・商標「熊さん株式会社」のうち、「熊さん」部分が主要部分(要部)と判断しました
・結論としては、商標「くまさん」と商標「熊さん株式会社」が類似すると、審判官は判断しました
・商号商標の類否判断の参考になる事例になります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、審判番号が不服2021-16759の商標「くまさん」の審決例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
出願人の株式会社MYYKは、標準文字で、以下の商標を出願しました。
しかし、特許庁の審査において、以下の先行商標「熊さん株式会社」と抵触するとして、拒絶されました。
この判断に不服のある出願人が、拒絶査定不服審判を請求したのが本件になります。
特許庁の判断
あなたは、出願商標「くまさん」と引用商標「熊さん株式会社」が類似していると思いますか?
結論から言えば、両商標が類似していると審判官は判断しました。
まず、引用商標には、「株式会社」の文字が含まれていて、「株式会社」は、法人の組織形態を表す用語として広く一般に知られています。
よって、引用商標は、商号商標の一種として認識されます。
商号商標は、商標の構成全体をもって識別標識として機能を発揮します。
さらに、審判官によると、商取引の実情においては、一般的に「株式会社」等の法人格を表す部分を省略することも少なくありません。
そうすると、引用商標中の「熊さん」部分は、独立して自他商品の出所識別標識としての機能を果たす部分、つまり引用商標の主要部分(要部)とのことです。
出願商標「くまさん」と引用商標の主要部分「熊さん」を比較すると、同一の称呼(読み)の「クマサン」が生じます。
また、生じる観念(意味合い)も、どちらも「動物の熊に対する親愛の意を表す愛称」になるとのことです。
よって、出願商標と引用商標の主要部分は、称呼及び観念を共通にすることから、出願商標と引用商標は互いに相紛れる類似の商標と審判官は判断しました。
審決例から学べること
本件の審決例は、商号商標の類否判断の参考になります。
「株式会社」や「Co., Ltd.」の文字を含む商号商標を出願することは、よくあります。
商号商標の場合、「株式会社」や「Co., Ltd.」の文字を除いた部分から、称呼(読み)や観念(意味合い)が生じる可能性があります。
事前に先行商標の調査を行う際などには、その点に注意しましょう。