商標「EMPIRE STEAK HOUSE(ロゴ)」の判例紹介

まとめ

・本願商標「」が、引用商標「EMPIRE」と類似すると裁判所は判断しました

・本願商標中の「EMPIRE STEAK HOUSE」の文字部分と引用商標「EMPIRE」が類似すると判断しました

・本願商標は牛の図形を含んでいますが、文字と図形が、それぞれ独立した構成部分として分離して認識されると判断しました

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、知的財産高等裁判所の令和4年(行ケ)第10087号の判決、商標「EMPIRE STEAK HOUSE(ロゴ)」の判例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

原告は、アメリカのニューヨークに「EMPIRE STEAK HOUSE」というレストランを開業し、2017年に東京都の六本木に出店しました。

そこで、原告は、「ステーキ料理の提供」などの役務を指定して、以下の商標を出願しました。

(商願第2018-4441号)

しかし、特許庁の審査において、本願商標が、以下の先行商標と類似するとして、本件の商標出願が拒絶されました。

(商登第5848647号)

この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。

この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。

裁判所の判断

あなたは、本願商標「」と引用商標「EMPIRE」が類似していると思いますか?

結論からいえば、本願商標と引用商標が類似しているとして、裁判所は原告の請求を棄却しました。

本願商標中の「EMPIRE STEAK HOUSE」と引用商標「EMPIRE」の類似性

本願商標の「EMPIRE STEAK HOUSE」の文字が、引用商標「EMPIRE」と類似するか、裁判所は検討しています。

「STEAK HOUSE」の語は、「ステーキ専門店」を意味する英語で、飲食物の提供の業態を示すものとして一般に用いられています。

実際、業界において、普通に用いられている例が見受けられるとのことです。

これより、「STEAK HOUSE」の語は役務(サービス)の提供の場所を表示しているに過ぎないとのことです。

残りの「EMPIRE」部分が、要部(主要部)であると裁判所は判断しました。

よって、本願商標の「EMPIRE STEAK HOUSE」の文字が、引用商標「EMPIRE」と類似すると判断しました。

「STEAK HOUSE」の語は役務(サービス)の内容表示に過ぎないので、残りの「EMPIRE」部分が主要部と判断されました

本願商標中の牛の図形

本願商標には、牛の図形が含まれています。

しかし、文字と図形は、相互に重なり合うことなく配置されています。

また、文字が図形に埋没した印象を与えることもなく、文字として明瞭に認識できます。

よって、文字と図形が、それぞれが独立した構成部分として、視覚上、十分に分離して認識され得ると裁判所は判断しました。

本願商標に図形が含まれていても、本願商標の文字部分が引用商標に類似している以上、本願商標は引用商標と類似すると判断しました。

本願商標中の図形と文字が離れて記載されているため、独立とした構成部分として、各々、分離して認識されると判断されました

判例から学べること

個人的には、本件の裁判所の判断は、妥当なものと考えています。

商標の弁理士として働いていると、他の単語・言葉を組み合わせることで、先行商標と区別したいという相談をよく受けます。

しかし、本件の「STEAK HOUSE」の語のように、対象の商品・サービスとの関係で、特徴のない単語を加えても、先行商標と区別できない可能性が高いです

先行商標と類似しないようにするためには、組み合わせる単語・言葉が重要になります。

また、図形を組み合わせれば、先行商標と区別できると考えている依頼者も多いです。

しかし、図形と組み合わせても、本件のように、文字と図形、それぞれ分離して判断されることが多いです。

つまり、図形を組み合わせただけでは、先行商標とは区別できない可能性があるので、注意しましょう

単語・言葉を組み合わせるのは、先行商標と区別するための有効な手段ですが、どのような言葉・単語か、重要です! また、図形を組み合わせただけでは、先行商標とは区別できない可能性があります

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