商標登録を取得するためには、特許庁に願書(申請書)を提出します。
願書(申請書)の作成は、弁理士に依頼することもできますが、自分で対応することも考えられます。
筆者は、10年以上、商標専門の弁理士として働いていて、毎年100件以上、願書を作成してきました。
この記事で、商標登録の願書の作成・送付の方法を、丁寧に教えます。
また、願書の作成・送付の際に、どのような点に注意すべきか、分かります。
商標登録を取得するには、特許庁に願書を提出(商標登録のやり方)
商標登録を取得したいと思った場合、どうすれば、いいでしょうか?
商標登録の取得のためには、商標出願する必要があり、具体的には、商標登録の願書を特許庁に提出します。
願書の作成を弁理士に依頼することが多いですが、頑張って、自力で作成することもできます。
商標権の権利範囲は、願書に基づいて、決定するので、十分に注意して、作成しましょう。
「知的財産相談・支援ポータルサイト」というウェブサイトで、願書のフォームを入手できます。
ワード形式のデータでも、取得できるので、このデータを利用して、願書を作成します。
自力で願書を作成・提出するメリットって、何ですか?
最大のメリットは、「コスト」です!弁理士に依頼すると、数万円の手数料が掛かるので、自力でやれば、コストを節約できます
具体的な商標登録のやり方①(願書を記載する)
商標登録の願書には、いくつかの記載事項があり、例えば、以下のような項目を記載する必要があります。
- 商標登録を受けようとする商標
- 指定商品/役務
- 出願する区分
- 出願人の情報
願書のフォームに沿って、項目ごとに、記載方法を簡単に説明します。
商標出願の種類は色々あります。
しかし、一般的な商標出願であれば、「商標登録願」で大丈夫です。
こちらは、任意の項目です。
10字以内で出願案件を特定したい番号があれば、記載してください。
特になければ、この項目を削除して、大丈夫です。
特許庁に持参する場合、持参する日を記載します。
また、郵送で提出する場合は、郵便局に投函する日を記載しましょう。
あて先は、「特許庁長官 殿」で大丈夫です。
特許庁長官の氏名まで、記載する必要はありません。
出願したい商標を記載する欄です。
権利範囲になるので、間違いのないよう、十分に注意しましょう。
出願後、出願商標って、修正できるんですか?
原則、出願商標を修正できません!
大きさ8cm平方の商標記載欄(四角い枠線)の中に、直接、文字や図形などを記載します。
また、標準文字で商標出願したい場合、商標登録を受けようとする商標の次に【標準文字】 と記載します。
例えば、標準文字で「虎さん」を商標出願するには、以下のように記載します。
【商標登録を受けようとする商標】
虎さん
【標準文字】
なお、標準文字制度については、以下の記事で紹介しています。
標準文字って何?標準文字の利用が有効なケース・商標登録例や注意点も紹介商標権は、マークと、そのマークを使用する商品・サービス(役務)の組合せで一つの権利になります。
つまり、指定商品・役務も、権利範囲になるので、注意して記載しましょう。
指定商品・役務って、何ですか?
出願商標を使用している、または、使用を予定している商品・役務(サービス)です
「【指定商品(指定役務)】被服」のように、商標登録を取得したい商品・役務を記載します。
商品・役務の内容及び範囲を明確ではないと、審査において、拒絶理由が通知されます。
拒絶理由が通知されたら、商品・役務を補正する機会が与えられます
商品・役務が属する区分を【】内に記載します。
なお、区分とは、商品・役務(サービス)が属するカテゴリーで、1類~45類まで、計45個あります。
例えば、被服は25類に属するので、【第25類】と記載します。
商標登録する区分の決め方については、以下の記事で、紹介しています。
【分かりやすく解説】商標登録する「区分」の決め方!また、指定商品・役務と区分は、複数、指定できます。
複数の指定商品・役務がある場合、指定商品・役務を「,」(カンマ)で区切りましょう!
