商標「微アル」の審決例紹介

まとめ

・本願商標「微アル」は、商品の品質表示に該当するとして、識別力を有さないと判断しました

・また、本願商標から、必ずしも、アサヒビール社の商品を想起しないとして、著名性(識別力)の獲得を否定しました

・著名性(識別力)の獲得を主張するためには、指定商品・役務を限定すること等が考えられます

事件の概要

商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。

今回は、審判番号が不服2022-5612の商標「微アル」の審決例を紹介します。

まず、事件の概要を説明します。

審判の請求人は、アサヒグループホールディングス株式会社になります。

審判の請求人は、「ビール」や「ビール風味の麦芽発泡酒」を指定して、商標「微アル」を出願しました。

これに対して、特許庁の審査において、「微アル」は「微量のアルコール」程度の意味合いしか生じないとして、商品の品質表示に該当し、識別力を有さないとして、拒絶理由を通知しました。

これに対して、審査段階において、意見書を提出して反論しましたが、反論が認められずに、拒絶査定になりました。

この拒絶査定に対して、不服があり、拒絶査定不服審判を請求したのが、本件になります。

審判の請求人は、アサヒグループホールディングス株式会社で、争った商標は「微アル」になります

特許庁の判断

審判の請求人は、本願商標「微アル」が識別力を有する旨、反論しました。

また、本来的に識別力がなかったとしても、審判の請求人の使用により、請求人の業務を表示するものと認識されるようになり、後発的に識別力を獲得した旨、併せて、反論しました。

あなたは、「微アル」が商品の品質を表示していると思いますか?

また、あなたは、「微アル」の文字を見て、アサヒグループホールディングス株式会社(もしくはアサヒビール株式会社)の商品をすぐに思い浮かべますか?

結論から言えば、特許庁の審判官は、請求人の主張を認めずに、本願商標が識別力を有さないとして拒絶しました。

「微アル」が商品の品質を表示するか

本願商標中の「微」の語は、「微糖」や「微炭酸」のように、「~の含有量がわずかであること」の意味合いで、親しまれています。

また、本願商標中の「アル」の語は、「ノンアル」や「アルハラ」のように、「アルコール」の略称として、使用されているとのことです。

よって、本願商標は、「アルコール含有量が(わずかである)1%未満の飲料」を意味し、商品の品質表示に過ぎないと判断しました。

「微アル」は、商品の品質表示に過ぎないと判断されました!

「微アル」が、著名性(識別力)を獲得しているか

請求人と同一視しうる「アサヒビール株式会社」は、商品「アサヒ ビアリー」などに、2021年3月から本願商標を使用して、全国約6000店舗で商品を販売しています。

2021年3月から12月までの売上金額は37億円を超えています。

しかし、使用している商品は、「アルコールを0.5%含有してなる炭酸飲料」だけになります。

一方、本願商標に係る指定商品は「ビール」や「ビール風味の麦芽発泡酒」などになりますので、指定商品全てについて、本願商標を使用していません。

また、販売期間も、2021年からなので、さほど長くないと判断しました。

さらに、新聞やインターネットの「微アル」飲料の紹介記事で、請求人商品に限られている訳ではなく、「微アル」の語は、商品カテゴリーの一種と理解されるとのことです。

よって、「微アル」を使用したアサヒビール社の広告に接したとしても、アサヒビール社が「微アル」飲料を取り扱う業者の一つであると認識するに過ぎないと判断しました。

以上より、著名性(識別力)の獲得を否定して、本願商標から、必ずしも、アサヒビール社の商品を想起しないと判断しました。

「微アル」は、アサヒビール社の商標として、著名性(識別力)の獲得をしていないと、判断されました!

審決例から学べること

本件において、「微アル」が商品の品質表示に該当し、さらに、著名性(識別力)も獲得していないと判断しました。

著名性(識別力)の獲得の判断では、実際に使用していない商品が含まれていることが否定的に作用しました。

著名性(識別力)の獲得を争うのであれば、指定商品・役務を限定することが考えられます。

また、確かに、請求人(アサヒビール)は、「微アル」分野の先駆者だと思いますが、他にも、「微アル」飲料を取り扱う業者がいます。

さらに、「微アル」が、商品分野の表示として使用されている実情がありました。

他者も同種の商品を取り扱っていないか、自分以外に出願商標を使用していないか等、考慮・検討する必要があります。

競合他社の使用状況も考慮・検討しましょう

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