商標の世界では、極めて重要なルールがあります。
それが、先願主義(早い者勝ち)です。
筆者は、10年以上、商標専門の弁理士として、働いています。
先願主義により、悔しい思いをした経験は、何度もあります。
この記事を通じて、商標出願の最重要ルール「先願主義」(早い者勝ち)を、教えます。
これにより、なるべく早く商標出願することの重要性が、分かります。
先願主義(商標出願の最重要ルール)とは「早い者勝ち」!
同一もしくは類似の商標について、2つ以上の商標出願が競合した場合に、どの商標が登録になるでしょうか?
商標の実務では、特許庁は、原則、最初に商標出願した者に商標権を与えます。
つまり、商標出願が競合した場合には、出願日が早い商標出願を優先します。
このようなルールを「先願主義」と呼んでいて、いわゆる「早い者勝ち」になります。
誰よりも早く商標を使用していれば、商標登録できるんですよね?
違います!日本は「先願主義」を採用しているので、先に商標出願した人が優先されます
なお、日本だけではなく、多くの国で、先願主義が採用されています。
いつ商標出願したか、特許庁は、きちんと把握していて、誰が一番早く商標出願したか、容易に判断できます。
先願主義の注意点(他人に商標登録を取得されるかも)
上述した通り、出願日で判断するので、どちらの商標出願が優先されるか、容易に判断できます。
しかし、先願主義の注意点(問題点)もあります。
先に商標を使用していたのに、他人が商標登録を取得してしまうことです。
自分の商標なのに、他人が商標登録を取得できるんですか?
そうです!商標登録しないでいると、他の人に自分の商標登録を取られる危険性があります!
次に、具体的な仮想事例をもとに、他人に商標登録を取得される「おそろしさ」を説明します。
先願主義の問題点(先に商標を使用していたのに、自分の商標を使用できない!?)
例えば、甲が、2022年4月1日に「ABC」という名称の美容院をオープンしました。
しかし、「ABC」の名称を商標出願していなかったとします。
一方、第三者の乙が、何らの事業も展開していませんでした。
ただ、乙が、2023年2月1日に、44類の「美容」を指定して、「abc」という商標を出願しました。
乙の商標出願に気づいた甲が、急いで、2023年2月2日に、44類に「ABC」という商標を出願しました。
時系列で表すと、以下のようになります。
2022年4月1日 | 甲が、商標出願せずに、「ABC」という名称の美容院をオープン |
2023年2月1日 | 乙が、特許庁に「abc」の商標出願を申請 |
2023年2月2日 | 甲が、特許庁に「ABC」の商標出願を申請 |
この場合、甲の方が、先に商標を使用していました。
しかし、最も早く特許庁に商標出願したのは、乙になります。
先願主義(早い者勝ち)の原則により、甲の商標出願よりも、乙の商標出願が優先されます。
このような状況では、乙の商標出願のため、甲は商標登録を取得できません。
さらには、乙の商標が登録になったとします。
その場合、甲の方が先に商標を使用していたにもかかわらず、乙の商標権を侵害します。
よって、甲は、自分の商標「ABC」を使用できなくなるかもしれません。
先に使用していたのに、商標を使用できなくなる危険があるんですね
理不尽ですが、先に商標を使用していても、自分の商標の使用が商標権侵害に該当する危険性があります!
なお、乙の商標出願が登録になった場合には、無効審判など、商標登録を取り消す方法もあります。
しかし、必ず、成功するとは限りません。
さらに、このような対策を行うために、費用や時間も掛かってしまいます。
先願主義のもとでの有効な対応手段(対外的に公表する前に商標出願)
いわゆる「早い者勝ち」なので、なるべく早く商標出願するのが最も重要になります。
事前に調査や検討などを行い、商標出願することが決まったら、迅速に進めましょう。
また、商標が公表になると、悪意のある第三者が商標出願するかもしれません。
できれば、商標を対外的に公表する前に、商標出願を進めましょう。
なるべく早く商標出願するのが大切なんですね
そうです!他人が勝手に商標出願する危険性があるので、公表する前に、商標出願すべきです!
なお、商標出願の願書(申請書)の記載方法については、以下の記事をご参照ください。
自分で商標出願する手間・労力を省きたい人は、弁理士に相談・依頼しましょう。
筆者(すみや商標知財事務所)にご連絡いただければ、迅速かつ的確に、商標出願に対応します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・日本では先願主義が採用されていて、原則、最初に商標出願した者に商標権を与えます
・商標出願せずに、事業を行っていると、第三者に商標出願されてしまうリスクがあります
・できれば、商標を対外的に公表になる前に、商標出願を進めましょう