「すき家」「吉野家」「松屋」といえば、日本を代表する大手牛丼チェーン3社。
価格や味の違いに注目が集まりがちですが、実は商標登録の取り方にも各社の独自戦略が表れています。
たとえば、ロゴや店舗名だけでなく、メニュー名まで──各社の登録状況を見比べると、それぞれのビジネスの方向性やブランド戦略が垣間見えてきます。
この記事では、3社が実際に登録している商標を紹介しながら、どのような視点で商標を活用しているのかを徹底解説します。
飲食業界でブランディングや知財に関心のある方はもちろん、商標制度に興味をお持ちの方にも必見の内容です。

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、13年以上、働いています
・本記事の執筆のために、時間を掛けて、牛丼チェーン3社の商標登録をチェックしました
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
日本の牛丼チェーンの現状
筆者は、学生時代から、牛丼チェーンを頻繁に利用しています。
そこで、今回は、大手の牛丼チェーンの商標戦略を検討してみました。
まずは、牛丼チェーンの店舗数を調べてみました。
2023年7月時点の日本国内の店舗数ランキングは、以下の通りです。
【第1位】 すき家(1941店)
【第2位】 吉野家(1197店)
【第3位】 松屋(1003店)
「すき家」「吉野家」「松屋」の3つで、ほとんどのシェアを占めています。
牛丼チェーンと言われると、この3つを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
好きな牛丼チェーンのアンケート結果を調べて、上位の3つは、「すき家」「吉野家」「松屋」です。
そこで、この3つの牛丼チェーンに絞って、それぞれの商標戦略を比較します。
大手の牛丼チェーン3社の商標登録を調べてみると
特許庁データベースを調べれば、保有している商標登録を簡単に調べることができます。
保有している商標登録を見れば、各社の商標戦略が分かります。
2023年11月末の時点での商標登録を参考にしながら、3つの牛丼チェーンの商標戦略を比較します。

牛丼チェーンによって、商標戦略が違い、それぞれ特徴があります!
大手牛丼チェーン「すき家」の戦略(バランスよく、商標登録を取得)
まずは、牛丼業界の最大手チェーンの「すき家」です。

「すき家」では、テーブル席を多く設置しています。
これにより、ファミリーや女性の利用客を増やし、売上アップに繋げています。
商標登録の権利者は、「すき家」を運営する株式会社ゼンショーホールディングスです。
ちなみに、「すき家」以外にも、寿司チェーンの「はま寿司」やレストランチェーン「COCO’S(ココス)」も運営しています。
株式会社ゼンショーホールディングスは、約300件の商標登録を保有しています。
その中には、以下の「すき家」の商標登録が含まれています。
- すき家



また、立体的形状も、商標登録で保護できます。
そこで、店頭看板の立体的形状についても、商標登録を保有しています。

すき家では、牛丼などの様々な商品を販売しています。
全ての商品の名称を商標登録しているわけではありません。
しかし、以下の通り、一部の商品名については、商標登録を取得しています。
- すきすきセット
- まぜのっけごはん定食
- うな牛
「すきすきセット」は、ジュースや玩具が追加できる子供用のセットメニューで、「まぜのっけごはん定食」は、朝食メニューの名称です。
「うな牛」は、鰻と牛肉の丼で、毎年、期間限定で発売される人気メニューです。
また、登録商標を調べてみると、「すき家」の文字と組み合わせた商品名の商標登録を取得しています。
「特製牛丼」や「ハーフチーズ牛丼」だけでは、商品の内容表示に過ぎないので、商標登録できません。
つまり、専門用語を使えば、識別力がありません。
そのため、「すき家」の文字と組み合わせて、商標登録しています。
さらに、すき家では、午前5時~11時の6時間限定で朝食メニューを販売しています。
すき家は、朝食メニューを「朝すき」と総称しています。
「
」の商標登録も取得しています。
すき家は、ハウスマークだけでなく、メニュー名なども、商標登録を取得しています。
予算の制約がある中で、バランスよく、商標登録を取得している印象です。
大手牛丼チェーン「吉野家」の戦略(ハウスマークを中心として、商標登録を取得)
牛丼業界の2番手が、「吉野家」です。

吉野家は、1899年に、東京の日本橋で創業し、長い歴史を有しています。
実際、商標登録も、大手の牛丼チェーン3社の中でも、最も古いです。
吉野家のシンボルマークである「
」は、1971年(昭和46年)に商標出願されています。
商標登録の権利者は、「吉野家」を運営する株式会社吉野家ホールディングスです。
ちなみに、「吉野家」以外に、うどんチェーンの「はなまるうどん」等も運営しています。
株式会社吉野家ホールディングスは、約80件の商標登録を保有しています。
大手3社の中でも、特に、ハウスマークの商標保護に力を入れています。
以下の通り、様々なバリェーションで、「吉野家」の商標登録を取得しています。
また、吉野家の常連やファンの間では、「吉野家」を「吉牛」と呼んでいます。
しかし、「吉野家」や「牛丼の吉野家」の商標登録では、「吉牛」の名称まで、保護することができません。
そのため、2017年に商標「吉牛」を商標出願して、商標登録を取得しました。
なお、略称の商標登録の重要性については、以下の記事で、説明しています。
一時期、ちょい飲みブームになり、飲食店でも、力を入れました。
吉野家も、「吉呑み」と称して、吉野家でのちょい飲みを促しました。
2014年に商標「吉呑み」を商標出願して、商標登録を取得しています。
なお、吉野家は、牛丼などの商品の名称を、ほとんど商標登録していませんでした。
「吉野家」などのハウスマークの保護の方に、注力している印象です。
大手牛丼チェーン「松屋」の戦略(様々な観点から商標を保護)
牛丼業界の3番手が、「松屋」です。

