・商標「リフナビ大阪」が、「リフナビ」のロゴ商標と類似すると、裁判所は判断しました
・引用商標の1文字目は、デザイン化されていますが、「ノ」や「ソ」ではなく「リ」と認識すると判断しました
・文字の一部分をデザイン化する手法は、一般的です。しかし、デザインの仕方によって、想定していない文字に認識される危険性があるので、注意しましょう
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和5年(行ケ)第10010号の判決、商標「リフナビ大阪」の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、以下の文字商標「リフナビ大阪」を商標出願しました。
しかし、特許庁の審査で、本願商標が、以下の引用商標と抵触するとして、本件の商標出願が拒絶されました。
この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しました。
しかし、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。
この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。
引用されたロゴ商標を「リフナビ」と認識するか、争点になりました
裁判所の判断
あなたは、本願商標が、引用商標と類似していると思いますか?
結論から言えば、裁判所は、本願商標が引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却しました。
裁判所の判断について、紹介していきます。
「リフナビ」が本願商標の主要部分か?
本願商標中の「リフナビ」の語は、辞書にも掲載されず、一種の造語と認識されます。
よって、「リフナビ」部分は、サービスの内容表示ではなく、需要者に対して、強い印象を与えます。
一方、本願商標「リフナビ大阪」中の「大阪」は、日本の地名です。
よって、「大阪」部分は、サービスの提供場所などを表示しているに過ぎません。
以上より、本願商標中の「リフナビ」部分が、本願商標の主要部分と判断しました。
主要部分の「リフナビ」が、本願商標から分離・抽出して、認識されます。
「大阪」は地名の表示に過ぎないので、「リフナビ」が本願商標の主要部分との裁判所の判断は妥当です
引用商標を「リフナビ」と認識するか?
引用商標の1文字は、ロゴ化されています。
原告は、1文字目が「ノ」もしくは「ソ」だと主張しました。
一方、被告は、「リ」だと主張しました。
裁判所は、被告の主張を認めて、引用商標を「リフナビ」と判断しました。
以下の図形が、判断のキーポイントになりました。
上記の図形も含めて、1つの文字と認識できます。
また、上記の図形は、真上から真下に向かって、まっすぐに配置されています。
よって、1文字目は、「ソ」・「ノ」ではなく、「リ」と認識できます。
言われてみれば、確かに、引用商標の1文字目を「ソ」や「ノ」と認識できそうです。ただ、普通は、「リ」と認識すると思います!
本願商標は引用商標と類似するか?
本願商標の主要部分は、「リフナビ」です。
また、引用商標は、「リフナビ」をロゴ化したものです。
需要者は、本願商標と引用商標を誤認・混同するおそれがあります。
よって、本願商標は、引用商標と類似すると判断しました。
判例から学べること
文字の一部分をデザイン化する手法は、一般的に行われています。
ただ、本件で争われたように、デザインの仕方によって、想定していない文字に認識される危険性があります。
本件の「リ」と「ソ」の他に、「ン」と「ソ」など、似ているカタカナが存在します。
デザインが出来上がったときに、自分が想定している文字と認識できるか、チェックしましょう。
また、第三者に意見を聞くことも有効です。
迷うようであれば、同僚・友達や家族に、何の文字に見えるか、尋ねてみましょう。
想定していない文字と認識されないよう、ロゴ作成の際には、注意しましょう!