・「GINZA CLEAR」のロゴ商標が、「clear」などの先行商標と類似すると、裁判所は判断しました
・その理由は、「GINZA CLEAR」のロゴ商標から、「CLEAR」の文字部分が分離・抽出して認識されるからです
・世の中には、地名を含んだ商標が数多く存在しますが、地名を付けただけでは、先行商標と区別できない可能性があります
事件の概要
商標の実務で、参考になる判例・審決例を紹介していきます。
今回は、知的財産高等裁判所の令和4年(行ケ)第10119号の判決、「GINZA CLEAR」のロゴ商標の判例を紹介します。
まず、事件の概要を説明します。
原告は、「化粧品」や「被服」を指定して、以下のロゴ(以下、「本願商標」といいます)を商標出願しました。
しかし、特許庁の審査において、本願商標が、先行商標「clear」などと抵触するとして、本件の商標出願が拒絶されました。
この判断に対して、拒絶査定不服審判を請求しましたが、判断が覆らず、拒絶査定が維持されました。
この審決に不服のある原告が、審決の取り消しを求めて、訴訟を提起したのが本件になります。
裁判所の判断
あなたは、本願商標が、「clear」などの引用商標と類似していると思いますか?
つまり、本願商標から「CLEAR」部分が分離・抽出して認識されると思いますか?
結論から言えば、裁判所は、本願商標が引用商標と類似するとして、原告の請求を棄却しました。
裁判所の判断について、紹介していきます。
本願商標中の図形部分について
本願商標は、以下の図形を含んでいて、面積にして本願商標全体の70%以上を占めます。
しかし、この図形に含まれているモノグラムが、何の文字をロゴ化したものか、一見して、理解できないとのことです。
よって、本願商標の図形部分から、出所識別標識としての称呼(読み)及び観念(意味合い)が生じないとのことです。
何の文字が記載されているか、分からないので、図形部分から、特定の称呼・観念は生じないと判断しました
本願商標中の「GINZA」の文字部分について
「GINZA」は、東京都中央区にある「銀座」の地名をローマ字で表記したものです。
以下の通り、商品の販売地やブランド発祥地としての「GINZA」の文字の使用例が多数あります。
よって、本願商標中の「GINZA」の文字部分は、商品の販売地などを表示しているに過ぎません。
「GINZA」の文字部分からも、出所識別標識としての称呼(読み)及び観念(意味合い)が生じないとのことです。
「GINZA」の文字は、東京の「銀座」を意味し、商品の販売地などを表示しているに過ぎないとのことです
本願商標中の「CLEAR」の文字部分について
「CLEAR」の語は、「明快な」などを意味する、よく親しまれた平易な英単語です。
「CLEAR」の語は、本願商標の指定商品・役務との関係で、その商品やサービスの直接的な内容表示ではありません。
また、本願商標中、「CLEAR」の文字は、「GINZA」の文字よりも、大きく記載されています。
よって、「CLEAR」の文字部分は、商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとのことです。
「CLEAR」部分が、本願商標の要部(主要部分)と判断しました
本願商標と引用商標の類否判断
以上のような状況を踏まえると、本願商標から「CLEAR」の文字部分が分離・抽出して認識されます。
本願商標中の「CLEAR」部分と引用商標「clear」などは類似します。
よって、本願商標が、「clear」などの引用商標と類似していると、裁判所は判断しました。
過去の裁判例で示された基準をもとに判断していて、妥当な結論が下されたと考えます
判例から学べること
世の中には、地名を含んだ商標は、数多く存在します。
今回の判例は、地名を含んだ商標の類否判断の参考になります。
「TOKYO」や「JAPAN」のような地名は、商品の販売地・役務の提供場所を表示しているに過ぎないと判断される可能性があります。
つまり、残りの文字部分が、商標の要部(主要部分)と判断される可能性があります。
地名を付けただけでは、先行商標と区別できない可能性が高いので、注意しましょう。
地名を含む商標は多数ありますが、地名部分が、商標の要部(主要部分)と判断される可能性は低いです