商標から一部分が分離して認識される場合とは

まとめ

・大小がある、色彩が異なる、書体が異なるといった商標の構成上の相違点がある場合には、商標から一部分が分離・抽出して認識されることがあります

・著しく離れて記載されている、長い称呼(読み)を有する場合、一部分が分離・抽出して認識されることがあります

・その他、識別力を有しない文字を構成中に含む場合や著名商標を構成に含む場合なども、商標の一部分が分離・抽出して認識される可能性があります

商標から一部分を分離して認識されることがある!

ある商標を目にしたときに、その商標から一部分を分離・抽出して、認識することがあります。

一部分が分離・抽出される否かは、商標の類否を判断する際に、考慮され、商標の実務において、重要になります。

それでは、具体的に、どのような場合に、商標から一部分が分離・抽出して認識されるでしょうか?

商標審査基準に、いくつか例示されていますので、紹介していきます。

文字のみからなる商標の場合

商標審査基準によると、文字のみからなる商標について、商標の構成上の相違点がある場合に、商標から一部分が分離・抽出して認識されることがあります

商標の構成上の相違点があるとは、例えば、大小があること、色彩が異なること、書体が異なること、平仮名・片仮名等の文字の種類が異なること等になります。

以下の例をご参考ください。

  • 」(文字の大小)
  • 」(書体の相違)

また、その他、以下のように、著しく離れて記載されている、長い称呼(読み)を有する、観念上のつながりがない場合に、商標から一部分が分離・抽出して認識されることがあります

  • 「鶴亀      万寿」(著しく離れて記載)
  • 「chrysanthemumbluesky」(長い称呼)
  • 「ダイヤフロンティア」(観念上のつながりがない)

商号商標の場合

「ABC株式会社」のように、会社名(商号)を表示する商標を商号商標といいます。

商号商標の場合には、「株式会社」「商会」「CO.」「K.K.」「Ltd.」「組合」「協同組合」等の文字が含まれていることがあります。

商標審査基準によると、これらの文字を除外した称呼、観念も生ずると定められています。

識別力を有しない文字を構成中に含む場合

指定商品・役務との関係で、商品の品質や原材料などを表示する文字、役務の提供の場所や質など表示する文字など、識別力を有しない文字を有する結合商標も多々あります。

商標審査基準には、原則として、それらの文字が付加・結合されていない商標と類似すると定めています

このような判断基準から、以下の商標が、類似すると例示されています。

  • 商標「スーパーライオン」と「ライオン」(指定役務「写真の撮影」)
  • 商標「銀座小判」 と「小判」(指定商品「せんべい」)
  • 商標「グリーンジャイス」 と「ジャイス」(指定商品「被服」)
  • 商標「男山富士」と「富士」(指定商品「清酒」)
  • 商標「黒潮観光ホテル」と「黒潮」(指定役務「宿泊施設の提供」)

需要者の間に広く認識された商標を構成中に含む場合

「GUCCI」「JAL」「東宝」のように、需要者の間に広く認識されていて、誰もが知っているような著名商標があります。

商標審査基準によると、そのような著名商標を結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているものや観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の著名商標と類似すると定めています

具体的には、以下の商標が、類似すると商標審査基準で例示されています。

  • 商標「PAOLOGUCCI」と「GUCCI」(指定商品「かばん類」)
  • 商標「JALFLOWER」と「JAL」(指定役務「航空機による輸送」)
  • 商標「東宝白梅」と「東宝」(指定役務「映画の制作」)

参考となる判例】「つつみのおひなっこや」事件

審査基準をもとに、商標から一部分が分離・抽出して認識されるケースについて、紹介してきました。

その他に、最高裁判所で示された基準も参考になりますので、紹介します。

「つつみのおひなっこや」事件では、以下の基準・規範が示されました。

商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである

この基準をもとに、登録商標「つつみのおひなっこ」から、「つつみ」部分が分離・抽出して、認識されないと判断しました。

詳細については、以下の記事をご参照ください。

【重要】商標専門の弁理士が、「つつみのおひなっこや」の最高裁判例を、分かりやすく紹介!

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