・2022年に商標出願の件数が多かった区分は、35類、41類、9類、42類、3類の順番です
・将来的・防衛的に、広範囲に商品・サービスを指定したい場合、これらの区分を指定する必要があるか、検討しましょう
・なお、コストも掛かるので、出願区分を無駄に増やす必要はありません。まずは、対象の商品や業務をカバーできるように、区分を選定するのが重要です
商標登録する区分の重要性
商標出願の願書には区分を記載する必要があります。
区分とは、商品・役務(サービス)の属するカテゴリーです。
出願すべき区分を間違えると、商標登録を取得できても、意味がありません。
例えば、ラーメン屋の店名を商標出願したいとします。
「ラーメンの提供」というサービスは、43類に属します。
しかし、誤って、43類を指定せずに、商標出願すると、商標登録になっても、その商標登録では、ラーメン屋の業務をカバーできません。
また、出願する区分数に応じて、特許庁の支払う印紙代が掛かります。
必要のない区分まで、指定すると、その分、コストが追加されます。
よって、商標出願の際、どの区分に商標出願するか、重要で、十分に出願区分を検討すべきです。
筆者も、依頼者と相談しながら、出願する区分の選定には、細心の注意を払っています!
2022年に商標出願された区分のベスト5
特許庁は、毎年、特許行政年次報告書を公開しています。
インターネットから、誰でも、簡単に閲覧できます。
その中には、2022年に商標出願された区分の統計データを掲載しています。
特許庁の統計データをもとに、2022年に出願された区分のベスト5を紹介します。
商標出願する区分を選定する際に、参考になるかもしれません。
なお、区分は、1類から45類まで存在して、計45個あります。
【第1位】35類(広告業や小売業)
2022年に、最も商標出願された区分は、35類です。
35類には、広告業や小売業などが属します。
ビジネスコンサルも、35類になります。
他区分のサービスに付随して、35類も指定することが多いです。
また、小売業も、35類に属します。
インターネットで簡単にショッピングサイトを開設できますが、35類の1区分で、様々な商品の小売業をカバーできます。
ネット通販事業も行うケースでは、35類を指定することが多いです。
【第2位】41類(教育業やセミナー業)
2022年に2番目に商標出願された区分は、41類です。
41類には、教育業やセミナー業などが属します。
「オンラインによる映像・画像の提供」も、41類に該当します。
様々なビジネスに付随して、セミナーを開催したり、映像や画像を提供することがあります。
そのため、41類での商標出願が多かったと推測します。
【第3位】9類(スマホ用アプリなど)
2022年に3番目に商標出願された区分は、9類です。
商品の区分としては、9類が、最も商標出願されました。
スマホ用のアプリが、9類に属します。
近年、様々なサービスで、スマホ用のアプリを活用しています。
そのため、9類を商標出願することが増えています。
【第4位】42類(IT関連サービスなど)
4番目に商標出願された区分は、42類です。
「オンラインによるアプリの提供」などのIT関連サービスが属します。
何らかのIT関連のサービスを提供する際には、42類を指定します。
ちなみに、9類と42類、どちらも、アプリ関連になります。
アプリをダウンロードする場合には、商品に該当するので、9類になります。
一方、ダウンロードせずに、提供する場合には、サービスに該当するので、42類になります。
しかし、実際には、9類と42類をセットにして、商標出願することが多いです。
このことが、42類の商標出願が増えた一因と考えます。
【第5位】3類(化粧品や洗剤)
5番目に商標出願された区分は、3類です。
3類には、化粧品や洗剤などが属します。
大手の化粧品会社や日用品メーカーは、商標出願に積極的です。
2022年の商標登録の件数が多い企業トップ3は、以下の通り、大手の化粧品会社・日用品メーカーです。
1位 花王株式会社
2位 株式会社 資生堂
3位 株式会社コーセー
このような大手の化粧品会社などの商標出願により、3類の商標出願が多かったと推測します。
35類、9類や41類は、メインの業務ではなくても、提供する業務と関連する可能性があるため、防衛的に指定することが多いです
商標登録の区分のランキングをチェックするメリットと注意点
将来的・防衛的に、広範囲に商品・サービスを指定したい場合、今回のランキングが参考になります。
例えば、社名など、会社を代表するマークを商標出願する場合、一般的に、広範囲に商品・サービスを指定します。
現在、スマホアプリを使った事業を展開しなくても、念のため、出願する区分に9類を含めたりします。
ランキング上位の9類・35類や41類などを指定する必要があるか、検討してみましょう。
なお、区分数を増えれば、その分、コストが掛かるというデメリットもあります。
また、不使用取消審判という制度があり、3年間、登録商標を使用していないと、商標登録が取り消されるリスクがあります。
つまり、区分を広く指定しても、将来的に、商標登録が取り消されるかもしれません。
まずは、対象の商品や業務をカバーできるように、区分を選定するのが重要です。
ランキング上位の9類・35類や41類は、広く商品・サービスを保護するための「+α」の要素になります。
出願する商標の重要性や予算も考慮しながら、出願する区分を選定しましょう