゴマーク)を商標出願することが、よくあります。
例えば、以下のような商標です。
- (商登第2098259号)
- (商登第4477936号)
- (商登第4997128号)
- (国際登録1759560)
このような商標の場合、文字部分だけ、商標調査しても、不十分です。
図形部分に類似する先行商標が存在した場合、商標登録の障害となる危険性があります。
図形の場合は、文字商標の検索方法とは違う!
文字商標の場合は、商標から生じる読み(称呼)をもとに、先行商標をチェックします。
詳しくは、以下の記事で、紹介しています。
一方、図形の場合には、文字ではないので、商標から称呼(読み)が生じることはありません。
そのため、外観(見た目)が重要になります。
よって、文字と図形では、商標登録の検索方法が異なります。
図形の商標登録の具体的な検索方法
先行商標を検索する際、一般的に、公開データベース「J-PlatPat」を利用します。
具体的には、以下のステップで、商標登録を検索します。
具体的には、使用する予定の商品やサービスの類似群コードを調べます
キーワード検索や分類表を利用して、調べます
検索した結果をもとに、商標が類似するか、検討しよう
まずは、使用する予定の商品やサービスの類似群コードを調べます。
商品・サービスを絞らずに、検索すると、実際には障害とならない先行商標も数多くヒットします
まず、公開データベース「J-PlatPat」の「商品・役務名検索」を使います。
検索キーワードの「商品・役務名」に調べたい商品名・サービス名を入力します。
<具体例を使って説明>
例えば、「絵の具」について、先行商標を調べたいとします。
その場合、「商品・役務名検索」で、以下のように入力して、検索します。
そうすると、以下のような検索結果が表示されます。
これにより、「絵の具」の類似群コードが「25B01」だと分かります。
次に、調査対象の商標の図形等分類を調べます。
公開データベース「J-PlatPat」の「図形等分類表」を使いましょう。
キーワード検索や分類表を利用して、図形等分類を調べます。
<具体例を使って説明>
例えば、虎の図形を調べたいとします。
図形等分類表を調べると、以下のように、記載されています。
これにより、虎の図形の図形等分類が「3.1.4.01」だと分かります。
図形によっては、複数の図形等分類に該当する可能性があるので、注意です!
J-PlatPatの「商標検索」で、類似群コード・図形等分類を用いて、先行商標を検索します。
検索結果の中から、類似する先行商標がないか、チェックしましょう。
<具体例を使って説明>
「商標検索」で、対象の図形等分類を入力します。
次に、「類似群コード」の欄に対象の類似群コードを入力します。
検索すると、「文房具」の分野において、虎をモチーフとした図形の先行商標が表示されます。
例えば、抽象的な図形で、太陽なのか、花なのか、判断できないことがあります。そのような場合、2つの図形等分類をチェックしましょう!
念のため、インターネットでも対象の図形を検索しよう!
出願・登録されていない商標が、特許庁の審査で問題となる可能性は、ほとんどありません。
それでも、以下の理由から、念のため、インターネットでもチェックしています。
- 未登録の著名商標が見つかるかも
- SNSなどでの炎上リスクを判断する
可能性は低いですが、商標登録されていなくても、著名であれば、特許庁の審査で障害となります。
例えば、商標法4条1項15号では、以下の出願商標は、商標登録できない旨、規定しています。
他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標
商標登録されていなくても、似ている商標が存在すると、SNSなどで炎上する危険性があります。
その結果、商標の変更に追い込まれる可能性もあります。
そのため、炎上リスクがないか、事前に検討するのは、重要です。
<SNSなどで話題になった事例>
2023年、人気アイドルグループの「Number_i」は、以下のロゴマークの使用を公表しました。
そうすると、ロックバンド「The BONEZ」のロゴに酷似していると話題になりました。
ちなみに、両者の所属事務所が話し合いを重ねて、最終的には、和解しました。
J-PlatPat以外での図形の商標登録の検索方法
弁理士法人Toreruが提供しているデータベースを利用しても、先行商標を検索できます。
会員登録せずに、誰でも、無料に利用でき、とても手軽です。
ただし、民間のデータベースなので、検索結果の精度については、保証できません。
オンライン商標登録サービスのCotoboxでも、画像の商標検索サービスを無料で提供しています。
ただし、利用者は、オンライン商標登録サービス「Cotobox」への申し込みを前提としているようです。
図形の商標登録の検索で迷ったら、商標専門の弁理士に相談!
検索できたとしても、商標が類似するか、判断するのは難しいかもしれません。
正確に判断するには、経験と知識が必要です。
もし、分からなかったり、判断に迷うことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)に連絡いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・公開データベース「J-PlatPat」を利用すれば、文字以外の商標(図形)も、検索できます。その場合、対象の図形等分類などを検討しましょう
・民間データベースを利用して、調べることもできます。ただし、検索結果の精度については、保証できません
・SNSなどでの炎上リスクもあるので、インターネットで、念のため、商標登録されていない図形も、確認しましょう