・「すき家」「吉野家」「松屋」が、大手の牛丼チェーンの3社です
・「すき家」は、バランスよく、商標登録を取得している印象を受けます。一方、「吉野家」はハウスマークを中心に、商標登録を取得しています
・「松屋」は、位置商標や音商標でも、商標登録を取得して、様々な角度から商標保護を図っていて、個性的です

・すみや商標知財事務所の代表弁理士(登録番号18043)が執筆しています
・商標専門の弁理士として、12年以上、働いています
・本記事の執筆のために、時間を掛けて、牛丼チェーン3社の商標登録をチェックしました
・初心者向けに分かりやすく説明するのが、得意です
日本の牛丼チェーンの現状
筆者は、学生時代から、牛丼チェーンを頻繁に利用しています。
そこで、今回は、大手の牛丼チェーンの商標戦略を検討してみました。
まずは、牛丼チェーンの店舗数を調べてみました。
2023年7月時点の日本国内の店舗数ランキングは、以下の通りです。
【第1位】 すき家(1941店)
【第2位】 吉野家(1197店)
【第3位】 松屋(1003店)
「すき家」「吉野家」「松屋」の3つで、ほとんどのシェアを占めています。
牛丼チェーンと言われると、この3つを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?
好きな牛丼チェーンのアンケート結果を調べて、上位の3つは、「すき家」「吉野家」「松屋」です。
そこで、この3つの牛丼チェーンに絞って、それぞれの商標戦略を比較します。
大手の牛丼チェーン3社の商標登録を調べてみると
特許庁データベースを調べれば、保有している商標登録を簡単に調べることができます。
保有している商標登録を見れば、各社の商標戦略が分かります。
2023年11月末の時点での商標登録を参考にしながら、3つの牛丼チェーンの商標戦略を比較します。

牛丼チェーンによって、商標戦略が違い、それぞれ特徴があります!
大手牛丼チェーン「すき家」の戦略(バランスよく、商標登録を取得)
まずは、牛丼業界の最大手チェーンの「すき家」です。

「すき家」では、テーブル席を多く設置しています。
これにより、ファミリーや女性の利用客を増やし、売上アップに繋げています。
商標登録の権利者は、「すき家」を運営する株式会社ゼンショーホールディングスです。
ちなみに、「すき家」以外にも、寿司チェーンの「はま寿司」やレストランチェーン「COCO’S(ココス)」も運営しています。
株式会社ゼンショーホールディングスは、約300件の商標登録を保有しています。
その中には、以下の「すき家」の商標登録が含まれています。
- すき家
また、立体的形状も、商標登録で保護できます。
そこで、店頭看板の立体的形状についても、商標登録を保有しています。

すき家では、牛丼などの様々な商品を販売しています。
全ての商品の名称を商標登録しているわけではありません。
しかし、以下の通り、一部の商品名については、商標登録を取得しています。
- すきすきセット
- まぜのっけごはん定食
- うな牛
「すきすきセット」は、ジュースや玩具が追加できる子供用のセットメニューで、「まぜのっけごはん定食」は、朝食メニューの名称です。
「うな牛」は、鰻と牛肉の丼で、毎年、期間限定で発売される人気メニューです。
また、登録商標を調べてみると、「すき家」の文字と組み合わせた商品名の商標登録を取得しています。
「特製牛丼」や「ハーフチーズ牛丼」だけでは、商品の内容表示に過ぎないので、商標登録できません。
つまり、専門用語を使えば、識別力がありません。
そのため、「すき家」の文字と組み合わせて、商標登録しています。
さらに、すき家では、午前5時~11時の6時間限定で朝食メニューを販売しています。
すき家は、朝食メニューを「朝すき」と総称しています。
「」の商標登録も取得しています。
すき家は、ハウスマークだけでなく、メニュー名なども、商標登録を取得しています。
予算の制約がある中で、バランスよく、商標登録を取得している印象です。
大手牛丼チェーン「吉野家」の戦略(ハウスマークを中心として、商標登録を取得)
牛丼業界の2番手が、「吉野家」です。

