「商標権を譲ったら、それで手続きは終わり」…そう思っていませんか?
実は、商標権は譲渡の合意をしただけでは正式に移転されません。
特許庁へ「移転登録申請」を行い、記録を更新することで、ようやく第三者にも有効な権利移転となります。
本記事では、
- 商標移転に必要な移転登録申請書の書き方
- 忘れがちな譲渡証書などの添付書類
- スムーズに手続きを進めるための実務上の注意点
を、商標専門の弁理士がわかりやすく解説します。
「手続きに不安がある」「記載例を見たい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています
・商標権の移転のお手伝いしたことは、何度もあります
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
商標権を譲っても、申請しないと、特許庁の記録は更新されない
事業の売却などに伴って、有償もしくは無償で、商標権を他人に譲ることがよくあります。
しかし、当事者間で商標権を譲る旨の契約を結んだからといって、自動的に特許庁の記録が更新されるわけではありません。
特許庁に申請書を提出することで、移転手続きが特許庁のデータに反映されます。
具体的には、移転登録申請書を作成して、特許庁に提出します。
それでは、移転登録申請書の記載方法について、説明していきます。

商標権の譲渡契約を結んでも、申請書を提出しないと、特許庁の記録には反映されません
移転登録申請書の書き方を紹介!
商標登録の移転を記録するためには、「商標権移転登録申請書」を特許庁に提出します。
特許庁のホームページから、以下のような申請書の様式見本を入手することができます。

申請書に記載する以下の項目について、簡単に説明していきます。
- 商標登録番号
- 登録の目的
- 申請人(登録権利者)、及び、申請人(登録義務者)
- 添付書面の目録
- 印紙代
商標登録番号
移転する対象の商標登録の登録番号を記載します。
いくつかの商標登録をまとめて、移転する場合には、複数の登録番号を記載することができます。
登録の目的
一般的な譲渡の場合には、「本商標権の移転」と記載すれば、問題ありません。
申請人(登録権利者)
登録権利者、すなわち、商標登録を譲り受ける会社・人の情報を記載します。
譲受人の会社名(もしくは氏名)・住所などの情報を書きましょう。
申請人(登録義務者)
登録義務者、すなわち、商標登録を譲り渡す会社・人の情報を記載します。
譲渡人の会社名(もしくは氏名)・住所などを書きましょう。
添付書面の目録
商標権を移転するためには、譲渡証書などが必要になります。
実際に添付している書類名を記載しましょう。
印紙代
特許庁に支払う印紙代は、1件あたり3万円です。
例えば、3件の商標登録を譲渡する場合には、3万円×3件で、9万円になります。
なお、収入印紙ではなく、特許印紙で支払うことに、注意しましょう。

特許庁ホームページから書式を入手して、申請書を作成しましょう!
【注意】譲渡証書などの書類も、併せて提出
移転登録申請書には、以下のような書類も、添付する必要があります。
譲渡証書
実際に、商標権を譲渡したことを証明するために、譲渡証書を添付する必要があります。
特許庁ウェブサイトに掲載されている譲渡証書の見本は、以下の通りです。
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譲渡証書の内容は、シンプルです。
譲受人・譲渡人の情報を明確に記載されていて、対象の商標登録の商標権を譲渡した事実が分かれば、大丈夫です。
譲渡人の印鑑証明書
譲渡人の印鑑証明書を提出する必要があります。
なお、過去に、特許庁に印鑑証明書を提出していれば、再度の印鑑証明書の提出は省略できます。
また、代理人(本人による手続については手続者本人)によって「実印である旨」を宣誓した場合も、印鑑証明書の提出を省略できるようになりました。
詳しくは、こちら(特許庁ホームページ)をご確認ください。
その他の必要書類
追加の書類が必要になるケースがあるので、注意しましょう。
例えば、譲渡人と譲受人の代表者が一緒の場合には、利益相反の該当しうる可能性があります。
その場合には、取締役会承認書などの追加書類の提出が必要になります。
また、相続による移転登録の場合には、必要書類が異なります。
相続のケースだと、戸籍謄本や遺産分割協議書の提出が必要になります。