具体的に例を出して、説明します。
3類で「化粧品」「せっけん」を指定し、かつ、5類で「薬剤」「サプリメント」を指定したいとします。
その場合、以下のように願書に指定商品を記載します。
【第3類】
【指定商品(指定役務)】 化粧品,せっけん
【第5類】
【指定商品(指定役務)】 薬剤,サプリメント
なお、以下の記事で、よくある間違いを紹介しているので、確認しましょう。
要注意!指定商品・役務の記載方法のよくある間違い(4つ)【識別番号】の欄は、特許庁から識別番号の通知を受けている場合のみ記載します。
初めて商標出願する場合、【識別番号】の欄は不要ですか?
はい、記載しなくて大丈夫です!
【住所又は居所】は、「○○県○○市○○町○○丁目○○番○○号」のように具体的に記載します。
なお、識別番号を記載した場合、【住所又は居所】を省略できます。
【氏名又は名称】の欄は、個人の場合、出願人の氏名を記載してください。
一方、法人の場合には、【氏名又は名称】の欄に、法人の名称・商号を記載し、また、【代表者】の欄を設け、代表者の氏名を記載します。
代表者の役職を書かなくていいですか?
はい、役職等の肩書きは不要です!
【電話番号】の欄は、なるべく連絡のつく電話番号を記載します。
なお、【国籍・地域】の欄は、出願人が外国人の場合に記載します。
何らかの書面も併せて提出する場合、この項目を設けます。
ただ、出願の際に、何らかの追加書面を提出することはほとんどないので、基本的には、この項目を削除して大丈夫です。
収入印紙ではなく、特許印紙なので、注意しましょう。
特許印紙は、どこで売っていますか?
特許庁1階の販売所や全国各地の集配郵便局で販売しています!
印紙代は、出願する区分の数によって、決まります。
1区分目は12,000円で、2区分目以降は、1区分あたり8,600円です。
しっかり計算して、正確な金額を記載しましょう。
印紙代は区分数で決まるんですね
はい、そうです!区分数が増える程、印紙代が増額します
なお、印紙代の納付方法には、以下の6つがあります。
- 特許印紙
- 予納
- 現金納付
- 電子現金納付
- 口座振替
- クレジットカード
以下の記事で詳しく紹介しているので、自分に合った納付方法を選択しましょう。
【タイプ別】特許庁への費用(印紙代)のオススメの納付方法商標登録の願書の記載例
例えば、筆者が、「ABC」という名前のフランス料理をオープンするとします。
筆者の個人の名義(筆者の本名は「角谷 健郎」です)で、飲食事業において、「ABC」という名称を商標登録したいと考えました。
その場合、商標登録の願書を、例えば、以下のように記載します。
商標登録の権利範囲になり、また、提出した後は修正が難しいので、間違いがないか、何度も確認しましょう!
商標登録の願書に記載する「出願人の名義」のアドバイス
商標出願する際、出願人の名義を記載する必要があります。
基本的には、出願商標を実際に使用する人を、出願人とするのが望ましいです。
また、出願人の名義は、法人でも個人でも、どちらでもOKです。
個人名義でも、法人名義でも、商標出願できるんですね
はい、そうです。法人名義で商標出願することが多いですが、個人名義で商標出願することもあります!
なお、個人名義で商標登録を取得したら、別途、特許庁への移転申請の提出が必要になることがあります。
例えば、以下のようなケースです。
- 商標権者が亡くなった
- 会社の代表者の名義で商標登録を取得して、会社の代表者が変更になった
- 法人を設立したので、個人から法人に商標権を移したくなった
例外的に、出願商標を実際に使用する者以外が、出願人となる場合もあります。
例えば、あなたが、「ABC」というお菓子を販売していて、他者から文房具のコラボ商品の打診を受けたとします。
その場合、文房具について「ABC」の商標登録が必要です。
「ABC」はあなたの商標ですので、あなたの名義で文房具について「ABC」を商標出願します。
ただし、商標の使用者はコラボ先になり、出願人と商標の使用者が異なります。
なお、このような場合、ちゃんと使用許諾契約(ライセンス契約)を結びましょう。
使用許諾契約を結んでいないと、不使用取消審判を請求されて、商標登録が取り消されるリスクがあります!
