文字を二段に併記して、商標登録を取得するメリット・デメリットを解説

商標の実務上、カタカナとアルファベットを二段併記にして、商標出願することが多々あります。

このように、二段併記で商標登録を取得することのメリットとデメリットを、分かりますか?

この記事は、以下のような人に向けて、執筆しています。

筆者は、10年以上、商標専門の弁理士として、働いています。

以下のような人に読んでほしい!

出願する商標をどうしようか、迷っている人

商標登録に掛かる費用を、なるべく抑えたい人

二段併記の商標登録を取得した人

これまで、数多く、二段併記の商標を出願してきました。

この記事を読めば、文字を二段に併記した商標を出願するメリットが分かります。

また、二段併記の商標登録を取得する注意点も、教えます。

文字を二段に併記した商標とは

商標実務の中で、出願商標の態様をどのようにするか、迷うことが多いです。

依頼者と相談しながら、出願する商標を決定します。

場合によっては、カタカナとアルファベットの二段併記で商標出願することがあります

実際、そのような出願商標や登録商標も、多数、存在します。

虎さん
虎さん

商標の実務上、二段併記で商標出願することは、よくあります

具体的には、例えば、以下のような商標です。

商登第4953348号
商登第2222555号
商登第5331595号

しかし、メリットもデメリットもあるので、以下、紹介していきます。

二段併記の文字で商標登録するメリット

二段併記で商標登録する主なメリットは、以下の2つです。

  • 商標登録のためのコストを抑えられる
  • 想定する称呼(読み)を確実にカバー
虎さん
虎さん

二段併記にすれば、想定する称呼(読み)をカバーしながら、費用も抑えられます!

商標登録のためのコストを抑えられる

最大のメリットは、コストが抑えられることです。

例えば、アルファベットと片仮名、両方とも商標登録でカバーしたいとします。

その場合、アルファベットと片仮名をそれぞれ商標出願すると、2件分の費用が掛かります。

一方、二段併記で商標出願すると、1件分の費用で済みます

虎さん
虎さん

アルファベットと片仮名をそれぞれ商標出願するケースに比べて、商標登録のコストを半額に抑えられます!

想定する称呼(読み)を確実にカバーできる

英語以外の言語の商標だと、一般人が、なかなか読めないこともあります。

一般人が、なかなか読めない商標の例

例えば、商標「Le Jour」

 ↓

フランス語で、「その日」を意味し、フランス語での読み方は「ル・ジュール

 ↓

フランス語を勉強していないと、なかなか読めませんよね

このようなケースでは、きちんと称呼(読み)をカバーするために、二段併記での商標登録が有効です

また、複数の読み方がある商標も、多数、存在します

複数の読み方がある商標の例

例えば、商標「Eral」を、どう読みます?

 ↓

「エラル」と読めますし、「イーラル」とも読めます

 ↓

ちなみに「Eral」というヘアケアのブランドがありますが、読みは「イーラル」です

(参考URL: https://www.eral.co.jp/

アルファベットだけで出願すると、想定している称呼(読み)がカバーできない危険性があります。

このような場合も、二段併記での商標登録が、有効です。

二段併記の文字で商標登録するデメリット(不使用取消審判のリスク)

実務上、実際に使用する態様で、商標出願するのが基本です。

しかし、二段併記の態様で商標を使用することは、ほとんどありません。

つまり、二段併記で商標登録すると、登録商標と使用商標が相違します

不使用取消審判において、問題となる危険性があります。

虎さん
虎さん

不使用取消審判は、3年以上、登録商標を使用していない登録を取り消す制度です!

なお、登録商標と、若干、異なっていても、登録商標の使用と認められます

具体的には、登録商標と、社会通念上、同一の商標であれば、商標登録の取り消しを免れます。

社会通念上、同一の商標については、以下の記事をご参照ください。

例えば、二段併記にした上段と下段の観念(意味合い)が同一であれば、問題ありません。

その場合、一方の使用で、社会通念上、同一の商標に該当します。

しかし、以下のようなケースは、要注意です。

社会通念上、同一の商標に該当しないケース

二段併記にした上段と下段の観念が同一とならない場合、要注意

 ↓

上段・下段のどちらかの使用だけでは、不使用取消審判で、商標登録が取り消されるリスクがある

不使用取消審判によって、商標登録を取り消されないよう、注意すべきです。

二段併記の一方だけの使用では、登録商標を使用していないと判断される危険性は、否定できません。

二段併記で商標登録を取得したら、なるべく、上段と下段に記載した文字、どちらも使用しましょう

二段併記で商標登録を取得したら、不使用取消審判で取り消されないように、登録商標の使用の態様には気を配りましょう!

併記した文字で商標登録して、失敗した事例

併記した文字で商標登録して、失敗した事例は、「緑健青汁」のケースです。

商標権者は、文字を四段にした、以下の態様で、商標登録を取得しました。

商登第5151243号

しかし、この商標登録に対して、不使用取消審判が請求されました。

使用していた商標は、漢字の「緑健青汁」だけで、「りょくけん青汁」や「RYOKUKEN AOJIRU」では、使用していませんでした。

よって、登録商標を使用していないとして、商標登録を取り消す旨、判断が下されました。

この判断に不服があった商標権者は、訴訟を提起しましたが、裁判所でも、判断が覆らず、結局、商標登録が取り消されました

緑健青汁のケースを要約すると

4段併記の態様で、商標登録を取得

 ↓

しかし、実際に使用していたのは、漢字の「緑健青汁」だけ

 ↓

不使用取消審判を請求されて、登録商標を使用していないと判断

 ↓

裁判所でも争ったが、結局、商標登録が取り消された

もし、漢字の「緑健青汁」で商標登録を取得していたら、どうだったでしょうか?

使用商標と登録商標が一致したので、商標登録が取り消されなかったはずです。

文字を併記して、商標登録をしたことで、失敗した事例です。

二段併記の文字の商標登録で分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談!

二段併記で商標登録した方がいいか、迷うことがあるかと思います。

そのような場合、一人で悩まずに、商標専門の弁理士に相談してください。

なお、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。

業界では珍しい「商標専門」の弁理士

まとめ

・カタカナとアルファベットのように、文字を二段併記にして商標登録することが多々あります

二段併記にすることで、コスト面などでメリットがあります

デメリットは、不使用取消審判によって取り消されるリスクです。商標の使用方法に注意しましょう

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