弁理士でも、特殊なケースだと、特許庁に問い合わせます。
相談すると、親切・丁寧に回答してくれることが多いです!
【重要】商標権を譲渡する前に確認すべき4つのポイント
商標権の移転は、「譲渡」と一言で言っても、事情によって必要な手続や書類が異なります。
「書類が足りない」「そもそも想定していた移転方法と違った」とならないよう、事前に次の点を確認しましょう。
商標権の移転には、例えば、以下の通り、、複数の類型があります。
・売買や事業譲渡による譲渡
・被相続人の死亡による相続
・会社合併などによる一般承継
相続や承継の場合には、譲渡とは必要書類・手続が異なります。

どの類型に該当するか、正確に整理する必要があります!
商標権は、区分単位、指定商品・役務単位で構成されています。
そのため、商標権を譲渡する範囲を、事前に検討すべきです。

「一部譲渡ができない」という勘違いは、危険です!
譲渡人と譲受人の代表者が同一の場合、取締役会承認書などの追加書類が必要になるケースがあります。
会社法上の手続を踏まえた対応が必要になるため、事前確認が欠かせません。
譲渡が完了すると、元の権利者であっても、その商標を自由に使用できなくなります。
例えば、以下の場合、慎重な判断が必要です。
・将来、同じ名称を再利用する可能性
・類似のブランド名を使用する予定
弁理士が「商標権の譲渡」に関与すると安心な4つの理由
弁理士の役割は、単に書類を作成・提出するだけではありません。
弁理士が関与するメリットは、例えば、以下の4つです。
弁理士が関与することで、
・一般的な譲渡なのか
・相続による移転なのか
・会社合併などによる一般承継に当たるのか
を整理し、そのケースに合った正しい手続を選択できます。

類型を誤ると、再手続きが必要になる危険性があります!
商標権の移転では、移したい商標権・移したい範囲・移転先など、意図どおりに登録されることが何より重要です。
弁理士が関与することで、以下の点を確認しながら、進められます。
・意図した内容が、登録手続に正しく反映されているか
・書類の記載によって、想定外の結果にならないか
例えば、以下のようなケースでは、通常とは異なる手続き・書類の提出が必要になることがあります。
・相続による移転
・会社合併などによる一般承継
・譲渡人と譲受人の代表者が同一の場合
弁理士が関与することで、こうしたケースを見落とさず、一度で手続きを完了できます。
商標権の移転は、頻繁に行う手続ではないため、書類不備や手続き違いが、起こりがちです。
事前に整理した上で進めることで、結果的に時間とコストのロスを抑えられる可能性があります。
【実録】「契約したから安心」の落とし穴。数十年放置した外国企業が、二度と移転登録できなくなった理由
商標権を譲り受ける際、最も大切なのは「契約書を交わすこと」だけではありません。
実は、特許庁の移転登録を完了させるまで、その権利は法的にはあなたのものになっていないからです。
私が大手特許事務所時代に担当した、ある外国企業の忘れられない事例をご紹介します。
その企業は、数十年前に日本の商標権を他社から譲り受ける合意をしていました。
ところが、実務上の手続きを「いつでもできるだろう」と放置してしまったのです。
数十年が経ち、いざ日本でブランドを本格展開しようと移転登録の手続きを試みたところ、絶望的な事実が発覚しました。
・譲渡人の失踪: 移転登録には元の所有者の協力が必要ですが、数十年という月日の間に、相手企業と連絡が全く取れなくなっていました。
・手続きの断念: 書類が揃わない限り、特許庁は認めてくれません。結局、法的にも「詰み」の状態となり、移転登録を断念せざるを得ませんでした。
・最悪の解決策: 最終的に、その企業は多額の費用と時間をかけて、「ゼロから商標を出し直す(再出願)」という苦肉の策をとることになりました。もし、再出願までの間に他人に同じ商標登録を取られていたら、そのブランドは日本から消えていたかもしれません。
「移転」は、特許庁に登録されるまで終わっていません。
契約書を交わして満足してはいけません。相手と連絡が取れる「今」この瞬間に、一気に登録まで完了させるべきです。
「昔の譲渡契約があるけれど、名義がそのままになっている」「海外の取引先から権利を譲り受けることになった」という方は、今すぐ私にご相談ください。
【実録】M&Aや会社買収後の「商標権の移転」に潜む落とし穴。その申請、認められません!
「会社を買収したから、商標権の名義も変えるだけ。書類を出せば終わりだろう」
もしそう考えているなら、今すぐ作業を止めてください。
商標権の移転登録は、特許庁による「形式のチェック」が厳しいからです。
実際、私のもとに届いた「手続補正指令書(特許庁からの指摘)」の事例を共有します。
ある会社を買収した依頼者様のために、商標権の移転登録申請書を提出しました。
当然、新しい会社の登記簿も確認し、完璧に書類を揃えたはずでした。
しかし、特許庁の判断は「却下」に近いものでした。