また、子会社が使用する商標を、親会社の名義で商標出願することも多々あります。
そのような場合、親会社は、子会社の商標出願の管理も行いましょう。
なお、グループ会社の場合の商標登録の管理方法は、以下の記事で、紹介しています。
グループ会社の場合、どのように各社の商標登録を管理するか、3つの方法を紹介!具体的な商標登録のやり方②(願書を提出する)
商標出願するためには、願書を特許庁に提出する必要があります。
それでは、どうやって特許庁に願書を提出したら、いいでしょうか?
提出方法は、以下の3つの方法があります。
- 特許庁に持参
- 特許庁に郵送
- インターネットで提出
メリット・デメリットがありますので、各々の方法を検討していきます。
商標出願の経験の有無や年間の出願の件数に応じて、どのような方法で願書を提出するか、決めましょう!
まず、特許庁に持参する方法です。
作成した願書を持っていけば、特許庁1階の出願受付窓口で提出できます(特許庁の受付時間は、平日の9時~17時)。
特許庁に持参するメリット
特許庁には、相談窓口もあるので、提出前に、相談することもできます。
願書の記載方法に不安がある方、初めて商標出願する方には、おすすめです。
初めての商標出願なので、特許庁に願書を持参しようかな
特許庁には相談の窓口があるので、時間があり、都内近郊に住んでいれば、おススメです
特許庁に持参するデメリット
東京都の霞が関にある特許庁でしか、願書を受け付けてくれず、また、受付時間も、平日に限られます。
遠方に住んでいる方や平日に特許庁に行く時間のない方は、別の提出方法も検討しましょう。
次に、特許庁への郵送で、願書を提出することもできます。
その場合、宛名面(表面)の余白に「商標登録願 在中」と記載し、「特許庁長官 宛」に郵送します。
また、大切な書類なので、書留・簡易書留郵便・特定記録郵便で提出しましょう。
特許庁に郵送するメリット
特許庁に持参するよりも、時間も節約できます。
商標出願の経験がある方などには、特許庁への郵送が、おすすめです。
特許庁に郵送するデメリット
特許庁に持参する場合も同様ですが、商標登録の願書を紙で提出することになります。
そのため、願書を電子化するための電子化手数料を掛かります。
電子化手数料は、2,400円+800円×ページ数です。
インターネットで願書を特許庁に提出することも可能です。
実際、筆者も、インターネットで、商標登録の願書を提出しています。
インターネットで提出するメリット
インターネットでの提出であれば、パソコン1台で対応でき、また、電子化手数料が掛かりません。
1年間で何件も商標出願する場合、インターネットでの出願が便利で、有効な方法です。
インターネットで提出するデメリット
特許庁のホームページにアクセスすれば、簡単に商標出願できるわけではありません。
電子証明書を用意したり、専用の出願ソフトをインストロールする必要があります。
一度、専用の出願ソフトを導入すれば、2回目以降は、簡単にインターネットから出願できます
手間や労力が掛かりますので、数年に1件程度しか、商標出願しない場合には、別の提出方法をお勧めします。
商標登録のやり方で、分からないことがあれば、一人で悩まずに、相談しよう!
実際に願書を作成してみると、願書の記載方法で、迷うことが多々あります。
「商標登録出願書類の書き方ガイド」が参考になるので、分からないことがあれば、チェックしてください。
それでも、解決しなければ、一人で悩まずに、「独立行政法人 工業所有権情報・研修館」(INPIT)に相談することも考えられます。
特許庁に相談窓口がある他に、電話やメールでも相談でき、担当者が、親身に対応してくれるはずです。
さらに、商標専門の弁理士に相談してみるのもアリです。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご連絡いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・商標登録を取得ために、特許庁に願書を提出する必要があります。ウェブサイトから、願書のフォームを入手できます
・商標登録の願書には、「商標登録を受けようとする商標」「指定商品又は指定役務」「商品及び役務の区分」「商標登録出願人」などの必要事項を記載します
・願書の提出方法には、①特許庁に持参、②特許庁に郵送、③インターネットで提出の3つの方法があります