自分の氏名の使用は商標権を侵害しない!?理由や注意点を解説

まとめ

・自己の氏名や名称を普通に用いられる方法で表示すれば、例外的に、商標権の効力が及びません

・ただし、ロゴ態様での使用だと、例外規定に該当しません。また、株式会社を除いた社名の使用や自分の苗字の使用も、注意が必要です

・法改正により、条件が緩和されて、他人の氏名を含む商標が、登録しやすくなります

ビジネス上の氏名の使用と商標登録の関係

事業を行っている方は、ビジネスで、自分の氏名を使用することがあります。

一方、氏名が商標登録になっていることがあります。

例えば、有名な例だと、「マツモトキヨシ」です。

以下の通り、「マツモトキヨシ」のロゴ商標が、登録になっています。

商登第4330343号)                                      

それでは、あなたの名前が、「松本 清」(マツモト キヨシ)だったとします

ビジネスで自分の名前を使用すると、上記の商標権を侵害するでしょうか?

結論から言うと、普通に用いられる方法であれば、自分の氏名を使用できます

つまり、例外的に、商標権の効力が及びません。

以下、その理由や注意点について、説明していきます。

自分の氏名や社名が、例外的に、商標権の効力が及ばない場合

商標法では、商標権の効力が及ばない範囲を定めています。

商標法第26条第1項において、以下のように、規定しています。

商標権の効力は、次に掲げる商標(他の商標の一部となつているものを含む。)には、及ばない

一 自己の肖像又は自己の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を普通に用いられる方法で表示する商標

条文だと分かりにくいので、ポイントを絞って、簡単に説明します。

自己の氏名や名称を普通に用いられる方法で表示したとします。

その場合、例外的に、商標権の効力が及ばずに、自由に使用できます

このことが、商標法の条文で規定されています。

上述した通り、実際、「マツマトキヨシ」の商標登録が、存在します。

それでも、自分の氏名が「松本清」であれば、氏名の表示として、「松本清」を使用できます。

なお、自分の氏名に限られます

「マツモトキヨシ」さん以外が、「マツモトキヨシ」を使用しても、例外規定に該当しません。

また、例えば、「ABC株式会社」という会社が存在するとします。

他人に、「ABC」の商標登録を取得されました。

しかし、「ABC株式会社」は自己の名称です

よって、普通に用いられる方法であれば、「ABC株式会社」という名称を自由に使用できます

つまり、「ABC」の商標権侵害には該当しません。

虎さん
虎さん

自己の氏名だけではなく、「株式会社」付きの社名も、普通に用いられる方法であれば、自由に使用できます

他者の商標登録との関係で、自分の氏名・社名を使用する際の注意点

「普通に用いられる方法」に限定される

商標権の効力が及ばないのは、普通に用いられる方法に限られます

よって、ロゴの態様で、自己の氏名や名称を使用すると、商標権の侵害に該当する可能性があります。

例えば、「松本 清」さんが、以下のようなロゴを使用したとします。

このようなロゴは、もはや「普通に用いられる方法」とは言えません。

よって、「マツモトキヨシ」の商標権を侵害する危険性があります。

「株式会社」を除くと、自己の名称ではない

また、株式会社を除くと、自己の名称ではなく、略称と判断されます

あなたの会社の名称が「ABC株式会社」だったとします。

株式会社を除いた「ABC」は、自己の名称でなく、自己の名称の略称に該当します。

もし、他人の「ABC」の商標登録が存在したとします。

その場合、普通に用いられる方法で「ABC」を使用しても、商標権の侵害に該当します。

虎さん
虎さん

注意しないと、他人の商標権を侵害する危険性があります

「苗字」の使用は、例外規定には該当しない

商標権の効力が及ばない範囲には、自己の氏名に限られます。

つまり、自己の苗字には、商標権の効力が及びます

事業目的で苗字を使用すると、商標権の侵害に該当する危険性があります。

なお、以下の記事の通り、ありふれた苗字は、原則、商標登録が難しいです。

ありふれた苗字だと、誰の商品・サービスが分からず、商標として機能しないからです。

しかし、ありふれていなければ、苗字でも、商標登録できます。

また、全国的に著名であれば、例外的に、商標登録が認められます。

例えば、以下のような登録商標です。

よって、ビジネスで、自分の苗字を使用する際には、注意が必要です

商標法の改正による影響

以前の商標実務では、他人の氏名を含む商標は、なかなか商標登録を取得できませんでした。

その氏名の人、全員から、承諾を得る必要があります。

例えば、「Takashi Sato」と商標出願したとします。

その場合、「佐藤 隆」「佐藤 孝」など、日本全国の「サトウ タカシ」さんの承諾が必要です。

よって、商標登録は、ほぼ不可能です。

しかし、以下の記事で、紹介している通り、法改正により、条件が緩和されました

承諾が必要なのは、その分野で、広く認識されている人に限られます。

条件が緩和されたので、氏名を含む商標の登録が増えるでしょう。

自分の氏名を含む商標が、他人に商標登録を取得される危険性が高まります。

ビジネス上、自分の氏名を使用する場合、商標権を侵害しないよう、注意しましょう。

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