商標法上の「役務」(サービス)について、分かりやすく解説!

まとめ

・役務とは、「サービス」です。商標法上の役務は、「他人のために行う労務又は便益であって独立して商取引の目的たりうべきもの」と定義されています

・自分や自社のための業務は、商標法上の役務には該当しません

・また、何らかの業務に付随して、独立していない補助業務も、商標法上の役務には該当しません

役務とは、「サービス」のこと

商標出願の願書には、指定商品・役務を記載する欄があります。

そもそも、「役務」って何のことか、分かりますか?

普段、使うことがない単語なので、分かりにくいですよね。

広辞苑によると、「役務」とは、「労働などによるつとめ。」とのことです。

さらに簡単に言えば、役務は「サービス」という意味です。

商標の世界では、「役務」=「サービス」と理解して、大丈夫です。

商標法上の役務(サービス)の定義

商標法上の役務(サービス)とはどういったものでしょうか?

普通の「サービス」とは、何が違うのでしょうか?

弁理士の必読書である「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」を確認します。

その中で、以下のように、「役務」を定義しています。

他人のために行う労務又は便益であって独立して商取引の目的たりうべきもの

商標法上の役務(サービス)の条件

商標法上の役務(サービス)の定義の中には、2つの条件があります。

  • 他人のために行う
  • 独立して商取引の目的の対象となる

つまり、この2つの条件を満たせば、商標法上の「役務」に該当します

それでは、2つの条件について、詳しく検討していきます。

他人のために行っているか?

商標法上の役務とは、あくまでも「他人のために行う」業務です。

自分や自社のためではなく、他人のために行うことが、要件(条件)の1つです。

この点、ちゃんと把握できていない人が多いです。

具体例を出して、説明します。

商標法上の「役務」に該当する例

他人のために自転車を修理して、報酬を受け取った

 ↓

他人のために業務を行っているので、自転車の修理サービスは、商標法上の役務に該当する

商標法上の「役務」に該当しない例

自分の自転車が壊れて、自分で修理した

 ↓

他人のためではなく、自分のために修理したので、自転車の修理サービスは、商標法上の役務に該当しない

よく勘違いしているのは、自社商品を宣伝するケースです。

このような宣伝行為は、自社のために行っています。

つまり、他人のために行っていないので、商標法上の役務ではありません

虎さん
虎さん

自分・自社のために行うサービスは、商標法上の役務には該当しません。勘違いしている人が多いです!

独立して商取引の目的の対象となるか?

もう1つの要件(条件)が、独立して商取引の目的の対象となることです。

なかなか分かりくにい表現ですよね。

具体例を使って、説明していきます。

商標法上の「役務」に該当しない例

ホテルを経営していて、そのサービスの一環で、無料でシャトルバスで送迎

 ↓

提供する役務は、あくまでも、ホテル業務で、シャトルバスの送迎は、ホテル業務に付随するサービスに過ぎない

 ↓

シャトルバスの送迎は、独立して商取引の目的の対象とはならず、商標法上の「役務」に該当しない

商標法上の「役務」に該当する例

タクシーが、宿泊客をホテルまで運送

 ↓

タクシーのサービスは、ホテル業務に付随したものではなく、そのサービス自体が、独立している

 ↓

タクシーの運送業務は、独立して商取引の目的の対象となり、商標法上の役務に該当します

シャトルバスの送迎とタクシー業務も、宿泊客をホテルに運送する点は同じです。

しかし、同じようなサービスでも、付随したものに過ぎなければ、この条件を満たしません

つまり、商標法上の役務には、該当しません

虎さん
虎さん

付随しているに過ぎない役務(サービス)も、商標法上の「役務」には該当しません

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