商標「OSUGA」の審決例紹介

まとめ

・「大須賀」は、ありふれた氏(苗字)ではないと判断し、商標「OSUGA」は識別力を有するとして、拒絶査定を取り消しました

・商標審査基準には、ありふれた氏(苗字)に該当する基準が明記されていないので、本件のような審決例が、判断の目安になります

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、審判番号が不服2021-15428の商標「OSUGA」の審決例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

審判の請求人は、10類・25類の商品を指定して、商標「OSUGA」(標準文字)を出願しました。

しかし、特許庁の審査では、本願商標「OSUGA」は、ありふれた氏の「大須賀」をローマ字で表したに過ぎず、商標法第3条第1項第4号に該当し、識別力がないとして拒絶されました。

なお、ありふれた苗字の登録可能性については、以下の記事をご参照ください。

この拒絶査定に対して、不服があり、拒絶査定不服審判を請求したのが、本件になります。

特許庁の判断

本件の審判で争点になったのは、「大須賀」の氏(苗字)が、ありふれているか、です。

あなたは、「大須賀」の氏(苗字)が、ありふれていると思いますか?

結論から言えば、氏の一つである「大須賀」は、ありふれたものとは言えないとして、本願商標が識別力を有するとして、拒絶査定を取り消しました

審判官が職権で調査したところ、3つのウェブサイトを参考にしていて、「大須賀」の氏の順位と人数は、以下のように、紹介されているとのことです。

全国に大須賀さんは23,382,857人中2,335人いて1,358番目に多い姓です

(ウェブサイト「姓名分布&姓名ランキング」より)

【全国順位】1,293位【全国人数】およそ13,300人

(ウェブサイト「名字由来net」より)

「大須賀」の氏について、「1367(順位)3043(世帯数)」

(ウェブサイト「全国の苗字(名字)12万種」より)

また、「日本人の名字ランキング」というウェブサイトで、1位~300位の氏が紹介されているが、「大須賀」の氏の掲載はないとのことです。

このようなインターネットの情報から、「大須賀」の氏は、全国的にみても、その人数はさほど多いとはいえず、順位もさほど高くないとのことです。

よって、氏の一つである「大須賀」は、氏としてありふれたものとはいえないと判断しました。

審決例から学べること

商標審査基準をチェックしても、どれくらいの人数や順位で、ありふれた氏(苗字)に該当するか、基準が明記されていません。

「『ありふれた氏又は名称』とは、原則として、同種の氏又は名称が多数存在するものをいう」と記載されているだけです。

本件のような審決例が、判断の目安になってくるかと思います。

「鈴木」や「佐藤」のような氏だと、争う余地はありませんが、全国的に人数の多くない氏(苗字)の商標については、商標出願にチャレンジしてみることが考えられます。

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