松屋では、牛丼以外にも、カレーや定食など、様々なメニューを提供しています。
商標登録の権利者は、株式会社松屋フーズホールディングスです。
ちなみに、「松屋」以外にも、カレーチェーンの「マイカリー食堂」やトンカツチェーン「松のや」も運営しています。
株式会社松屋フーズホールディングスは、約70件の商標登録を保有しています。
まず、「松屋」のハウスマークについて、以下の通り、商標登録を取得しています。
また、松屋は、創業50周年を記念して、2016年に公式キャラクターを発表しました。
公式キャラクターの名前は、「マッキー」です。
そこで、「
」の商標登録も取得しています。
さらに、「松弁ネット」という弁当の予約サービス、車内で注文から受取まで可能な「松屋パークオーダー」というサービスも提供しています。
これに関連して、以下の商標登録も、取得しています。

- 松弁
- パークオーダー
松屋では、牛丼などの様々な商品を販売していますが、全ての商品の名称を商標登録しているわけではありません。
しかし、以下の通り、一部の商品名については、商標登録を取得しています。
- キムカル
- カルボバーグ
- ごろチキ
- ごろトマ
- プレめし
例えば、「キムカル(丼)」は、カルビとキムチの丼の商品名です。
また、「カルボバーグ」は、期間限定で提供した「カルボナーラハンバーグ」の通称です。
2015年に、商標法の保護の対象が広がり、色彩(カラー)や音も、商標登録できるようになりました。
詳細については、以下の記事で、紹介しています。
これに伴い、松屋は、様々な角度から、自社のブランドを保護しています。
他の牛丼チェーンとは異なり、松屋の商標戦略の特徴が出ています。
例えば、以下の通り、位置商標と音商標を登録しました。
ちなみに、上記の位置商標について、黒い破線で囲んだ箇所が、位置商標の位置を示しています。
つまり、店舗の上部の「松屋」の看板が、位置商標の権利範囲です。
また、音商標については、「みんなの食卓でありたい松屋」という歌詞とメロディーが保護されています。
ちなみに、この歌は、テレビCMで使用されていたり、店舗内のBGMで流れていたりします。
さらに、「
」の商標登録も、取得しています。
店舗の看板などに使用されている柄です。
このような商標登録も取得していることに、驚きです。
大手牛丼チェーン3社の商標戦略に関する「よくある質問」(FAQ)
以下は、読者の方が迷いがちな実務上の疑問に対して、簡潔に答えたFAQです。
記事本文と合わせてご活用ください。
牛丼チェーンが多数の商標を保有するのは、ブランド価値の保護と競合との差別化を図るためです。
ハウスマークやロゴ、キャラクター、メニュー名などを商標登録すると、第三者による類似使用を防げます。
例えば、すき家・吉野家・松屋各社は、それぞれのブランド名や独自メニュー名の商標を登録しており、戦略に特徴があります。
各社の戦略には違いがあり、ざっくりとまとめれば、以下の通りです。
・「すき家」はバランスよく多くの商標を出願・取得しています。
・「吉野家」はシンボルマーク(ハウスマーク)を重視して保護しています。
・「松屋」は位置商標や音商標のような 特殊なタイプの商標 も活用し、広い観点から保護しています。
はい、立体商標や色彩商標など、視覚的特徴を権利化することが可能です。
例えば、実際に大手チェーンでは看板の形状なども商標登録されている例があります(記事の比較内容を参照)。
いいえ、すべてのメニュー名が登録されているわけではありません。
各社は、主要ブランド名や人気メニューなど、ビジネス上・マーケティング上の価値が高いものを優先して登録しています。
商標戦略はブランドの識別力を高め、消費者の信頼を守る重要な基盤です。
適切な商標登録の保護があると、偽物商品や類似ブランドからの保護が強化され、長期的なブランド価値向上につながります。
大手チェーンが多様な商標登録を戦略的に保有しているのは、そのためです。
商標登録していない名称を使い続けると、第三者に先に出願されてしまうリスクや、類似商標が出現して混同・苦情が発生する可能性があります。
戦略的に、主要な名称は早めに商標登録を検討することが望ましいです!
【まとめ】大手3社が最強なのは、商標を「一つの名前」で終わらせないからです!
・「すき家」「吉野家」「松屋」が、大手の牛丼チェーンの3社です
・「すき家」は、バランスよく、商標登録を取得している印象を受けます。一方、「吉野家」はハウスマークを中心に、商標登録を取得しています
・「松屋」は、位置商標や音商標でも、商標登録を取得して、様々な角度から商標保護を図っていて、個性的です
吉野家や松屋の戦略が示す通り、商標とは会社名を守るだけのものではありません。
看板のデザイン、心に刺さるキャッチコピー、ファンに愛されるメニュー名……。
ビジネスの「強み」が変われば、守るべき「マーク」も変わります。大手は、利益を生むすべてのポイントに、緻密に「法的な鍵」をかけているのです。
「大手事務所で多種多様なブランド防衛を担った知見を、あなたの挑戦のために」
私は、会社名は守っていても、肝心の「看板メニュー」や「独自サービス名」を他社に真似され、ブランドの魂を削られてしまった飲食店や企業を見てきました。そんな「戦略の穴」を、私は絶対に許しません!

24時間・即レスで「守るべき資産」を特定: あなたの今の事業内容を教えてください。看板名だけでなく、どのフレーズやどのロゴを優先的に登録すべきか、優先順位を検討します。
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