吉野家は、1899年に、東京の日本橋で創業し、長い歴史を有しています。
実際、商標登録も、大手の牛丼チェーン3社の中でも、最も古いです。
吉野家のシンボルマークである「」は、1971年(昭和46年)に商標出願されています。
商標登録の権利者は、「吉野家」を運営する株式会社吉野家ホールディングスです。
ちなみに、「吉野家」以外に、うどんチェーンの「はなまるうどん」等も運営しています。
株式会社吉野家ホールディングスは、約80件の商標登録を保有しています。
大手3社の中でも、特に、ハウスマークの商標保護に力を入れています。
以下の通り、様々なバリェーションで、「吉野家」の商標登録を取得しています。
また、吉野家の常連やファンの間では、「吉野家」を「吉牛」と呼んでいます。
しかし、「吉野家」や「牛丼の吉野家」の商標登録では、「吉牛」の名称まで、保護することができません。
そのため、2017年に商標「吉牛」を商標出願して、商標登録を取得しました。
なお、略称の商標登録の重要性については、以下の記事で、説明しています。

一時期、ちょい飲みブームになり、飲食店でも、力を入れました。
吉野家も、「吉呑み」と称して、吉野家でのちょい飲みを促しました。
2014年に商標「吉呑み」を商標出願して、商標登録を取得しています。
なお、吉野家は、牛丼などの商品の名称を、ほとんど商標登録していませんでした。
「吉野家」などのハウスマークの保護の方に、注力している印象です。
大手牛丼チェーン「松屋」の戦略(様々な観点から商標を保護)
牛丼業界の3番手が、「松屋」です。

松屋では、牛丼以外にも、カレーや定食など、様々なメニューを提供しています。
商標登録の権利者は、株式会社松屋フーズホールディングスです。
ちなみに、「松屋」以外にも、カレーチェーンの「マイカリー食堂」やトンカツチェーン「松のや」も運営しています。
株式会社松屋フーズホールディングスは、約70件の商標登録を保有しています。
まず、「松屋」のハウスマークについて、以下の通り、商標登録を取得しています。
また、松屋は、創業50周年を記念して、2016年に公式キャラクターを発表しました。
公式キャラクターの名前は、「マッキー」です。
そこで、「」の商標登録も取得しています。
さらに、「松弁ネット」という弁当の予約サービス、車内で注文から受取まで可能な「松屋パークオーダー」というサービスも提供しています。
これに関連して、以下の商標登録も、取得しています。
- 松弁
- パークオーダー
松屋では、牛丼などの様々な商品を販売していますが、全ての商品の名称を商標登録しているわけではありません。
しかし、以下の通り、一部の商品名については、商標登録を取得しています。
- キムカル
- カルボバーグ
- ごろチキ
- ごろトマ
- プレめし
例えば、「キムカル(丼)」は、カルビとキムチの丼の商品名です。
また、「カルボバーグ」は、期間限定で提供した「カルボナーラハンバーグ」の通称です。
2015年に、商標法の保護の対象が広がり、色彩(カラー)や音も、商標登録できるようになりました。
詳細については、以下の記事で、紹介しています。

これに伴い、松屋は、様々な角度から、自社のブランドを保護しています。
他の牛丼チェーンとは異なり、松屋の商標戦略の特徴が出ています。
例えば、以下の通り、位置商標と音商標を登録しました。
ちなみに、上記の位置商標について、黒い破線で囲んだ箇所が、位置商標の位置を示しています。
つまり、店舗の上部の「松屋」の看板が、位置商標の権利範囲です。
また、音商標については、「みんなの食卓でありたい松屋」という歌詞とメロディーが保護されています。
ちなみに、この歌は、テレビCMで使用されていたり、店舗内のBGMで流れていたりします。
さらに、「」の商標登録も、取得しています。
店舗の看板などに使用されている柄です。
このような商標登録も取得していることに、驚きです。
商標戦略に迷うことがあれば、商標専門の弁理士に相談!
各社によって、商標戦略が違うので、どのような商標戦略を取るべきか、迷うことがあるかと思います。
迷ったら、商標専門の弁理士にご相談ください。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士