「東京」や「大阪」のような地名は、商標登録できると思いますか?
商標専門で弁理士歴12年以上の筆者が、疑問に答えます。
地名は商標登録できるか、その理由と対応策が分かります。
また、日本の旧国名や外国の都市名についても、商標登録できるか、教えます。
地名は、原則、商標登録できない!
結論からいえば、地名は、特許庁の審査で、拒絶される可能性が高いです。
商標法3条1項3号では、以下の商標は、原則、登録できない旨、規定しています。
その商品の産地、販売地、品質、原材料、~(省略)~又はその役務の提供の場所、質、~(省略)~を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
地名は、商品・サービスの提供場所や生産場所と認識されるので、商標法3条1項3号の規定に該当し、商標登録できません。
より具体的に言えば、以下の2つの理由により、地名の商標登録は、原則、認められません。
- 地名では、誰の商品・サービスなのか、区別できない(専門的に言えば、識別力を有さない)
- 誰もが使用したいので、商標登録を与えて、一人に独占的に使用させるのは、好ましくない
また、以下の商標も、同様の理由で、商標登録できない可能性が高いです。
- 「パリ」や「ニューヨーク」のような外国の都市名
- 「越後」・「土佐」や「尾張」などの日本の旧国名
- 湖沼・山岳や河川などの名称
現に、以下のような商標が、特許庁の審査で拒絶されています。
- 商標「ニューヨーク」(商願2001-102404)
- 商標「富士山」(商願2015-43810)
- 商標「琵琶湖」(商願2004-85529)
- 商標「隅田川」(商願2004-71932)
- 商標「弘前公園」(商願2006-48483)
地名のみの商標の主要な対応策(ロゴでの商標登録の取得)
それでは、地名を商標登録にするには、どうすれば、いいでしょうか?
代表的な方法としては、図形と組み合わせて、ロゴ化して商標出願することが挙げられます。
ロゴ化することで、商標法3条1項3号で規定する「普通に用いられる方法で表示する」ものではなくなり、この規定を回避できます!
例えば、以下のような登録商標が、ロゴでの登録事例です。
商標登録は、類似範囲にも、その効力が及びます。
登録商標に類似するロゴ商標を第三者が使用したら、商標権を行使できます。
一方、「NEWYORK」「銀座」など、地名表示として、ごく普通に使用した場合、商標権の効力が及びません。
「NEWYORK」や「銀座」などの地名は、商標としての特徴がなく、原則、誰でも自由に使用できるからです。
地名のみの商標でも、全国的に著名になれば、例外的に商標登録できる!
商標法第3条第2項において、以下のように規定しています。
前項第三号から第五号までに該当する商標であっても、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。
つまり、特定の商品・サービス分野で著名になれば、地名のみでも、例外的に商標登録できます。
なお、商標の著名性を立証するためには、以下のような証拠資料を提出します。
- 商標の実際の使用状況を写した写真や動画
- 請求書や納品書などの取引書類
- テレビCMや雑誌広告などの実績が分かる書類
- 出願人以外の者による紹介記事
- 出願商標の認識度調査(アンケート)の結果
例えば、川崎重工業社の商標「Kawasaki」です。
この商標は、神奈川県の川崎市をアルファベットに表示したに過ぎません。
しかし、商標の登録性について、裁判(事件番号:平成24年(行ケ)第10002号)で争いました。
その結果、使用による識別力の獲得が認められて、例外的に商標登録になりました。
なお、ありふれた苗字の商標の場合も、同じような判断・対応方法で、以下の記事で紹介しています。
【商標登録できないシリーズ】ありふれた苗字商標法第3条第2項の規定は、あくまでも例外規定で、適用されるためのハードルが、かなり高いです。
商標登録を認めてしまうと、他者が、対象分野において、その地名を、使用できなくなります。
誰もが知るような著名商標でないと、なかなか登録が認められないのが現状です。
地名の商標登録で分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談!
地名を商標登録したい場合、分からないことが出てくると思います。
分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・地名のみの商標は、商品・サービスの提供場所や生産場所を表示しているに過ぎません。特許庁の審査で、拒絶される可能性が高いです
・商標をロゴ化すれば、商標登録を取得できる可能性があります
・日本国内で著名になれば、例外的に、文字商標でも商標登録を取得できる可能性があります