・9類の商品「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」と10類の商品「体脂肪測定器,体組成計」が類似すると判断しました
・類似群コードが相違するにも関わらず、両商品が類似すると判断しました
・訴訟においては、類似群コードに捉われることなく、個別具体的に、商品・役務の類否を判断します
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の平成27年(行ケ)第10134号の判決、商標「Dual Scan」の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
被告である株式会社タニタは、9類の商品「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」を指定する、以下の商標登録(以下、「登録商標」と言います)を保有していました。
これに対して、原告であるオムロンヘルスケア株式会社は、10類の商品「体脂肪測定器,体組成計」を指定する、以下の商標登録(以下、「引用商標」と言います)を保有しています。
原告は、自己の商標登録に基づき、被告の商標登録に対して無効審判を請求しました。
無効審判においては、本願商標に係る指定商品と引用商標に係る指定商品が類似しないとして、本願商標の商標登録を維持する旨の審決が下されました。
この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。
裁判所の判断
あなたは、登録商標に係る指定商品「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」と引用商標に係る指定商品「体脂肪測定器,体組成計」が類似すると思いますか?
結論から言えば、これらの指定商品が類似すると裁判所は判断して、無効審判の審決を取り消しました。
商標の実務では、商品の類否は類似群コードをもとに判断して、類似群コードが一致していれば、商品・役務が類似すると推定します。
類似群コードについては、以下の記事をご参照ください。
登録商標に係る9類の指定商品「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は「測定機械器具」に属し、類似群コード「10C01」が付されています。
一方、引用商標に係る10類の指定商品「体脂肪測定器,体組成計」は「医療用機械器具」に属し、類似群コード「10D01」が付されています。
よって、類似群コードをもとに判断すると、これらの指定商品は、類似すると推定されません。
しかし、裁判所においては、類似群コードに捉われることなく、個別具体的に、指定商品の類否を判断しました。
引用商標に係る指定商品、医療用の「体脂肪測定器,体組成計」は、医療現場での利用に限定されず、学校やフィットネスクラブ、企業等でも利用され、一般の消費者でも入手することができます。
また、原告と被告は、医療用と家庭用の両方の製品を製造し、その中でも、家庭用のシェアが大半を占めます。
よって、医療用製品の出所について、需要者が家庭用製品の出所と区別して認識することが困難な状況とのことです。
さらに、医療用と家庭用の体重計・体組成計の測定対象は同じで、性能によって両製品を区別することも困難とのことです。
このような状況から、医療用の「体脂肪測定器,体組成計」と家庭用の「脂肪計付き体重計,体組成計付き体重計,体重計」は、誤認混同のおそれがあり、類似すると判断しました。
判例から学べること
商標の実務において、類似群コードをもとに、商品・役務の類否を判断していて、分かりやすく、とても便利な制度になります。
しかし、画一的な判断手法に過ぎませんので、個別具体的に厳密に判断すると、類似群コードが一致していても、商品・役務が類似しないと判断される可能性があります。
それが、本件のケースになります。
審判や訴訟においては、類似群コードに拘束されることなく、個別具体的に商品・役務の類否が判断されますので、注意しましょう。