・商号とは、法律で定められた会社の名称になります
・普通に用いられる方法での商号の使用に対しては、商標権の効力は及びませんが、商号(会社名)の使用態様に制限があり、第三者に商標登録を取得される危険性があります
・商標登録と商号の登記を分けて考えず、まとめて考えることを推奨します
商号とは、法律で定められた会社の名称
あなたは、商号とは何か、分かりますか?
商号とは、「株式会社〇〇〇」のような、法律で定められた会社の名称になります。
個人でいえば、姓名に当たるもので、法務局に登記した商号が正式な名称です。
法人の場合には、設立登記の際に一緒に商号を登記します。
本店の所在地が異なれば、同じ商号でも会社を登記することができます。
商標の弁理士として働いていると、商号と商標の関係について、よく質問を受けますので、説明していきます。
商号と商標の関係(全く別の制度)
商号と商標は、全く別の制度になります。
例えば、同一もしくは類似する先行商標があったとしても、商号を登記することがあります。
商号を登記するために、商標出願や商標登録は必要ではありません。
また、「ABC株式会社」という会社が存在して、第三者が「ABC」を商標出願したとします。
その場合、「ABC株式会社」が有名などの特殊な事情がなければ、「ABC株式会社」の商号によって、「ABC」の商標出願が拒絶されることはありません。
商号を登記するためには商標出願や登録は必要なく、似たような先行商標があっても、商号を登記できます
商号を商標登録しないリスク
自己の名称を普通に用いられる方法で表示するだけであれば、商標権侵害には該当しません。
商標法第26条第1項で、以下のように、商標権の効力が及ばない範囲を規定しています。
商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない。
一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標
よって、自社ホームページなどで、ABC株式会社のような商号を一般的なフォントで記載しただけであれば、商標権侵害に該当しない可能性があります。
しかし、「普通に用いられる方法」に該当するか、商標の専門家でも、なかなか判断することが難しく、注意が必要です。
例えば、平成29年(ネ)第1579号の大阪高等裁判所の判例が参考になります。
この裁判では、以下のような使用態様は、「普通に用いられる方法」には該当せず、商標権侵害に当たると判断されました。
また、株式会社を除くと、自己の名称ではなく、名称の略称に該当します。
略称の場合には、著名である場合を除き、商標権の効力が及びます。
つまり、ABC株式会社という商号(会社名)の場合、ABCを使用すると、第三者の商標権侵害に該当する危険性があります。
このように、商標登録を取得していないと、商号(会社名)の使用態様に制限が出てきます。
また、商標の世界は、「早い者勝ち」が原則になります。
会社を設立してから、商標出願しないままでいると、第三者が商標出願して、商標登録を取得してしまうかもしれません。
その後、あなたが商標出願しても、原則、第三者の商標登録によって、拒絶されてしまいます。
商標登録を取得していないと、商号の使用方法や態様に制限を受けたり、第三者に商標登録を取得される危険性があります!
商号を選定する際のアドバイス(商標登録も視野に入れる)
商標と商号は別の制度ですので、同一もしくは類似する先行商標があっても、商号を登記できます。
しかし、商標権侵害を回避するためには、商号の使用方法・態様が制限されます。
商号(会社名)は、様々な場面で使用されるので、制限なく使用できるか、望ましいです。
商号を選定する際には、商標登録の可能性も視野に入れることをお勧めします。
つまり、商標登録と商号の登記を分けて考えず、まとめて考えましょう。
商標登録のことを考えながら、商号(会社名)を決めるのが望ましいです!