・商標法上の商品とは、商標取引の目的の対象となるもので、特に動産をいいます
・また、商標法上の商品は、取引対象として流通過程にのり、ある程度量産可能なものと解されます
・自社製品記載のカタログやチラシは、商標法上の商品に該当しません
商標法上の「商品」の定義
商標出願の願書には、指定商品・役務を記載する欄があります。
それでは、商標法上の「商品」って何か、分かりますか?
基本的には、あなたがイメージしているもので間違いないです。
ただ、注意点もありますので、改めて、検討してみましょう。
まず、弁理士の必読書の「工業所有権法(産業財産権法)逐条解説」は、以下のように、「商品」を定義しています。
商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう
さらに、商標法上の商品は、取引対象として流通過程にのり、ある程度量産可能なものと言われています。
この基準をもとに、どのようなものが、商標法上の商品に該当するか、考えてみます。
商標法上の「商品」と認められるためには、いくつかの要件(条件)があります
商標法上の「商品」の要件(条件)
商標法上の「商品」の要件(条件)は、以下の4つです。
- 商取引の目的の対象になる
- 動産である
- 流通過程にのる
- ある程度、量産可能である
「商取引の目的の対象となる」ことが、商標法上の商品の要件(条件)の1つです。
コンビニやスーパーが取り扱っている製品は、商取引の目的の対象となります。
しかし、自社製品が記載されているカタログはどうでしょうか?
カタログは、自社製品の広告媒体に過ぎません。
つまり、それ自体が商取引の対象となりません。
よって、商標法上の商品には該当しません。
例えば、自社製品が記載された広告目的のカタログは、商標法上の商品に該当しません!
商標法上の商品は、動産に限定されます。
よって、マンション・ビルなどの不動産は、商標法上の商品に該当しません。
また、「電気」「熱」などの無体物は、どうでしょうか?
これらも、商標法上の商品には該当しないと考えられています。
なお、「不動産業務」「電気の供給」など、商品ではなく、役務(サービス)として、これらの業務をカバーできます。
さらに、ややこしいことに、例外も存在します。
パソコン・スマホでダウンロードできる画像・音楽・動画は、無体物です。
しかし、これらは、商標法上の商品です。
商標法上の商品の要件(条件)の1つが、「流通過程にのる」ことです。
たとえば、レストランで提供される料理はどうでしょうか?
レストランの中で料理は消費されて、外部に流通することはありません。
よって、この要件(条件)を満たさず、商標法上の商品には該当しません。
一方、スーパーに置いてあるパック詰めの惣菜はどうでしょうか?
もちろん、消費期限はありますが、こちらは、流通過程にのります。
よって、商標法上の商品に該当します。
レストランで提供される料理は、商標法上の商品には該当しません。なお、レストラン業は、「飲食物の提供」という役務(サービス)に該当します
「ある程度、量産可能である」ことも、商標法上の商品の要件(条件)です。
例えば、芸術家が描いた一点物の絵画のオリジナルは、量産できません。
よって、商標法上の商品には該当しません。
一方、絵画の複製(レプリカ)は、どうでしょうか?
絵画の複製(レプリカ)は、量産可能です。
よって、商標法上の商品に該当します。
一点物の絵画は、商標法ではなく、著作権法によって保護できます
商標法上の「商品」の注意点(自社製品のカタログやチラシ)
相談を受けると、商標法上の商品の概念をきちんと理解していない人がいます。
特に、自社製品のカタログやチラシなど、勘違いしている方が非常に多いです。
カタログやチラシは、自社製品の広告媒体に過ぎません。
よって、カタログやチラシに記載されている商品について、商標出願すべきです。
カタログやチラシを指定商品として商標出願しようとする人がいます。
しかし、商品としてのカタログやチラシの商標登録は不要です。
なぜなら、このようなケースでは、カタログやチラシは、商標法上の商品ではないからです。
商標法上の「商品」で分からなければ、商標専門の弁理士に相談!
商標法上の「商品」に該当するか、判断できないこともあるかと思います。
分からないことがあれば、商標専門の弁理士に相談しましょう。
なお、筆者(すみや商標知財事務所)に相談いただければ、親身になって、一緒に検討します。
業界では珍しい「商標専門」の弁理士