商標出願と密接な関係にあるのが、ネーミングです。
ネーミングした名称・名前を、商標出願します。
これまで、筆者は、多くの商標出願をお手伝いして、その中で、優れたネーミングにも接してきました。
この記事を読めば、優れたネーミングの条件とネーミングの成功事例を教えます。
また、商標登録との関係でのネーミングの注意点が、分かります。
製品名やサービス名のネーミングの重要性
ネーミングとは、商品名・サービス名や会社名を名付けることを言います。
ネーミングした商品名やサービス名によって、売り上げに大きく影響します。
ネーミングを専門家にお願いしている会社も多いです。
製品名やサービス名のネーミングは、ビジネスにおいて、極めて重要です。
優れているネーミングとは
商品名やサービス名のネーミングで、大切なのは、分かりやすいことです。
商品名やサービス名に接しただけで、どんな商品・サービスか、イメージできるのが、理想的です。
また、インパクトがあることも重要です。
インパクトのある名前であれば、消費者に覚えてもらえます。
さらに、耳あたりのいい名前だと、聞いただけで、すんなりと耳に入ってきます。
ネーミングした名称・名前を保護するのが、商標登録です!
「鼻セレブ」の商品名変更の成功事例の紹介
商品名を変えて、売り上げが急増することがあります。
例えば、ティッシュの「鼻セレブ」です。
1996年に鼻セレブの前身の「ネピア モイスチャーティシュ」が発売されました。
しかし、当時は保湿ティシュの認知度が低く、ウエットティシュと混同した消費者もいました。
そこで、「鼻に使う、高級なティシュ」というコンセプトが分かるよう、再度、ネーミングを行いました。
ネーミングの結果、2004年に商品名を「鼻セレブ」に変更しました。
「鼻」というインパクトのある漢字に、高級感のある「セレブ」を組み合わせた商品名です。
「鼻セレブ」に変更した翌年から、取り扱い店舗数が急増しました。
売り上げも、変更前の「ネピア モイスチャーティシュ」の10倍以上になりました。
また、優れたネーミングが評価されて、2020年には、日本ネーミング大賞を受賞しました。
「鼻セレブ」の商品名から、高級感のあるティシュだと、すぐ認識できます。優れたネーミングです!
その他の商品名変更(ネーミング)の成功事例
「鼻セレブ」以外にも、商品名を変更することで、売り上げアップしたケースが多々あります。
以下、有名なケースを、3つ紹介します。
- 緑茶飲料「お〜い お茶」
- 男性向けのソックス「通勤快足」
- 靴下「まるでこたつソックス」
商品名やパッケージを変更しただけで、売り上げが大幅にアップした事例です
伊藤園が販売する緑茶飲料「お〜い お茶」も、商品名変更によって、成功した事例です。
1985年に発売された当時の商品名は、「缶入り煎茶(せんちゃ)」でした。
しかし、発売から4年後に、商品名が「お〜い お茶」に変更になりました。
伊藤園のCMで流れていた「お~いお茶」というセリフからこのネーミングになったようです。
男性向けのソックス「通勤快足」も、商品名の変更で、成功した事例です。
抗菌防臭された靴下で、発売当時の名前は、「フレッシュライフ」でした。
しかし、売り上げが伸びず、商品名を「通勤快足」に変更しました。
これにより、サラリーマン向けの商品であることが明確になりました。
売り上げが15倍になったと言われています。
「まるでこたつソックス」も、リニューアルして、成功した事例です。
発売当初は、「三陰交をあたためるソックス」という商品名でした。
三陰交とは、足首にあるツボです。
そのツボを温めることで、冷え対策になる商品です。
しかし、その後、リニューアルして、商品名が「まるでこたつソックス」に変更されました。
分かりやすいネーミングにより、売り上げが17倍以上になり、大ヒットしました。
商標の専門家(弁理士)が考えるネーミングの注意点
ネーミングの際に、ついつい、商標調査・出願のことを忘れがちです。
売れる名前にしようと、懸命に悩むので、止むを得ませんが、商品が売れ始めてから、商標トラブルになるリスクがあります。
ネーミングするときに、商標のことも念頭に入れましょう。
商標弁理士として、ネーミングの注意点を3つ紹介します。
- ネーミングの際に、並行して、先行商標をチェックしよう!
- 商品・サービスの直接的な内容表示だと、商標登録できないので、注意!
- 商標の世界は早い者勝ち!公表する前に商標出願しよう
同一の商品・サービスの分野に、同一・類似する先行商標があると危険です。
たとえ、先行商標の存在を知らなかったとしても、商標権の侵害に該当します。
ヒットして、有名になったら、商標権者から訴えられるかもしれません。
ネーミングの段階で、同一もしくは類似の先行商標が見つかったら、別の名称を採択すべきです。
なお、先行商標が存在するか、特許庁のデータベースで調べられます。
以下の記事で、先行商標の調べ方を、簡単に紹介しています。
ただ、自力で、先行商標を調べるのが、難しく、大変なこともあります。
そのような場合には、商標専門の弁理士に、依頼しましょう。
自力で調査しても、やり方が間違っていることが多々あります。不安があれば、商標専門の弁理士に頼りましょう!
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご依頼いただければ、喜んで、お手伝いします。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
いいネーミングは、消費者が、瞬時に、商品・サービスの内容を把握できます。
しかし、商品・サービスの直接的な内容表示だと、商標としての特徴性(識別力)がありません。
そのような商品名・サービス名は、商標登録できません。
例えば、「コクナール」や「スグレータ」は、分かりやすいですが、原則、商標登録できません。
ネーミングと商標登録が相容れないことがあります。
ただし、間接的な商品の内容表示であれば、商標登録できます。
直接的な内容表示か、それとも、間接的な内容表示か、この判断が、なかなか難しいです。
小林製薬のネーミングの事例
うまいこと、対応しているのは、小林製薬です。
小林製薬のネーミングセンスは、抜群です。
以下の商品名は、なんとなく商品の内容を理解できますが、直接的な内容表示ではないとして、商標登録になっています。
- 冷却シートの商品名「熱さまシート」
- トイレ用洗浄剤の商品名「トイレ洗浄中」
- オイル成分を配合した便秘薬「オイルデル」
- シミ対策の化粧品「ケシミン」
このような登録商標を参考に、直接的な商品の内容表示に該当するか、検討しましょう。
商標の世界は、先願主義(早い者勝ち)です。
先に、商標出願した人が優先されます。
あなたが商標出願しないでいたら、他人が商標出願するかもしれません。
そうすると、他人に商標登録を取られてしまいます。
苦労してネーミングして、やっと生み出した名前です。
商標登録を取得して、独占的に使用したいですよね。
できれば、商品名やサービス名を公表する前に、商標出願しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)にご連絡いただければ、迅速に、商標出願に対応します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・ネーミングで大切なのは、分かりやすいことです。商品名やサービス名は、売り上げに大きく影響します
・「鼻セレブ」は、商品名を変更することで、売り上げが10倍以上になりました。「お〜い お茶」なども、商品名の変更で成功しました
・ネーミングの際、先行商標をチェックすべきです。また、できれば、公表する前に、商標出願しましょう