・文字商標として商標登録を取得していたため、ロゴ態様での使用が、登録商標の使用に該当しないと審判官は判断しました
・説明文中の登録商標の記載も、商標としての機能を発揮せず、商標法上、登録商標の使用に該当しないと判断しました
・登録後に、適切に登録商標を使用しないと、不使用取消審判によって、商標登録が取り消されるリスクがあります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、審判番号が取消2016-300915の「菌活」第一事件の審決例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
本件の被請求人であるホクト株式会社は、標準文字の「菌活」の商標登録を保有していました。
これに対して、本件の請求人は、以下の32類の指定商品についての商標登録の取り消しを求めて、不使用取消審判が請求しました。
きのこ入りビール,きのこ入り合成ビール,きのこ入りスタウト,きのこ入りラガービール,きのこを使用した清涼飲料,飲料用きのこジュース
商標登録の部分的な取り消しが認められるか否か、争ったのが本件になります。
特許庁の判断
被請求人は、きのこを配合した青汁の商品「ホクトの青汁」を販売していました。
商品パッケージの右上方に、以下のような表示があります。
商品の包装の左側面に以下のように記載されていました。
被請求人は、このような証拠資料をもって、登録商標「菌活」を使用している旨、主張しました。
しかし、結論としては、特許庁の審判官は、被請求人の主張を認めずに、32類の指定商品についての登録を取り消す旨、判断しました。
まず、被請求人が使用している「菌活」の文字は、「菌」の中の「禾」部分が「きのこの図形」になっています。
また、「活」の文字には、文字の右肩に「十字の星様の図形」が付加されています。
被請求人の使用する「菌活」の文字は、一般に行われる文字のデザイン化の範囲を大きく超えていると判断しました。
よって、ロゴ化された「菌活」の文字は、登録商標と社会通念上、同一の商標には該当しないとのことです。
その他に、被請求人の商品の包装には、「菌活」とは菌の力を利用した食品を~、という記載があります。
これについては、菌活がカギ括弧でくくられているが、説明文中に菌活という文字が使用されているに過ぎないとのことです。
よって、自他商品の識別標識として需要者に認識されないので、商標としての使用に該当しないと判断しました。
以上より、対象の指定商品について、登録商標「菌活」(もしくは、社会通念上、同一の商標)を使用していないと審判官は判断しました。
審決例から学べること
登録商標の使用方法について、参考になる審決例になります。
登録商標とかけ離れた態様で使用していると、本件のように、不使用取消審判によって、取り消されるリスクがあります。
なるべく、商標登録した態様で、登録商標を使用するよう、心掛けましょう。
また、完全同一でなくても、登録商標と社会通念上、同一の商標に使用であれば、登録の取り消しを回避することができます。
なお、社会通念上、同一の商標については、以下の記事をご参照ください。
実際の使用態様が登録商標と異なる場合でも、できれば、社会通念上、同一の範囲内に留めましょう。
さらに、説明文中の記載では、商標としての使用に該当しない可能性があります。
製品やパッケージに目立つように独立して記載する等して、商標として使用していることを明確にすべきです。