原因は、「商標原簿(特許庁のデータ)」に登録されている住所と、登記簿の住所に相違があったことです。
結果、一度出した移転申請を取り下げ、先に「表示更正申請(住所の書き換え)」を行い、その後に改めて「移転登録」を再提出することになりました。
プロの眼を持ってしても、「住所の変遷」と「原簿の状態」を完璧に一致させる作業には、極めて高い集中力が求められます。
商標原簿も細かくチェックして、隙のない手続きを進める必要があります。
費用をケチって、専門家に頼らず、素人判断で行えば、手続きが数ヶ月遅れるどころか、最悪の場合、権利の空白期間を作ってしまうリスクさえあります。

「商標権の譲渡」のよくある質問(FAQ)
以下は、読者の方が迷いがちな実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。
記事本文と合わせてご活用ください。
いいえ。譲渡契約を締結しても、特許庁の登録原簿上の名義(権利者)は自動的には変わりません。
譲渡後に 移転登録申請(商標権の移転登録)を行い、特許庁で更新を反映させる必要があります。
主な必要書類は以下の通りです(状況によって追加書類が必要になることがあります)
- 移転登録申請書(所定の様式)
- 譲渡証書(譲渡の事実を証す文書)
- 譲渡人の印鑑証明書(あるいは実印宣誓)
はい、可能です。その場合「商標権の分割移転登録申請」という手続きを使います。
ただし、一度分割登録をすると元には戻せない点など、注意が必要です。
移転登録手続きをしていないと、外部から見た権利者情報が古いままになります。
そのため、ブランド活用上の混乱や不使用取消審判による取り消しリスクなどが発生する可能性があります。
できるだけ早く移転登録手続きを行うことを強くおすすめします。
【まとめ】その商標権の譲渡、ビジネスの足かせにさせません!
・当事者間で商標権の譲渡契約を結んだとしても、自動的に特許庁の記録が更新されないので、特許庁に申請書を提出する必要があります
・譲渡証書などを添付した商標権移転登録申請書を提出する必要があり、商標権移転登録申請書には、対象の商標登録の番号などを記載します
・譲渡人と譲受人の代表者が一緒の場合や相続による移転登録の場合は、一般的な譲渡手続きと、必要書類が異なります
事業譲渡やM&Aにおいて、商標権の移転漏れや手続きの不備は、後に致命的なトラブルを招きます。
複雑な譲渡証書の作成から特許庁への登録申請まで、一分の隙もない手続きが、新体制でのスムーズなスタートを約束します。
「大手事務所で培った数々の移転実務を、あなたのビジネスへ」
私は独立前、大手特許事務所にて、権利移転案件を数多く担当してきました。
その確かな経験を活かし、形式的な手続き以上の「安心」を提供します。

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