・本願商標「」と引用商標「」が類似すると、裁判所は判断しました
・外観が相違してても、生じる称呼(読み)・観念(意味合い)が一致していれば、商標が類似していると判断される可能性が高いです
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和4年(行ケ)第10041号の判決、「御守」のロゴ商標の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告である株式会社ぐるなびは、菓子の小売業などの役務を指定して、以下の商標を出願しました。
しかし、特許庁の審査において、本願商標が、以下の先行商標と類似するとして、本件の商標出願が拒絶されました。
この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。
この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。
裁判所の判断
あなたは、本願商標「」と引用商標「」が類似していると思いますか?
結論からいえば、本願商標と引用商標が類似しているとして、裁判所は原告の請求を棄却しました。
本願商標は、「御守」の文字が御守袋の上に表示することから、「オマモリ」の称呼(読み)が生じます。
また、本願商標の構成全体から、「御守」という観念(意味合い)が生じます。
一方、引用商標は、「お守」の文字を手書き風の書体で縦書きしているので、こちらも「オマモリ」の称呼が生じます。
また、引用商標からも、「御守(護符)」の観念が生じます。
よって、本願商標と引用商標から生じる称呼・観念が同一になります。
両者の外観が異なるものの、その相違は、称呼及び観念から生じる出所の認定を左右するものではないと裁判所は判断しました。
以上より、本願商標と引用商標が類似すると結論付けました。
なお、原告は、指定商品・役務の類似性も争っています。
具体的には、本願商標の指定役務が菓子の小売業などに対して、引用商標の指定商品は「菓子(甘栗・甘酒・氷砂糖・みつまめ・ゆであずきを除く。)」などになります。
しかし、自社工場を持つ営業主が自社店舗で製品を販売するなど、その製造販売と小売等役務を同一営業主が行うことがよくあるとして、裁判所は、原告の主張を認めませんでした。
判例から学べること
近年の審決例などでは、生じる称呼(読み)が一致していても、商標が非類似と判断された事例は多数あります。
しかし、本件では、生じる称呼(読み)だけではなく、生じる観念(意味合い)まで一致しています。
このようなケースだと、外観が相違していたとしても、商標非類似の判断を覆すのは、かなり難しいかと思います。