・「すき家」「吉野家」「松屋」が、大手の牛丼チェーンの3社です
・「すき家」は、バランスよく、商標登録を取得している印象を受けます。一方、「吉野家」はハウスマークを中心に、商標登録を取得しています
・「松屋」は、位置商標や音商標でも、商標登録を取得して、様々な角度から商標保護を図っていて、個性的です
日本の牛丼チェーンの現状
筆者は、学生時代から、牛丼チェーンを頻繁に利用しています。
そこで、今回は、大手の牛丼チェーンの商標戦略を検討してみました。
まずは、牛丼チェーンの店舗数を調べてみました。
2023年7月時点の日本国内の店舗数ランキングは、以下の通りです。
【第1位】 すき家(1941店)
【第2位】 吉野家(1197店)
【第3位】 松屋(1003店)
「すき家」「吉野家」「松屋」の3つで、ほとんどのシェアを占めています。
牛丼チェーンと言われると、この3つを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
好きな牛丼チェーンのアンケート結果を調べて、上位の3つは、「すき家」「吉野家」「松屋」です。
そこで、この3つの牛丼チェーンに絞って、それぞれの商標戦略を比較します。
大手の牛丼チェーン3社の商標登録を調べてみると
特許庁データベースを調べれば、保有している商標登録を簡単に調べることができます。
保有している商標登録を見れば、各社の商標戦略が分かります。
2023年11月末の時点での商標登録を参考にしながら、3つの牛丼チェーンの商標戦略を比較します。
牛丼チェーンによって、商標戦略が違い、それぞれ特徴があります!
大手牛丼チェーン「すき家」の戦略(バランスよく、商標登録を取得)
まずは、牛丼業界の最大手チェーンの「すき家」です。
「すき家」では、テーブル席を多く設置しています。
これにより、ファミリーや女性の利用客を増やし、売上アップに繋げています。
商標登録の権利者は、「すき家」を運営する株式会社ゼンショーホールディングスです。
ちなみに、「すき家」以外にも、寿司チェーンの「はま寿司」やレストランチェーン「COCO’S(ココス)」も運営しています。
株式会社ゼンショーホールディングスは、約300件の商標登録を保有しています。
その中には、以下の「すき家」の商標登録が含まれています。
- すき家
また、立体的形状も、商標登録で保護できます。
そこで、店頭看板の立体的形状についても、商標登録を保有しています。
すき家では、牛丼などの様々な商品を販売しています。
全ての商品の名称を商標登録しているわけではありません。
しかし、以下の通り、一部の商品名については、商標登録を取得しています。
- すきすきセット
- まぜのっけごはん定食
- うな牛
「すきすきセット」は、ジュースや玩具が追加できる子供用のセットメニューで、「まぜのっけごはん定食」は、朝食メニューの名称です。
「うな牛」は、鰻と牛肉の丼で、毎年、期間限定で発売される人気メニューです。
また、登録商標を調べてみると、「すき家」の文字と組み合わせた商品名の商標登録を取得しています。
「特製牛丼」や「ハーフチーズ牛丼」だけでは、商品の内容表示に過ぎないので、商標登録できません。
つまり、専門用語を使えば、識別力がありません。
そのため、「すき家」の文字と組み合わせて、商標登録しています。
さらに、すき家では、午前5時~11時の6時間限定で朝食メニューを販売しています。
すき家は、朝食メニューを「朝すき」と総称しています。
「」の商標登録も取得しています。
すき家は、ハウスマークだけでなく、メニュー名なども、商標登録を取得しています。
予算の制約がある中で、バランスよく、商標登録を取得している印象です。
大手牛丼チェーン「吉野家」の戦略(ハウスマークを中心として、商標登録を取得)
牛丼業界の2番手が、「吉野家」です。
吉野家は、1899年に、東京の日本橋で創業し、長い歴史を有しています。
実際、商標登録も、大手の牛丼チェーン3社の中でも、最も古いです。
吉野家のシンボルマークである「」は、1971年(昭和46年)に商標出願されています。
