「商標登録の願書で“指定商品”と書いてあるけど、カタログやチラシは含めるの?」そんな疑問を感じたことはありませんか?
実は、商標法における「商品」という言葉は、一般的な「商品」よりも限定的な意味で使われています。
例えば、自社の「カタログ」「広告チラシ」などは商標法上の「商品」に該当しないとされています。
この記事では、
- 商標法上の「商品」の定義
- 該当するための4つの要件
- よくある勘違いとその注意点(チラシ・カタログ等)
について、商標専門の弁理士がわかりやすく解説します。
これから商標出願を検討している方や、実務担当の方にとって、誤認を防ぐためにも重要な内容です。ぜひ最後までご覧ください。

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています
・商標法に関する深い知識を有しています
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
商標法上の「商品」の定義

商標登録の願書に指定商品・役務を記載する欄があります。
そもそも、商標法上の「商品」って、何ですか?

商標法上の商品は、基本的には、多くの人がイメージしている「商品」で間違いないです。
ただし、注意点もあるので、本記事で、改めて、検討していきます!
まず、弁理士の必読書の「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」は、以下のように、「商品」を定義しています。
商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう
さらに、商標法上の商品は、取引対象として流通過程にのり、ある程度量産可能なものと言われています。
この基準をもとに、どのようなものが、商標法上の商品に該当するか、考えてみます。
商標法上の「商品」の4つの要件(条件)

商標法上の「商品」に該当するには、条件はありますか?

はい、あります。商標法上の「商品」の要件(条件)は、以下の4つです!
- 商取引の目的の対象になる
- 動産である
- 流通過程にのる
- ある程度、量産可能である
「商取引の目的の対象となる」ことが、商標法上の商品の要件(条件)の1つです。

例えば、コンビニやスーパーが取り扱っている製品は、商取引の目的の対象となります
それでは、自社製品が記載されているカタログはどうでしょうか?

カタログは、自社製品の広告媒体に過ぎません。
つまり、それ自体が商取引の対象とならないので、商標法上の商品には該当しません。

自社製品のカタログなどは、多くの人が勘違いするので、要注意です!
商標法上の商品は、動産に限定されます。

マンション・ビルなどの不動産は、商標法上の商品に該当しません
それでは、「電気」「熱」などの無体物は、どうでしょうか?
これらも、商標法上の商品には該当しません。
なお、「不動産業務」「電気の供給」など、商品ではなく、役務(サービス)として、これらの業務をカバーできます。
【要注意!無体物でも、商標法上の「商品」に該当する事例】
ややこしいことに、例外も存在します。
パソコン・スマホでダウンロードできる画像・音楽・動画は、無体物です。

しかし、これらは、商標法上の「商品」です。
商標法上の商品の要件(条件)の1つが、「流通過程にのる」ことです。
例えば、レストランで提供される料理はどうでしょうか?

レストランの中で料理は消費されて、外部に流通することはありません。
よって、この要件(条件)を満たさず、商標法上の商品には該当しません。

なお、レストラン業は、「飲食物の提供」という役務(サービス)に該当します
一方、スーパーに置いてあるパック詰めの惣菜はどうでしょうか?
もちろん、消費期限はありますが、こちらは、流通過程にのります。
よって、商標法上の商品に該当します。
「ある程度、量産可能である」ことも、商標法上の商品の要件(条件)です。
例えば、芸術家が描いた一点物の絵画のオリジナルは、量産できません。

よって、商標法上の商品には該当しません。

一点物の絵画は、商標法ではなく、著作権法によって保護できます
一方、絵画の複製(レプリカ)は、どうでしょうか?
絵画の複製(レプリカ)は、量産可能です。
よって、商標法上の商品に該当します。
商標法上の「商品」の注意点(自社製品のカタログやチラシ)
相談を受けると、商標法上の商品の概念をきちんと理解していない人がいます。
特に、自社製品のカタログ・チラシ・名刺や会社案内など、勘違いしている方が非常に多いです。

カタログやチラシは、自社製品の広告媒体に過ぎません。
よって、カタログやチラシに記載されている商品・サービスについて、商標登録すべきです。
16類の「カタログ」や「チラシ」を指定商品として商標登録しようとする人がいます。
しかし、商品としてのカタログやチラシの商標登録は不要です。
なぜなら、このようなケースでは、カタログやチラシは、商標法上の商品ではないからです。
商標法上の商品の「よくある質問」(FAQ)
以下は、読者の方が迷いがちな実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。
記事本文と合わせてご活用ください。
いいえ。商品のパンフレットや説明書は、商標法上の商品には該当しません。
それらは、取引の目的物ではないためです。
はい、条件によっては「商品」に含まれます。
例えば、「ダウンロード可能な音楽ファイル」「電子出版物」など、商取引の対象として提供されるものであれば、商品に該当します。
基本的には「商品」に該当しません。
商標法上の商品は、「他者との商取引の対象」であることが必要です。
よって、自社内だけで使うものは、「商品」の対象外です。
そのとおりです。Webサービスの提供は、「役務(サービス)」として取り扱われるのが一般的です。
なお、アプリそのものをダウンロード販売する場合、アプリは「商品」に該当するので、注意です。
【まとめ】商標法上の「商品」で分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
・商標法上の商品とは、商標取引の目的の対象となるもので、特に動産をいいます
・また、商標法上の商品は、取引対象として流通過程にのり、ある程度量産可能なものと解されます
・自社製品記載のカタログやチラシは、商標法上の商品に該当しません
商標法上の「商品」に該当するか、判断できないこともあるかと思います。
分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。

なお、筆者(角谷 健郎)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
事務所HPからもご相談いただけますが、以下のフォームからも簡単にお問い合わせいただけます。