・指定商品・役務は、商標権の権利範囲になるので、十分に検討しながら、記載しましょう
・類似商品・役務審査基準や特許庁データベースをもとに、指定商品・役務を決めます。また、過去の商標登録例も参考になります
・今までにない商品・サービスの場合には、審査官を相談しながら、適切な指定商品・役務の表現で商標登録を取得しましょう
指定商品・役務とは
あなたが商標出願したいと思ったら、商標出願の願書に、指定商品・役務を記載します。
つまり、どのような商品・役務(サービス)に、商標権を取得したいものを指定する必要があります。
指定商品・役務は、商標権の権利範囲です。
指定商品・役務を適切に記載しないと、きちんと商標を保護することができません。
十分に検討しながら、指定商品・役務を記載しましょう。
指定商品・役務は、商標権の保護範囲を決めます。適切に記載しないと、対象の商品・サービスを保護できない危険性があります
指定商品・役務の決め方
願書には、指定商品・役務を自由に記載できます。
しかし、審査で指定商品・役務が不明確と判断されると、拒絶理由が通知されます。
できれば、拒絶理由が通知されずに、すんなりと審査を通過できた方がいいですよね。
指定商品・役務の代表的な決め方は、以下の3つです。
- 類似商品・役務審査基準を利用する
- 公開データベース「J-PlatPat」を利用する
- 過去の商標登録を参考にする
まず、類似商品・役務審査基準の利用が考えられます。
類似商品・役務審査基準は、商標弁理士の基本書です。
区分ごとに、代表的な商品・役務が記載されています。
類似商品・役務審査基準の記載されている表現であれば、審査で認められます。
公開データベース「J-PlatPat」から、誰でも無料で閲覧できます。
なお、書籍でも販売されています。
類似商品・役務審査基準の利用例①
例えば、アパレルブランドで、服について商標出願したいとします。
類似商品・役務審査基準をみると、以下のように、25類に記載されています。
よって、「被服」や「洋服」を指定商品とすることが考えられます。
類似商品・役務審査基準の利用例②
例えば、寿司屋の名称を商標出願したいとします。
類似商品・役務審査基準をみると、以下のように、43類に記載されています。
よって、「飲食物の提供」や「すしの提供」を指定役務とすることが考えられます。
類似商品・役務審査基準をざっと見れば、どのような表現であれば認められるか、感覚がつかめます
公開データベース「J-PlatPat」で検索しても、審査で認められる商品・役務の表示が分かります。
まず、データベース「J-PlatPat」にアクセスします。
「商標」のタブの「商品・役務名検索」をクリックします。
使い方は、キーワードを入力して、検索ボタンを押します。
そうすると、キーワードを含む商品・役務が表示されます。
データベース「J-PlatPat」の利用例①
例えば、スマートフォン用のカバーについて、商標登録を取得したいとします。
「スマートフォン用カバー」と検索すると、以下のように表示されます。
「スマートフォン用カバー」の表示は、特許庁で認められることが分かります。
よって、「スマートフォン用カバー」を指定して商標出願しましょう。
データベース「J-PlatPat」の利用例②
学習塾を運営していて、塾の名称について、商標登録をしたいとします。
その場合、商品・役務名検索で「塾」と検索して、適切な表現がないか、探します。
「学習塾における教授」「学習塾における教育」の表示が見つかります。
よって、「学習塾における教授」や「学習塾における教育」の指定が考えられます。
実務上、特許庁データベースを利用して、商品・役務を決めることが多いです!
過去の商標出願において、認められた指定商品・役務の表現を使用するのも、お勧めです。
過去に認められた表現であれば、その後も、認められる可能性が高いです。
他者の登録例も、特許庁データベースを使用すれば、簡単に調べられます。
過去の商標登録の利用例
例えば、ミドリムシを使用した化粧品を開発して、その名称を商標出願したいとします。
実は、株式会社ユーグレナは、同じような化粧品をすでに販売しています。
そこで、ユーグレナ社の商標登録の指定商品をチェックします。
商登第5424614号の商標登録において、以下のような表現が認められています。
ユーグレナ(ミドリムシ)由来の成分を配合してなる化粧品
よって、このような商品を指定して、商標出願することが考えられます。
また、「〇〇由来の成分を配合してなる化粧品」であれば、認められる可能性が高いことが分かります。
「ユーグレナ(ミドリムシ)」を別の表現に代えて、指定することも考えられます。
類似の商品・サービスを提供している企業があれば、その企業の商標登録の例も参考になります
斬新な商品・サービスの場合には
今まで、世の中になかった斬新な商品・サービスを商標出願することがあります。
その場合、特許庁データベースや登録例で、適切な指定商品・役務の表現が見当たらないかもしれません。
指定商品・役務の記載は、商標権の権利範囲になり、重要です。
無理に、特許庁データベースや登録例の記載の表示にこだわる必要はありません。
拒絶理由が通知されることを想定しながら、カバーしたい商品・役務を自由に記載した方がいいでしょう。
審査過程で、拒絶理由が通知されるかもしれませんが、指定商品・役務を補正できます。
審査官と相談しながら、適切な指定商品・役務での商標登録の取得を目指しましょう。