・特許庁データベースを利用して、出願・登録されている商標を検索できます。データベースには、誰でも無料でアクセスできます
・「商標検索」や「商品・役務名検索」を利用して、対象の商品・サービスの類似の分野に、同一・類似する先行商標がないか、チェックします ・データベースにはタイムラグがあるので、注意しましょう。また、商標が類似するか、判断に迷う場合、商標の専門家に相談しましょう
出願・登録されている商標の検索方法
商標出願したり、使用する前に、事前に先行商標をチェックすることが多いです。
具体的には、同一もしくは類似する先行商標がないか、確認します。
それでは、出願・登録されている商標をどうやって調べるか、分かりますか?
一般的に、公開データベース「J-PlatPat」を利用します。
誰でも無料でアクセスでき、分かりやすく記載されているので、初心者でも簡単に検索できます。
しかし、間違えやすいポイントもあり、正しく調べられていないことが、よくあります。
次に、どのように先行商標を検索するか、説明していきます。
公開データベース「J-PlatPat」を利用すれば、誰でも、簡単に先行商標をチェックできます!
商標登録と商標出願の検索方法の具体例
仮想の事例をもとに、具体的な検索方法を紹介します。
仮に、日本酒について、「虎さん」という名称を使用したいとします。
日本酒の分野において、「虎さん」と同一もしくは類似する先行商標がないか、調べていきます。
まずは、対象の商品・サービスの類似群コードを調べる
類似群コードは、商品・サービスが類似するかの判断の基準です。
類似群コードが一致していれば、商品・サービスが類似すると推定されます。
一方、相違していれば、商品・サービスが類似しないと推定されます。
なお、商品・サービスの類否判断については、以下の記事で、詳しく紹介しています。
【重要】商品・役務(サービス)が類似するか、どうやって判断する?類似群コードの使い方を説明!同一の先行商標があったとしても、類似しない商品・サービスで登録されていれば、原則、問題になりません。
本件の例だと、商品「自動車」を指定する商標「虎さん」があっても、気にする必要はありません。
一方、「日本酒」は「みりん」と類似します。
よって、商品「みりん」を指定する「虎さん」の商標登録は、障害になります。
類似群コードは、特許庁データベースを利用して、調べられます。
まずは、特許庁データベースの「商標」の欄から、「商品・役務名検索」をクリックしましょう。
検索キーワードに、対象の商品名・サービス名を入力します。
本件では、日本酒を商標に使用したいので、「商品・役務名」に「日本酒」と入力します。
入力したら、「検索」ボタンをクリックします。
そうすると、以下のような検索結果が表示されます。
日本酒の類似群コードは、「28A01」だと分かります。
次に、「商標検索」の欄から、先行商標を調べる
特許庁データベースの「商標」の欄から、「商標検索」をクリックします。
検索項目から「称呼(類似検索)」を選びます。
なお、よくある間違いは、「称呼(類似検索)」ではなく、「商標(検索用)」での検索です。
「商標(検索用)」は、全く同一の商標を調べる際に使用します。
しかし、同一商標だけではなく、類似する先行商標も障害になります。
また、商標が類似するかの判断は、商標から生じる称呼(読み)が重視されます。
なお、商標の類否判断については、以下の記事で紹介しています。
【商標の類否判断】重要!商標が似ているか、どう判断する?よって、「商標(検索用)」での検索では不十分で、「称呼(類似検索)」を選択しましょう。
本件では、「称呼(類似検索)」の欄に、カタカナで「トラサン」と入力します。
また、上記で調べた結果、日本酒の類似群コード「28A01」でした。
「類似群コード」の欄に「28A01」と入力します。
「検索」ボタンをクリックすると、以下のような検索結果が出てきます。
注意してほしいのが、検索結果で表示された商標が、全て類似するわけではありません。
実際に、類似する可能性があるか、個別に検討する必要があります。
検索結果のうち、1番上の先行商標「寅さん」は、「虎さん」と称呼(読み)が一致します。
先行商標「寅さん」が障害となりそうです。
類似群コードを入力すると、検索結果を絞ることができ、チェックミスを減らせます
対象の先行商標の現状をチェック
対象商標の登録番号をクリックすると、商標の現状が分かります。
その中には、「存続期間満了日」が記載されています。
念のため、商標登録が存続しているか、確認しましょう。
先行商標「寅さん」の登録番号をクリックすると、以下のように表示されます。
存続期間満了日が、「2027年2月25日」と記載されています。
この記事を執筆しているのが2023年8月ですので、現状、商標登録が存続しています。
調査した商標を使用するか、結論を出す
最後に、先行商標の検索結果をもとに、商標を使用するか、判断します。
本件では、商品「日本酒」を指定する商標「寅さん」が見つかました。
商標「虎さん」と商標「寅さん」を比較すると、生じる称呼の「トラサン」が一致し、両商標が類似する可能性が高いです。
よって、日本酒に商標「虎さん」を使用すると、「寅さん」の商標権を侵害する危険性があります。
残念ながら、日本酒の名称として「虎さん」を使用しない方がいいでしょう。
商標登録と商標出願の検索方法のアドバイス
筆者は、商標専門の弁理士として、10年以上、働いています。
依頼者が自分で行った検索方法が間違っていたことも多々あります。
また、日頃から感じている注意点もあります。
データベースの検索方法について、以下3つ、アドバイスします。
- データベースにはタイムラグがある
- 商品・サービスが類似しているか、要チェック
- 同一の商標だけではなく、類似の商標も確認
商標出願しても、データベースには瞬時に反映されません。
データベースに反映されるまで、2~3週間程度、掛かります。
特許庁のデータベースには、タイムラグがあります。
可能性はかなり低いですが、もしかしたら、1日前に、他人が同一の商標を出願しているかもしれません。
その場合、他人の商標出願が優先されてしまいます。
特許庁データベースには、出願商標が完璧には網羅されていないこと、覚えておきましょう。
事前の商標調査の結果、問題なくても、特許庁の審査で、直近に出願された商標が障害となる可能性はゼロではないです
商品・サービスが類似しているか、チェックしましょう。
なぜなら、商品・サービスが類似しなければ、原則、問題とならないからです。
同一の区分に、類似する商標があると、相談を受けることがあります。
そういったケースで、登録商標の指定商品をチェックすると、対象の商品と類似していないことが多いです。
区分が同じでも、商品・サービスが類似しなければ、大丈夫です。
実際の権利範囲は、区分ではなく、指定商品・役務で決まります!
登録商標と類似する範囲にも、商標権の効力が及びます。
つまり、同一の商標だけではなく、類似商標もチェックする必要があります。
商標が類似するかの判断で、商標から生じる称呼(読み)が重視されます。
称呼(読み)が同一もしくは類似する先行商標がないか、重点的にチェックしましょう。
具体的には、上記で説明した検索方法が有効です。
商標検索の検索項目では、「商標(検索用)」ではなく、「称呼(類似検索)」を選びましょう。
先行商標を検索したが、判断が難しければ、商標専門の弁理士に相談!
検索しても、先行商標が全くヒットしなければ、商標を使用できそうと簡単に判断できます。
しかし、類似するか、判断が難しい先行商標がヒットすることもあります。
商標の類否判断には、専門的な知識と経験が必要です。
上記の例だと、「虎さん」と「寅さん」だと、漢字が違うから、類似しないと、勘違いする人もいるでしょう。
商標が類似しないと思い込んで、使用していると、権利者から、商標権侵害で訴えられる危険性があります。
判断が難しい場合には、商標専門の弁理士に相談しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
弁理士歴12年以上の商標専門の弁理士