普通名称と勘違いしやすい登録商標が、いくつか、あります。
その代表例が、「宅急便」です。
弁理士歴10年以上の商標専門の弁理士が、普通名称と勘違しやすい登録商標を、教えます。
また、そのような登録商標とのトラブルの回避法を伝えます。
さらに、そのような商標登録を保有している商標権者に対して、注意点を教えます。
配達サービスの「宅急便」とは
何か郵送するときに、宅急便を利用することがありませんか?
宅急便は、日本全国へ配達できるサービスで、年中無休で利用できます。
ネットショッピングやフリマサイトが普及する中、ますます宅急便を利用する機会が増えています。
それでは、ここで質問です。
「宅急便」は、登録商標でしょうか?
それとも、誰でも自由に使用することができる普通名称でしょうか?
あなたは、普通名称のように、日常的に「宅急便」の語を使用していませんか?
宅急便は登録商標か?
結論からいえば、「宅急便」は、ヤマトホールディングス社の登録商標です。
現に、以下のような商標登録が存在します。
また、ヤマトホールディングス社は、標準文字でも「宅急便」の商標登録(商登第4939122号)を取得しています。
このような状況なので、うっかり、宅配事業に「宅急便」の名称を使用したとします。
そうすると、ヤマトホールディングス社の商標権の侵害に該当します。
宅配便が、登録商標だと知りませんでした
気が付かずに使用した場合も、商標権侵害に該当するので、要注意です!
似たような名称の「宅配便」なら、どうでしょうか?
「宅配便」の商標登録はなく、「宅配便」は貨物の輸送サービスを示す普通名称です。
よって、「宅配便」であれば、他者の商標権を侵害することなく、問題なく使用できるでしょう。
「宅急便」の商標登録に注意した競合の運送業者の使用例
実際、競合の運送業者は、「宅急便」ではなく、「宅配便」の語を使用しています。
このように、商標トラブルを回避するため、「宅急便」の使用を避けていることが分かります。
「宅急便」以外の普通名称と勘違いしやすい登録商標
「宅配便」以外にも、普通名称と勘違いしやすい登録商標は、多いです。
例えば、「セロテープ」、「washlet」(ウォシュレット)や「プリクラ」も登録商標です。
「セロテープ」は、ニチバン株式会社の登録商標で、紛らわしいですが、「セロハンテープ」が普通名称です。
また、「washlet」(ウオシュレット)は、TOTO株式会社の登録商標で、「温水洗浄便座」が普通名称です。
さらに、「プリクラ」は、株式会社セガの登録商標で、「プリントシール機」が普通名称です。
「セロテープ」や「プリクラ」も、登録商標なんですね
うっかり、自分の事業に使用すると、商標権の侵害で訴えられる危険性があります!
その他にも、以下の名称が、実は、登録商標です。
- QRコード(商登第6181404号)※「二次元バーコード」が普通名称
- バンドエイド(商登第1537538号)※「ガーゼ付き絆創膏(ばんそうこう)」が普通名称
- 味の素(商登第411295号)※「うま味調味料」が普通名称
- 万歩計(商登第1728037号)※「歩数計」が普通名称
- プラモデル(商登第555762号)※「プラスチックモデル」が普通名称
- ポテチ(商登第2474349号)※「スナック菓子」が普通名称
- タバスコ(商登第2719020号)※「辛味調味料」が普通名称
- タッパー(商登第715489号)※「プラスチック製密封容器」が普通名称
「宅急便」で学ぶ!商標トラブルの回避(事前に商標登録を調べよう!)
普通名称だと思った名称が、実は登録商標の可能性があります。
データベース「J-PlatPat」を利用すれば、登録商標がどうか、調べることができます。
データベース「J-PlatPat」の利用方法は、以下の記事をご参照ください。
自分で調べるのが、難しければ、プロに頼んで、商標調査してもらいましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご依頼いただければ、喜んで、お手伝いします!
商標調査の実績、多数あります
登録商標だと気が付かずに、使用していたら、商標権侵害に該当して、トラブルになる危険性があります。
事業を展開していく中で、うっかり、他人の登録商標を使用しないよう、注意しましょう。
普通名称だと思っていた名称が、意外にも登録商標である可能性があります。商標調査が重要です!
「宅急便」で学ぶ!商標権者は、普通名称化の対策が必要!
今度は、このような登録商標を保有する商標権者の立場になって、考えます。
商標権者は、普通名称にならないように、注意すべきです。
登録商標が、不特定多数の人に使用された結果、誰の商品・サービスなのか、分からなくなることがあります。
このような事態を「商標の普通名称化」と言います。
なお、「商標の普通名称化」については、以下の記事で、より詳しく紹介しています。
普通名称化してしまうと、商標権が空洞化してしまい、商標権を行使できなくなる危険性があります。
このような事態を回避するために、普通名称化の対策が重要です。
具体的には、商標にRマークを付けたりして、登録された商標であることを明示しましょう。
せっかく商標登録を取得しても、普通名称化すると、商標権が空洞化するんですね
そのような事態を防ぐため、例えば、セガ社は、「プリクラ」が商標登録であることを積極的にアピールしています!
なお、Rマークの使用方法を詳しく知りたい方は、以下の記事をご参照ください。
分からないことや困ったことがあれば、弁理士(専門家)に相談しよう!
実際に、事業を進めていくと、他者の商標権を侵害していないか、心配になることもあるでしょう。
自分で調べても、分からないことや困ったことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
商標トラブルを避けるためには、早めに専門家に相談するのが重要です。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご連絡いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・「宅急便」は、ヤマトホールディングス社の登録商標で、「セロテープ」や「washlet」(ウォシュレット)も登録商標です
・普通名称だと思ったものが、実は登録商標のことがあるので、注意しましょう
・一方、このような登録商標の権利者は、普通名称化しないよう、Rマークを付けるなど、きちんと対策する必要があります