同一・類似の先行商標が見つかった!権利者との交渉による解決手段を紹介

まとめ

・社名やハウスマークは、簡単に変更できません。同一・類似の先行商標が見つかった場合、権利者と交渉することが考えられます

・商標権を譲り受けたり、放棄してもらえれば、商標登録を取得できます。しかし、そのような要求は断れることが多いです

・ライセンス(使用許諾)を受けたり、権利不行使の契約を結べば、ある程度、安全に商標を使用できます。ただし、その場合も、使用料や対価の支払いが必要です

同一・類似の先行商標が見つかった!

商標の世界は、先願主義(早い者勝ち)です。

そのため、なるべく早く商標出願すべきです。

しかし、商標のことを後回しにして、事業を進めている企業はいくつもあります。

事業が軌道に乗ってから、弁理士に商標出願に相談するケースが多いです。

その際に、同一もしくは類似の先行商標が見つかることがあります。

さらに、インターネットで調べると、対象の登録商標が使用されています。

つまり、不使用取消審判による登録の取り消しが困難です。

実際に、筆者も、そのような場面に直面することが何度もあります。

社名やハウスマークなど、簡単には変更できないケースは、大変です。

その場合、先行商標権者と交渉することが考えられます。

それでは、先行商標権者に対して、どのような要求・お願いが考えられるでしょうか?

先行商標が見つかって、どうしようもない場合、先行商標権者との交渉を検討します!

権利者との交渉による解決手段

先行商標権者との交渉によって、解決する手段は、いくつかあります。

以下、代表的な解決手段を、4つ紹介していきます。

商標権を譲り受ける

まず、先行商標権者から、商標権を譲り受けることが考えられます。

商標権を譲り受ければ、自分のものになります。

安心して、独占的に商標を使用できます。

第三者が類似商標を使用した場合、自己の商標権をもとに、権利行使できます。

先行商標権者との交渉がまとまったら、特許庁に移転登録申請書に提出しましょう。

移転登録申請書の記載方法は、以下の記事で紹介しています。

ただし、商標権を譲り受けるために、金銭的な対価を支払うことがほとんどです。

それも、高額になるケースも多いです。

また、先行商標権者が対象の商標を使用している場合、断られることが多いです

商標権を放棄してもらう

先行商標権者に商標権を放棄してもらうことも考えられます。

先行の商標権がなくなれば、商標の使用・登録の障害とはなりません。

商標出願して、拒絶理由が通知されていれば、放棄することで、拒絶理由を解消できます。

交渉がまとまったら、商標権の抹消登録申請書を特許庁に提出してもらいましょう。

抹消登録申請書の記載方法は、以下の記事で紹介しています。

ただし、商標権を譲り受ける場合と同様、ハードルが高いです。

高額な対価が要求される可能性が高いです。

また、対象の商標を使用していたら、要求が受け入れらないことが多いです。

対象商標のライセンス(使用許諾)を受ける

次の手段として、ライセンス(使用許諾)を受けることが考えられます。

ライセンス(使用許諾)を受けることで、安心して、対象の商標を使用できます。

また、先行商標権者も、商標権を保有したままなので、事業を継続できます。

比較的、受け入れられやすい要求です。

ただ、他者に自分の登録商標を使用させたくない人もいます。

そのような場合、ライセンス要求も断られます。

また、原則、先行商標権者に、ロイヤリティ、つまり、使用料を支払う必要があります

使用料をいくらにするか、当事者間で決めます。

一般的な相場では、売り上げの数%です。

また、模倣品を見つけたとしても、自分では権利行使できません。

商標権を保有していないからです。

なお、通常使用権は、契約を結ぶことで、効力が生じます。

しかし、商標権が移転されてしまうと、自己の通常使用権を主張できません。

特許庁に申請して、使用権を設定登録すれば、第三者に対抗できます。

つまり、商標権が移転されても、通常使用権を主張できます。

ライセンスを受けるのが、最も一般的な交渉の「落としどころ」です

権利不行使の契約を結ぶ

先行商標権者から権利を行使しない旨、約束してもらうことが考えられます。

なお、この場合も、通常、ある程度の対価を支払う必要があります。

紹介した4つの中で、最も受け入れてもらいやすい要求です。

これにより、先行商標権者との関係で、権利侵害のリスクがなくなります

比較的、安全に商標を使用できます。

ただし、商標権を保有していないので、自分では権利行使できません。

また、万が一、商標権を他人に譲渡した場合、危険です。

権利不行使の契約の対象外となる可能性があるので、注意が必要です。

商標を使用していくのであれば、最低限、権利を行使しない旨、先行商標権者の確約を受けたいです

4つの解決手段の比較

4つの代表的な解決手段を紹介してきました。

それぞれの手段には、メリット・デメリットがあります。

以下のリストにまとめました。

 メリットデメリット
①商標権を譲ってもらう・安全に商標を使用できる
・第三者に対して、権利行使が可能
・断れる可能性が高い
・対価が高額になりやすい
②商標権を放棄してもらう・商標出願すれば、登録できる可能性が高い
・商標登録を取得すれば、独占的に商標を使用できる
・断れる可能性が高い
・対価が高額になりやすい
③ライセンスを受ける・商標を使用できる
・比較的、要求を受け入れてくれる
・使用権を設定登録すれば、第三者に対抗できる
・使用料(ロイヤリティ)を支払う
・模倣品を見つけても、自分では権利行使できない
④権利不行使の契約を結ぶ・4つの中で、最も受け入れてくれやすい
・先行商標との関係で、権利侵害のリスクをなくせる
・模倣品を見つけても、自分では権利行使できない
・商標権が移転されると、契約の対象外となる危険性

掛けられるコストや先行商標の使用状況によって、対応方法が異なります。

権利者と交渉しながら、どうにか妥協点(落としどころ)を見つけることが重要です。

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