商標登録の権利者は、「吉野家」を運営する株式会社吉野家ホールディングスです。
ちなみに、「吉野家」以外に、うどんチェーンの「はなまるうどん」等も運営しています。
株式会社吉野家ホールディングスは、約80件の商標登録を保有しています。
大手3社の中でも、特に、ハウスマークの商標保護に力を入れています。
以下の通り、様々なバリェーションで、「吉野家」の商標登録を取得しています。
また、吉野家の常連やファンの間では、「吉野家」を「吉牛」と呼んでいます。
しかし、「吉野家」や「牛丼の吉野家」の商標登録では、「吉牛」の名称まで、保護することができません。
そのため、2017年に商標「吉牛」を商標出願して、商標登録を取得しました。
なお、略称の商標登録の重要性については、以下の記事で、説明しています。
一時期、ちょい飲みブームになり、飲食店でも、力を入れました。
吉野家も、「吉呑み」と称して、吉野家でのちょい飲みを促しました。
2014年に商標「吉呑み」を商標出願して、商標登録を取得しています。
なお、吉野家は、牛丼などの商品の名称を、ほとんど商標登録していませんでした。
「吉野家」などのハウスマークの保護の方に、注力している印象です。
大手牛丼チェーン「松屋」の戦略(様々な観点から商標を保護)
牛丼業界の3番手が、「松屋」です。
松屋では、牛丼以外にも、カレーや定食など、様々なメニューを提供しています。
商標登録の権利者は、株式会社松屋フーズホールディングスです。
ちなみに、「松屋」以外にも、カレーチェーンの「マイカリー食堂」やトンカツチェーン「松のや」も運営しています。
株式会社松屋フーズホールディングスは、約70件の商標登録を保有しています。
まず、「松屋」のハウスマークについて、以下の通り、商標登録を取得しています。
また、松屋は、創業50周年を記念して、2016年に公式キャラクターを発表しました。
公式キャラクターの名前は、「マッキー」です。
そこで、「」の商標登録も取得しています。
さらに、「松弁ネット」という弁当の予約サービス、車内で注文から受取まで可能な「松屋パークオーダー」というサービスも提供しています。
これに関連して、以下の商標登録も、取得しています。
- 松弁
- パークオーダー
松屋では、牛丼などの様々な商品を販売していますが、全ての商品の名称を商標登録しているわけではありません。
しかし、以下の通り、一部の商品名については、商標登録を取得しています。
- キムカル
- カルボバーグ
- ごろチキ
- ごろトマ
- プレめし
例えば、「キムカル(丼)」は、カルビとキムチの丼の商品名です。
また、「カルボバーグ」は、期間限定で提供した「カルボナーラハンバーグ」の通称です。
2015年に、商標法の保護の対象が広がり、色彩(カラー)や音も、商標登録できるようになりました。
詳細については、以下の記事で、紹介しています。
これに伴い、松屋は、様々な角度から、自社のブランドを保護しています。
他の牛丼チェーンとは異なり、松屋の商標戦略の特徴が出ています。
例えば、以下の通り、位置商標と音商標を登録しました。
ちなみに、上記の位置商標について、黒い破線で囲んだ箇所が、位置商標の位置を示しています。
つまり、店舗の上部の「松屋」の看板が、位置商標の権利範囲です。
また、音商標については、「みんなの食卓でありたい松屋」という歌詞とメロディーが保護されています。
ちなみに、この歌は、テレビCMで使用されていたり、店舗内のBGMで流れていたりします。
さらに、「」の商標登録も、取得しています。
店舗の看板などに使用されている柄です。
このような商標登録も取得していることに、驚きです。
商標戦略に迷うことがあれば、商標専門の弁理士に相談!
各社によって、商標戦略が違うので、どのような商標戦略を取るべきか、迷うことがあるかと思います。
迷ったら、商標専門の弁理士にご相談ください。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士