・商標「シャンパンタワー」が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当すると、裁判所が判断しました
・この判断は、本願商標「シャンパンタワー」に「シャンパン」の文字が含まれていることに起因します
・商標出願すると、ごく稀に予想していなかったトラブルに直面することがあります
商標「シャンパンタワー」事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の平成24年(行ケ)第10267号の判決、商標「シャンパンタワー」の判例を紹介します。
詳細は、こちら。
原告は、43類の役務「飲食物の提供」などを指定する商標登録を保有していました。
これに対して、原告の商標が、以下の商標法4条1項7号の規定に該当することを理由に、被告は無効審判を請求しました。
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標
これは、本願商標「シャンパンタワー」に「シャンパン」の文字が含まれていることに起因しています。
フランスでは、優れた産地のぶどう酒を保護・管理することを目的に「原産地統制呼称法」という法律が制定されています。
原産地統制名称は、法律に基づいて管理して、名称の使用に対する厳しい規制により、消費者に対して品質を保証しています。
「シャンパン」は、原産地統制名称に該当し、シャンパーニュ地方で製造され、かつ、一定の基準に合致した発泡性ぶどう酒のみに、「シャンパン」の名称を使用することを許しています。
このような事情を背景として、無効審判において、原告の「シャンパンタワー」の商標登録は無効にすべき旨、審決が下されました。
この審決に対して不服があり、訴訟を提起したのが、本件の裁判になります。
商標「シャンパンタワー」事件の裁判所の判断
あなたは、本願商標「シャンパンタワー」が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当すると思いますか?
結論から言うと、本願商標「シャンパンタワー」は、商標法4条1項7号に該当するとして、商標登録を無効とする判断を支持して、原告の請求を棄却しました。
シャンパーニュ地方のぶどう生産者らの努力により、「シャンパン」の周知著名性が蓄積・維持され、それに伴って高い名声・信用・評判が形成されています。
「シャンパン」という表示は、シャンパーニュ地方のみならず、フランス及びフランス国民の文化的所産というべきと、裁判所は判断しています。
よって、本願商標を本件指定役務(飲食物の提供など)に使用することは、法律により「CHAMPAGNE」の名声・信用・評判を保護してきたフランス国民の国民感情を害するとのことです。
さらには、我が国とフランスの友好関係にも影響を及ぼす危険性があり、国際信義に反するものといわざるを得ないとのことです。
以上のような理由により、本願商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると裁判所は判断しました。
裁判所は、「シャンパンタワー」の商標登録を無効とするとの判断を、維持しました。
商標「シャンパンタワー」の判例から学べること
実社会においては、「シャンパンタワー」は、一般用語として、広く使用されています。
それにもかかわらず、本願商標「シャンパンタワー」は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると、裁判所に判断されました。
原告は、このようなトラブルに直面するとは思わずに、本願商標の商標登録を取得したものと考えます。
長年、商標の弁理士として業務を行っていると、全く予想していなかった拒絶理由が通知されることがあります。
あなたが商標出願する場合に、ごく稀に、予期していないトラブルが生じる危険性があること、理解しておきましょう。