経済成長に伴い、ASEAN諸国の商標出願のニーズが高まっています。
ASEAN諸国の中で、フィリピンには、使用宣誓書制度があります。
筆者は、多くのフィリピンの商標出願を手伝い、フィリピンの商標制度を学んでいます。
この記事を読めば、フィリピンの使用宣誓書の概要が分かります。
また、どのような証拠を、いつ提出すべきか、教えます。
フィリピンの使用宣誓書について
商標登録を維持するためには、フィリピンでの使用宣誓書を提出する必要があります。
使用宣誓書には、フィリピンでの使用証拠を添付します。
つまり、フィリピンで登録商標を使用していないと、商標登録を維持できません。
使用宣誓書制度がある国は、世界的には、少ないですが、アメリカにも、同様の制度が存在します
なお、アメリカの使用宣誓書については、以下の記事で紹介しています。
フィリピンでの使用宣誓書に記載する内容と添付物
フィリピンでの使用宣誓書のフォームは、以下の通りです。
なお、以下のフィリピン知的財産庁のウェブサイトから、フォームをダウンロードできます。
「TRADEMARK」の欄の「Declaration of Actual Use」をクリックしてください。
使用宣誓書には、以下のような事項を記載します。
- 対象の商標
- 登録番号や登録日
- 使用を宣誓する指定商品・役務(及び区分)
- 宣誓者の氏名や住所
- 現地事業者(現地子会社、契約販売店など)の名称・住所
しかし、実務上、フィリピンの現地代理人に、使用宣誓書フォームを用意してもらっています。
実際には、フィリピンの現地代理人が、必要事項を、ほとんど記載してくれます。
ただ、「宣誓者の氏名や住所」と「現地事業者(現地子会社、契約販売店など)の名称・住所」については、現地代理人は分かりません。
これらの情報については、フィリピンの現地代理人に連絡するか、自分でフォームに記載する必要があります。
フィリピンで登録商標を使用している証拠を添付します。
実務上、どのような証拠を提出すべきか、相談を受けることが多いです。
フィリピンでの使用証拠の例は、以下の通りです。
- 商標を付した商品のラベル
- 商標を付した商品の写真、または、サービスが提供されている店舗の写真
- フィリピンでの商標の使用を示すウェブサイト
- フィリピンにおける商標の使用を示す販促資料
- フィリピンでの商標の使用を示す領収書や請求書
- 商標の使用を示す契約書の写し
このような資料以外でも、使用証拠として、認められる可能性があります。
ただ、日本の弁理士では、正確に判断できないことがあります。
そのようなケースでは、フィリピンの現地代理人に確認してもらっています。
どのような使用証拠なら認められるか、実務に精通しているフィリピンの代理人に協力してもらいながら、検討しましょう
フィリピンでの使用宣誓書の注意点(公証役場で認証すること!)
日本の公証役場で認証を受ける必要があります。
認証を受けていない使用宣誓書では、フィリピン知的財産庁は受け付けてくれません。
日本全国に公証役場があり、日本公証人連合会のウェブサイトから、最寄りの公証役場を探せます。
公証役場に書面を持っていき、適切な手続きを行えば、認証を受けられます。
なお、公証手続きを代理してもらうことも可能です。
実際、日本の特許事務所が、代理して、手続きを行うことが、多いです。
もし、不安があるようであれば、公証手続きの代理を検討しましょう。
自分で公証役場に行って、手続きをした方が、安く済みます。しかし、不安があったり、時間がなければ、特許事務所に依頼しましょう
フィリピンでの使用宣誓書の提出時期
使用宣誓書の提出時期を、きちんと把握することは重要です。
使用宣誓書の提出時期は、以下の通りです。
- 出願日から起算して3年以内(6ヵ月、期限を延長可能)
- 登録日から起算して5年を経過した日から1年以内(期限は延長できない)
- 更新日から起算して1年以内(期限は延長できない)
- 商標の更新日から起算して5年を経過した日から1年以内(期限は延長できない)
最も早い提出時期は、出願日から3年以内です。
この期限は、6ヵ月、延長することができます。
期限には間に合わないが、近々、フィリピンで事業を開始する予定がある場合には、期限の延長が有効です。
なお、出願時には、使用宣誓書の提出は必要ありません。
細かく提出時期が設定されています。うっかり提出し忘れることがないよう、きちんと期限管理しましょう!
フィリピンで使用宣誓書を提出しないと
使用宣誓書の提出は、「義務」です。
特殊な事情がない限り、使用宣誓書を提出しないと、商標登録が取り消されます。
特殊な事情とは、以下のようなケースです。
- 他の政府の規制により課された販売禁止により商標の使用が禁止された場合
- 法務局や裁判所による商標の使用を禁止する禁止命令又は差止命令がある場合
- その商標に対する異議申立又は取消審判が継続している場合
ほとんどのケースでは、このような特殊な事情に該当しません。
フィリピンで登録商標を使用している場合には、期限内に、適切に使用宣誓書を提出しましょう。
使用宣誓書の提出義務のもとでのフィリピン商標出願の戦略
使用宣誓書を提出できないと、結局、商標登録が取り消されます。
つまり、フィリピンで登録商標を使用していないと、商標登録を維持できません。
再度、商標権を取得する場合には、フィリピンで再出願することが考えられます。
しかし、その場合には、追加コストが掛かります。
コストを節約するため、フィリピンで事業展開の見通しが立つまで、フィリピンでの商標出願を控えることも考えられます。
フィリピンでの事業計画に沿って、商標出願を検討しましょう。
分からないことがあれば、経験のある弁理士に相談しよう!
フィリピンの商標制度は独特で、分からないこともあるかと思います。
そのような場合には、まずは、経験のある日本の弁理士に相談しましょう。
ちなみに、筆者(すみや商標知財事務所)にご相談いただければ、フィリピンの代理人と連携しながら、検討・対応します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士
・フィリピンでは、使用宣誓書を定期的に提出する必要があります。提出しないと、商標登録が取り消されます
・使用宣誓書には、フィリピンでの登録商標の使用証拠を添付します。また、日本の公証役場で認証する必要があります
・フィリピンでは、事業計画に沿って、商標出願を進めていくことが重要です